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独創的な世界観にくぎ付け! コロナ禍が転機となった中越高校の作品制作のヒミツに迫る!

全国の頑張る写真部を紹介する本企画。今回は、8度目の写真甲子園本戦大会への出場をこの夏に果たし、独創的な作風にも注目の集まる中越高等学校を訪ねました。

We are 写真部 #11 中越高等学校 写真部

中越高校は新潟県長岡市内にある私立の学校。1905年創立の「齋藤女学館」を起源とし、いくつかの変遷を経て現在に至る119年目の伝統校です。「進取の精神」「文武一如」という校風の通り、学業も課外活動も等しく大切にし、部活動も非常に活発に行なわれています。

校舎を見ると運動部・文化部ともにその活躍が一目瞭然

写真部は、現在1年生22名、2年生8名、3年生8名の計38名の部員が所属。写真甲子園には1994年開催の第1回大会から出場しており、今年行われた31回大会で8度目の本戦大会出場を果たすなど、部としても伝統的な強豪校です。

部活動は生徒たちの主体性に合わせ、特に活動日を決めていないそうですが、その結果、毎日誰かしらが放課後に集まり、撮影やプリント作業などの作品づくりに励んでいるとのこと。

仲良しなだけじゃない、最高のバランス! 写甲出場トリオ

部長の名古屋明歩さんにインタビューを申し込むと「みんなと一緒でも良いですか?」と、恥ずかしそうに応じてくれました。部長になったのは、先生とみんなからの推薦。3人揃って話し始めると、名古屋さんの明るくて人懐こい雰囲気で話はどんどん盛り上がり、なぜみんなが彼女を部長に推薦したのか、その理由をすぐに理解できました。

ということで、恒例の部長インタビューは部長と写真甲子園本戦大会出場のメンバーでお届けします。

左から:中山あいりさん、部長の名古屋明歩さん、門谷舞子さん(全員3年生)

まず、入部のきっかけを3人に聞いてみました。部長の名古屋さんは「女性の先輩が入学式で大きなカメラを持っていてカッコ良かったから」、中山さんは「お父さんが写真好きで、以前から少しやっていたから」 、門谷さんは「写真を始めてみたくて、体験入部したら楽しかったから」と、三者三様。続いて、中越高校写真部のご自慢ポイントを聞くと3人揃って「先輩後輩関係なく仲がいい!」普段どんな写真を撮るのかも聞いてみると、こちらも揃って「ポートレート! 人を撮るのが大好き」と回答してくれました。3人の仲の良さをすぐに感じることができました。

そんな3人の関係性がわかるエピソードは写真甲子園についての話の中でもたくさん。人物撮影をこよなく愛する3人は揃って写真家・浅田政志さんを尊敬しているそうで、公開審査会で浅田さんが優しいまなざしを向けてくれたことを思い出して、全員で「キャーーーーー!」と大興奮(笑)

▽中越らしさ全開!写真甲子園2024初戦応募作品

「青春ドレミファソラシうぉ〜!!!〜あなたの青春は、どんな音ですか?〜」

 

写真甲子園の本戦大会には、3人とも出場できるとは思っていなかったそうで、「ましてや賞ももらえるなんて全く想像していなかった」とのこと。出場が嬉しかった一方で、「思っていた以上に体力や精神的に辛く、楽しいと大変が半々でした」と3人とも正直に語ってくれました。

▽町民が選ぶ特別賞を受賞したファースト公開審査会作品

「香りをたどって…」

 

続いて作品づくりについても聞いてみたところ、意外な回答が。実は監督の松田先生と方向性を決めていたのは部長の名古屋さんではなく、中山あいりさんとのこと。日ごろから中山さんの示した作品の方向性を他のメンバーで補い合って創作しているそうです。本人たちは無認識だったかもしれませんが、確かにインタビュー中も自然と3人ぞれぞれの役割分担ができていました。

共同作業の中で、自然に役割分担ができるのは、簡単な様でなかなかできないこと。さらっとできてしまうのは、このチームの強みだと実感。

初戦応募作品の1枚は学校の広報ポスターに採用されていました。プロのカメラマン顔負けの作品です

3人とも謙遜する割にとても志が高く、部活動で大変なことを聞くと「辞めていく人を止められないのが悲しい」、「才能がある子がコンクールに受賞できないのが辛い」と仏のような回答が次々と、、、部員の半数以上が何かしらのコンクールで受賞歴があるという、常勝軍団ならではの事情なのかもしれません。尚、名古屋さんに聞いた今後の目標は「部員全員が全国的なコンクールで入賞すること」でした。意識の高さに脱帽です。

松田先生に見せていただいた直近の部員のコンクール実績。受賞者がズラリ

今のところ3人は卒業まで部活動の引退は考えていないとのこと。長岡だけに、最後に大きな大きな花火を打ち上げて卒業してほしいですね。

中越高校の創作活動の裏側に潜入!

