2024年7月17日についに発表されたキヤノンEOS Rシリーズのフラグシップミラーレス一眼カメラ「EOS R1」。2024年11月29日に発売が予定され、期待と関心が高まっているところ。そんな発売前の「EOS R1」をお借り出来るということで、早速、2024年11月2、3日に行われたSUPER GT 第8戦に本機を持ちこんで実写を行ってみた。
レンズは、「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」と、「RF24-105mm F4 L IS USM」を使用した。なお今回の実写は、ドライバーの写真撮影などを除いて、可能な限りメディア用のエリアではなく、一般の観戦者が入場可能なエリア(エリアやイベントごとにチケットの購入は必要)で実写を行っている。撮影状況もスナップしているので、サーキットに行って生でレースを見たい、これからサーキットでモータースポーツ撮影に挑戦したいという人は参考にしてほしい。
「EOS R1」は、何と言ってもプロ仕様の最高機種ということで、すごいカメラであることは間違いないだろう。そこで、モータースポーツ写真においては欠かせない、AFの動体認識、追従性能を中心に高速連写でマシンをどう捉えるかを実写してみる。
新開発の有効約2420万画素のフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサーに、画像処理エンジンにはこれまた新開発の映像エンジン「DIGIC Accelerator」が採用され、映像エンジンシステムとしては、「DIGIC X」に「DIGIC Accelerator」を追加したEOS史上もっともパワフルな新開発のエンジンシステム「Accelerated Captureシステム」が搭載されている。AFも「デュアルピクセルCMOS AF」に初めて対応した「クロスAF」を採用。これらのマッチングによる、高速連写時でも高精度のAFを保ち、トラッキングも掴んで、掴み続ける撮影体験をレポートする。
さまざまなシチュエーションで流し撮り実写!
まずは流し撮りの設定。記録画質は、JPEG Lに設定。128GBのCFexpress Type Bカードを装填していたが、高速連写やプリ連続撮影も行うつもりなので、相当な撮影枚数になることを想定して、RAW設定はしていない。撮影モードはシャッター優先の「Tv」を選択。
・AF動作:サーボAF
・AFエリア:領域拡大AF(上下左右)※場合によって変更
・サーボAF中の全域トラッキング:する
・検出する被写体:乗り物
・シャッター方式:電子シャッター
・ドライブ選択:HまたはH+
・プリ連続撮影:する ※必要な場合のみ
モビリティリゾートもてぎで行われたSUPER GT 第8戦。土曜の予選日は結構激しく雨が降り、雨量による予選の中断もあった。今回、AFの掴み具合をわかりやすく掲載するため「ATOMOS Ninja」を装着し、同時に画面を録画しながら撮影を行っている。使用した「ATOMOS Ninjia」は記録媒体がむき出しのため、さすがに雨はまずかろうということで、予選は画面録画はなし。日曜の決勝日は打って変わって晴天となり、やや汗ばむほどの気候に。画面録画は決勝日のみ行っている。思いがけず晴天時、荒天時のシーンが撮影できたので、そちらの対比も楽しんでもらいたい。
まずはブラインドから飛び出すマシンを狙ってみる。ファーストアンダーブリッジのトンネルをくぐり130Rをハイスピードで抜けていくシーン。さらに手前に観客がいる撮影ポジションにして、直前までマシンが見えない状況にした。ここではシャッターボタン全押し前の画像を記録する「プリ連続撮影」を「する」に設定した。あまりのスピードにカメラを振り遅れ気味になるが、そこは「プリ撮影」が救ってくれることも。
