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鉄道写真はこうすればカッコよく仕上がる!プロがやってるレタッチ方法を大公開

写真家は作品を仕上げるときに、どのくらいRAW現像やレタッチをしているのだろうか。実際に仕上げ方次第で写真は変わる。鉄道シーンの中でも「雪×新幹線」という露出が難しい状況のリアルなRAW現像&レタッチ術を、鉄道写真家の村上悠太さんに聞いた。

 

仕上げのひと手間で写真は劇的に変わる!村上流・仕上げの一手

露出に悩む雪のシーンはRAWが◎ “白”の中の階調を引き出して車体や雪のディテールを再現する

Before(元画像)
写真家のリアルRAW現像レタッチ術【鉄道写真編】村上悠太×キヤノンDPP

After
写真家のリアルRAW現像レタッチ術【鉄道写真編】村上悠太×キヤノンDPP

 

 
RAW現像しやすい画像を撮影で作ることが重要
2月ごろは雪のシーンの撮影も多く、さらに車体が白いと画面のほとんどを白が占めることになる。このような撮影時は白トビに注意が必要だが、白トビを恐れてアンダーに撮ってしまうと、車体や雪の白色が表現できない。そこで撮影時にはアンダー気味に撮影し、階調情報を多く持ったRAWを作成する。そして、現像時に適正な画像を作る方法がおすすめである。

現場で迷ったらアンダー気味に
撮影時の具体的な露出ワークは、ヒストグラムの山のピークがやや右寄りになり、かつ両端がともに黒つぶれ、白トビにならないように撮影する。この露出だと画面全体が少し暗めに感じるが、撮影段階ではこれでOK。画像処理に強いRAWと言っても、白トビしてしまうと階調を戻すことはできない。現場で迷ったらアンダー気味に撮っておくのが無難だ。

RAW現像でディテールを再現
RAW現像ではまず、明るさ調整で露出を適正に戻して、そこから白い車体や雪のディテール再現を行なう。ディテールを出すには白の中に階調を作ること。画像のベースとなるトーンをコントラストで決めてから、ハイライトやシャドーを細かく調整していく。このとき、露出とコントラストを一度に調整しようとすると、なかなか画像のトーンが整わなくなる。明るさ調整で土台を固め、その後コントラストの順番で処理をしていくと、各調整の効果が明確にわかるのでスムーズだ。そして最後にホワイトバランスを含め色調を整えると、白がきれいに表現されつつ、車体や雪にメリハリのある写真に仕上がる。

 

村上流・白の階調&色味を引き出すRAW現像術

使用ソフト:キヤノン Digital Photo Professional(ver.4.9.20.0)

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① アンダー気味に撮影したのでヒストグラムを見ながら全体を明るくする

白トビせず、白の階調が残るようにアンダー気味に撮影したので、まずは明るさ調整で全体を明るくする。ヒストグラムを見ながら、白トビとハイライトの階調情報に注意して、ここでは「+0.67」を選択した。このとき、ヘッドライト部が白トビすることもあるが、気にしなくてよい。ヒストグラムは画面右下にあるヒストグラムのアイコンをクリックすれば表示される。

写真家のリアルRAW現像レタッチ術【鉄道写真編】村上悠太×キヤノンDPP

写真家のリアルRAW現像レタッチ術【鉄道写真編】村上悠太×キヤノンDPP

 

② 白の中の階調を引き出すためにコントラストを低くしつつ、ハイライトを少し上げる

次に全体のコントラストを下げて、一度画面全体のトーンを出す。ただ、このままだと眠くなるだけで締まらないので、モニター上でN700Aの特徴でもあるノーズ部のスリットが認識できる範囲で「ハイライト」を上げて白を出していく。モニターとヒストグラムの両方を確認しながら、ギリギリまで白を明るくするのがコツ。さらにここでは、シャドー部を隠し味程度に締め、全体にメリハリをつけた。

写真家のリアルRAW現像レタッチ術【鉄道写真編】村上悠太×キヤノンDPP

写真家のリアルRAW現像レタッチ術【鉄道写真編】村上悠太×キヤノンDPP
 

③ 「クリックホワイトバランス」で白を出しつつ、微調整で仕上げて完成

最後に色味を整える。今回のような雪晴れの場合、WB「太陽光」では青空の影響を受けて全体の青みが強すぎることがある。そこで「クリックホワイトバランス(クリックWB)」で一度基本となる白を出して、そこから微調整をする。ここでは運転窓の左側、明るめの白い部分を基準にして、さらに微調整でブルーを「-2.0」することできれいな白と雪の冷感を得られた。クリックWBを使用せずに色を追い込むこともできるが、白い車体の場合はクリックWBがワンタッチで楽だ。

写真家のリアルRAW現像レタッチ術【鉄道写真編】村上悠太×キヤノンDPP

 

 

「クリックホワイトバランス」とは?
画面内で選んだ箇所を白の基準としてWBを調整する機能。画面内に白色かグレーの箇所がある場合に有効。クリックする場所によっては大幅にWBがずれることもあるので、指定位置には気をつけたい。白い車体や雪景色のほか、室内の人工光源下で撮影した画像などの調整にも便利に使える。

 

 
〈写真・解説〉村上悠太