今や中越高校の代名詞の一つともなっている、映画のワンシーンのような写真の数々。写真甲子園の初戦応募作品でもその存在感はひときわ目立っており、筆者もまたその作品に魅了されたひとりです。普段からどのように撮影しているのか気になっていることを伝えると、その様子を再現してもらえることに。

この日撮影された作品の1枚。背景、光、小道具に加えポージングまで余念がありません(撮影:内山優香さん、モデル:鈴木えみさん)

 

▽撮影会の裏側はこちら

「いつもの感じで!」という指示のもと、部員たちが取り出してきたのは、袋にびっしりと詰まった折り鶴。作品のテーマに合わせて小道具を駆使した撮影スタイルは先輩の時代から代々受け継がれており、もはや「伝統芸」とのこと。みんなで役割分担し、息を合わせて撮影する様子は、さながら映画やドラマの制作現場の様です。

 

撮影会の取材をしてくれた中越高校写真部のこれからを担う3名

左から:小林結芽さん(2年生)、鈴木えみさん(1年生)、荒井七美さん(2年生)

この撮影会の取材は部員たちにサポートしてもらいました。2年生の小林さんと荒井さんには状況撮影カメラマンを。1年生の鈴木さんには作例モデルの他に写真セレクトも。

「撮影者を撮るという機会は初めてで、難しかったです」と揃って語ってくれた2年生の2人。暗い教室や一瞬で舞い散る折り鶴など難しいシチュエーションだったにも関わらず、たくさんの写真を撮ってきてくれました。

一方、セレクトを手伝ってくれたのはモデルも務めてくれた1年生の鈴木さん。「撮ることも好きだけど、モデルをすることも好き。自分で何かを表現することが大好きなんです」と話してくれました。その柔軟な表現力は部長の名古屋さんもお墨付きの、中越高校写真部のホープとのこと。来年以降も安泰ですね!

写真部の活動を緻密な理系脳で支える顧問のバックアップ

50年以上の歴史を誇る名門写真部を支える顧問の先生はさぞ厳しいのでは? と少しドキドキしながら訪ねた中越高校写真部。しかし、迎えてくれたのは部の活動を「同好会以下の活動」と生徒以上に謙遜する松田先生と、生徒に混じって楽しそうに活動している渡辺先生でした。

松田浩明先生(担当教科:理科)

指導方針は「ヤル気に応じた公平さ」とのこと

渡辺恭平先生(担当教科:理科)

本当のカメラマンみたいに雰囲気があります(笑)

 

松田先生が写真部顧問になったきっかけは、「前任の学校で担当していた手話部の副顧問が暇だったから」とのこと。活動方針を伺うと、「特に決めておらず、平日はダラダラ。コンテスト応募が近くなるとその作業。土日は希望者だけで撮影お出かけ」と名門写真部とは思えない、なんともゆるい回答が、、、。

ただ、ゆるい活動とは逆に先生の戦略は緻密でした。写真甲子園の結果についても「今年の写真甲子園は、過去の傾向と対策を考えすぎてしまったのが失敗でした」と、しっかりと理論的に分析している松田先生。「次回は自分達らしさを出すタイミングを間違えず、もっと大きな賞を目指したい」とも語ってくれました。

中越らしい作風についても聞いてみたところ、「昔はもっと違った作風でした。転機はコロナ禍です。外に撮影にいけないため、自分たちだけで出来ることを色々試していくうちに、今のようなスタイルが確立されていきました」と、こちらは偶然の影響が大きかったそうです。ただ、「今の子たちはこういった撮影スタイルの方が好きで、その結果、意図せずとも活動が活発となり、アイディアもどんどんブラッシュアップされていくことを発見できた」といいます。

チャンスを上手く活用し、経験へ

最後に、松田先生が自慢だと語る中越高校写真部の活動内容をもう一つ教えてくれました。なんと、1000年以上の歴史があるといわれる山古志闘牛のボランティアを約6年続けているそうです。「最初のきっかけは作品づくりのため撮影をさせてもらったこと」だそうですが、今では運営から駐車場の誘導まで、できることは何でも手伝っているとのこと。生徒たちに話を聞くと、揃って「良い経験です」と笑顔で話してくれました。

命懸けの臨場感が伝わってくる写真の数々は、校内撮影会での作品とはひと味違った魅力です(撮影:中越高等学校写真部)

中越高校写真部がドキュメンタリー的な撮影も上手いのは、こうしたチャンスを無駄にせず、経験につなげているからなのだと感じました。楽しみながらも、しっかりと経験値を上げていくそのスタイルは、まさに中越高校写真部の活動を体現していました。

今後もその姿勢を守り続けながら、どんどん新しい挑戦を続けていってもらいたいです。

取材希望の写真部募集中!

CAPA CAMERA WEBではぜひ取材をしてほしいという熱意ある写真部を募集中。部員が一人でも大丈夫! 全国の仲間たちに君たちの想いを届けよう! 写真部はみんながレギュラーだ。

ご応募はこちら→ https://one-publishing.co.jp/contact

 

<撮影>小林結芽、荒井七美(中越高等学校)、CAPA編集部
<闘牛撮影>中越高等学校写真部
<取材・文>サイトウアヤコ