続いてフェンス越しのシーン。レンズと被写体の間にフェンスがあり、フェンスの向こうのマシンにピントを合わせる、サーキットで流し撮りを楽しむ人にとってはお馴染みのシチュエーションだ。ここでは「クロスAF」が力を発揮している。縦線の影響を受けにくく、フェンスの向こう側のマシンを安定してフォーカスしていた。こちらも「プリ連続撮影」を「する」に設定している。
こういったシーンでは、レンズ側の撮影距離範囲の切り替えを忘れないように。このレンズの場合「3m-∞」にしておけば、3mから手前にはピントが合わないように設定できる。
500mmテレ側いっぱいでフェンスやガードレールの向こうを高速で走るマシンも狙ってみた。手前に障害物があって車体が半分ほどしか見えていなくても、しっかりと認識して追従している。
S字カーブを駆け抜けるシーンでは、カーブに入る前からAFが捉えはじめ、迫りくるマシンを確実に捉える。夢中になって連写で流し撮りを楽しんでいて、しっかりと止める写真を撮り忘れてしまった。もちろん結構な雨であっても全く問題ない。予選日も同じS字コーナーで撮影を行った。ヘッドライトの強い光にも持って行かれず、確実にマシンを補足している。同じコーナーでほぼ同じ設定で撮影しても、写真の表情はこれだけ変わってくる。全身ずぶ濡れになってしまうが、レインウェアなどの雨対策をしてドラマチックな写真が撮れるウェット走行を狙ってほしい。
決勝レースは63周の周回で行われ、時間にして約2時間。ゴール後の表彰台の取材撮影もあるため、1時間30分~40分ほどで決勝レースの撮影は切り上げたが、それでもなんと5,600枚も撮影。高速連写のレビューであったため、H+(40コマ/秒)、H(30コマ/秒)に加え、部分的にプリ連続撮影も行ったこともあり、とんでもない枚数になってしまった。メディアセンターに戻ってPCにデータを移そうとしたら、PCの空き容量が足りず、外付けのSSDに保存することになった。ただ、CFexpressカードの書き出し速度はとても速く快適だった。
この日行われた2024年シーズン第8戦、通常であれば最終戦なのだが、台風の影響で延期になったため、12月に行われる鈴鹿の第5戦が最終戦となる。GT500クラスは、36号車au TOM’S GR Supra (坪井翔選手 / 山下健太選手) が優勝。チームランキングもトップだ。GT300クラスは、88号車 JLOC ランボルギーニ GT3 (小暮卓史選手 / 元嶋佑弥選手) が優勝を飾った。チームランキングトップのK2 R&D LEON RACINGを7ポイント差で追う展開だ。どちらのクラスもシリーズチャンピオンは最終戦までもつれ込む結果となっている。ぜひ、最終戦の戦いを撮影してCAPA「流し撮りGP」に応募してほしい。
そして気になる、「CAPA流し撮りGP」応援ドライバーの3選手の結果はというと、GT500クラスの佐藤蓮選手と大津弘樹選手がドライブする16号車・ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16は、6番手スタートから追い上げを見せ、レース後半は佐藤選手が38号車・KeePer CERUMO GR Supra大湯都史樹選手と熾烈な3位争いを繰り広げ結果は4位。スタート前に声をかけると「表彰台乗れるように頑張ります」と言っていた佐藤選手だがその言葉通り、果敢に38号車を抜きにかかる熱い走りを見せてくれた。三宅淳詞選手が高星明誠選手とドライブする3号車・Niterra MOTUL Zは11番手スタートからぐっと順位を上げ7位でフィニッシュ。GT300クラスの荒聖治選手がN.クルッテン選手とドライブする7号車・Studie BMW M4は2番手スタートだったが5位でフィニッシュとなった。
航空機やライブも実写してみた!
SUPER GTではレースはもちろんコース上やイベント広場などで様々なイベントが開催される。今回は、航空自衛隊松島基地のF-2B戦闘機による歓迎フライトが行われた。マッハ2級のエンジンの轟音とともに、2基のF-2Bがサーキット上空に飛来し、「グリーティング・パス」「ハイ・スピード・ダブル・サークル」「コンバット・ブレイク」など様々なフライトを披露した。もちろんこちらも狙ってみた。設定はマシン撮影とほぼ同様。キヤノンは被写体検出が「乗り物」ということで、飛行機、バイクなどの細かい区別が無いが、それでもしっかりとフォーカス。がっちりと掴み続ける印象だった。
こちらはガラリと変わって、イベント広場で行われたライブのシーン。前後に入れ替わる動きや激しいダンス中でも、瞳にピントを合わせ続ける。もちろん被写体検出は「人物」に設定。さらに複数の人物の中から優先する被写体を追尾する「登場人物優先AF」を使えば、このようなグループのライブであっても、顔が斜めの状態でも両目と鼻、口が見えていれば、AFの乗り移りを抑制できるほか、登録人物の優先度を設定することも可能だ。
と、ここまで、レースマシン、航空機、ライブとひとつのイベントで様々な実写をしてきたが、どの被写体においても撮っていて安心感のあるカメラだと感じた。冒頭に書いたようにプロ向けカメラだからこその「信頼性」が不可欠なのだ。また最高の技術と性能がてんこ盛りではあるが、それらが備わっているから簡単・便利というよりも、信頼性をさらに高めるためのツールとなっていて、ある意味使い手を選ぶカメラなのだと感じた。もちろん私の腕ではその性能を引き出せてはいないし、カメラマンの腕があってこその「1」なのだとも感じた。
あとひとつ特筆すべきは、操作性の面において「スマートコントローラー」が非常に便利だったことだ。「EOS-1D X MarkIII」から「EOS R3」などキヤノンの上位機に採用されているこのボタン。ボタントップを指で触れて、トラックパッドのように指を動かすと測距点が移動してくれる。AF-ONと兼用になっていて、そのまま押し込むとAFがオンになる。撮影中はずっとこのボタンを使っていた。また筆者の手はかなり小さいほうで、「EOS R1」のボディは大きく感じたのだがとても握りやすく、長時間サーキット中を持ち歩いたり(100-500装着時は一脚を使用)、グリップを長時間握って撮影しても手や腕の疲労感はそれほど感じなかった。
最後はサーキットのもう一つの華である、レースアンバサダーの撮影も行ってみた。ピットウォークやスタート進行など撮影のチャンスがあるので、サーキットを訪れたらぜひ人物撮影も行ってみてほしい。こちらは「RF24-105mm F4 L IS USM」を使用した。24-105mmを借りたのには理由がある。定番の標準ズームレンズといば、24-70mmや28-70mmだが、ピットウォークなどで撮影可能なエリアから被写体がやや遠い場合、70mmよりももう少し寄りたい気持ちになることが多々ある。105mmまである余裕がより楽しい撮影体験にさせてくれる。撮影モードは「M」。検出する被写体を「人物」に設定。順光、逆光、傘の影、状況に関係なく瞳にピントがしっかりときている。
実際に撮影した画像はこちら! レースアンバサダーギャラリー
EOS R1
発売日 2024年11月下旬
参考価格 108万9000円(税込)
有効画素数 最大約2410万画素
撮像素子 フルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー
マウント キヤノンRFマウント
ISO感度 (静止画撮影時) ISO 100〜102400 (拡張 ISO 50相当、409600相当)
ISO感度 (動画撮影時) ISO 100〜32000 (拡張 ISO204800相当)
シャッター速度 (静止画撮影時) メカ/電子先幕シャッター 1/8000~30秒、バルブ、電子シャッター 1/64000~30秒、バルブ
シャッター速度 (動画撮影時) 1/8000~1/8秒
ファインダー EOS初 0.66型 約944万ドット 約0.90倍 OLEDカラー電子ビューファインダー
画像モニター 3.2型 約210万ドット バリアングルTFT式カラー液晶モニター
記録媒体 CFexpressカード (2.0 / Type B / VPG400対応)のデュアルスロット
大きさ (幅×高さ×奥行き) 約157.6×149.5×87.3mm
質量 約920g (本体のみ)、約1115g (バッテリー、メモリーカードを含む)
〈文・写真〉松村広行