ニュース

ハンズオンレビュー! EVF内蔵のM型ライカ「ライカM EV1」とはどんなカメラなのか?

ライカカメラは、電子ビューファインダー (EVF) を内蔵したライカMマウントのフルサイズミラーレスカメラ「ライカM EV1」を発表した。国内発売は2025年11月1日で、価格は1,397,000円 (税込)。カラーはブラックのみとなっている。

ライカM EV1
ズミルックスM f1.4/35mm 装着時

■M型ライカに新しい歴史を刻む

M型ライカといえば、デジタルカメラでもフィルムカメラでも光学ファインダーを搭載したレンジファインダーカメラだったが、「ライカM EV1」はライカMシステムで初となる、EVFを内蔵したデジタルのM型ライカだ。

ライカM EV1
アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH. 装着時

 

ライカカメラ社の副社長でデザイン担当のステファン・ダニエルさんによると、M型ライカのレンジファインダーをEVFに置き替えていこうというものではなく、長年寄せられてきたユーザーの声に応えるかたちで開発したのだという。レンジファインダーでのピント合わせが難しいと感じているM型ライカユーザーや、初めてM型ライカに触れる人が直感的に操作できるようにという思いから生まれたということだ。

ライカM EV1
プレス向け内覧会で解説するステファン・ダニエルさん

 

現行のM型ライカとしては、デジタルカメラではモノクロ撮影専用の「ライカM11モノクローム」をはじめ、背面液晶モニターを排した「ライカM11-D」、作成者情報や編集履歴などのコンテンツ認証機能を搭載した「ライカM11-P」がある。また、フィルムカメラでは「ライカM6」「ライカMP」「ライカM-A」といった機種があるが、いずれもレンジファインダーを搭載したカメラで、「ライカM EV1」と併売されるということだった。

■フォーカスアシスト機能を搭載

「ライカM EV1」のボディを正面から見ると、「ライカM11」と同様、上部中央に赤いLeicaのロゴマークがあるが、その右側にはファインダー窓がない。

ライカM EV1

 

「ライカM EV1」のEVFは、解像度576万ドット・倍率0.76倍で、視野率は100%だ。使用するレンズの焦点距離や選択した絞りに応じて、実際にシャッターを切った時と同じ画像がファインダーいっぱいに表示される。レンジファインダーのようにフレーミングした周辺が見えるわけではないので、はじめのうちは少し違和感を感じるかもしれないが、撮影範囲や深度などをEVFでプレビューしながら撮影できるのは、特に超広角レンズや望遠レンズ使用時に便利だと感じるだろう。

また、露出の変化もファインダーで確認できるので、意図的に露出をアンダーやオーバーに振って撮るような、クリエイティブな表現にも有効だ。なお、撮影情報は画像上ではなく画面上下の黒い部分に表示されるため、フレーミングに集中できる。

ライカM EV1

 

ファインダーと背面液晶モニターの表示は、ファインダー横のアイセンサーによって自動的に切り替わるようになっている。「フォーカスピーキング」や、1.3倍 / 1.8倍の2段階で拡大表示ができる「フォーカスズーム」といったフォーカスアシスト機能も搭載されている。

フォーカスアシスト機能は、MFのMマウントレンズを使用する際に便利な機能。特に、開放値が小さく被写界深度が浅いレンズや至近距離で撮影するような場合にも、高精度なピント合わせが可能になる。また、ファインダー右脇には視度補正ダイヤルが設けられており、視度調整が可能だ。

ライカM EV1

 

フォーカスアシスト機能は、フォーカスリングやファンクションボタンでも操作できるが、ボディ前面にあるFNレバーに割り当てることもできる。

ライカM EV1

 

このレバーは、レンジファインダー搭載のM型ライカではブライトフレームのプレビューをするためのもの。M型ライカのアイコニックなデザインを継承したものとなっているのが、なんとも心憎い。また、グリップ部のダイヤモンドパターンのレザー仕上げは、レンジファインダー式のM型ライカと区別できるポイントの一つでもある。

ライカM EV1

 

多くのM型ライカに見られるLeicaロゴの刻印がトップカバーにないのが、「ライカM EV1」のデザイン的な大きな特徴でもある。EVFの大型ファインダーや、シャッター速度ダイヤルとシャッターボタンしかないフラットでシンプルなボディ上面デザインは、まるで「ライカQ3」を思わせるようなフォルムになっている。

ライカM EV1

■基本性能

「ライカM EV1」の主要な機能は「ライカM11」がベース。撮像素子はトリプルレゾリューション技術を採用した6030万画素のフルサイズ裏面照射CMOSセンサーを搭載する。RAW (DNG形式) とJPEGの記録が可能で、解像度は6030万画素、3650万画素、1840万画素から選択できる。画像処理エンジンは「Leica Maestro III (ライカ・マエストロ・スリー)」を搭載。記録メディアはSDメモリーカードを採用し、64GBの内蔵メモリーも搭載されている。

ライカM EV1
ズミルックスM f1.4/50mm ASPH. 装着時

 

また、「ライカM11-P」「ライカM11-D」と同様に、コンテンツ認証機能「ライカ コンテンツ クレデンシャル」に対応し、画像にデジタル署名を付与することができる。スマートフォンアプリ「Leica FOTOS」との連携も実現しているので、カメラをスマートフォンでコントロールしたり、バックグラウンドでスマートフォンに画像を転送することもできる。

ライカM EV1
ズミルックスM f1.4/50mm ASPH. 装着時

 

メニュー画面は「ライカM11」を踏襲したものとなっているので、操作にとまどうことはなさそうだ。

ライカM EV1

 

バッテリー (BP-SCL7) を含むボディの質量は約484g。「ライカM11」「ライカM11-P」のブラックボディがいずれも約530gなので、約50gほど軽量化されている。USB Type-Cを使ってバッテリーの給充電が可能。メモリーカードスロットはバッテリー室内に設けられている。

ライカM EV1

写真家・佐藤健寿さんのインプレッション

プレス向けの内覧会では、「ライカM EV1」で撮影した作品を見ながら使用感を解説してくれた佐藤健寿さん。望遠レンズや超広角レンズで撮影するときにはフォーカスアシスト機能が便利だったそうで、よりシビアなピント合わせやフレーミングができたとのこと。「ライカM EV1」が出たことで、これまであまり人気のなかった焦点距離のレンズが注目されるようになるかもしれないと語っていたのが印象的だった。

ライカM EV1

実際に撮影してみた

フォーカスアシスト機能のフォーカスピーキングを使って撮影してみた。レンジファインダーカメラで、こんな被写体にシビアにピントを合わせるのは至難の業。たぶん撮ろうとも思わないだろう。ミラーレスカメラでないと撮れないシーンのひとつなのかもしれない。それはまた、レンジファインダーカメラで諦めていたシーンが撮れるようになるということでもある。

ライカM EV1

「ライカM EV1」の登場は、ライカMシステムでの新しい表現や新しいレンズの登場を期待させるものになるかもしれない。新たなユーザーの開拓という意味もあるカメラだが、レンジファインダーに慣れ親しんできたM型ライカユーザーの反応が気になるところだ。

ライカM EV1 主な仕様

有効画素数 6030万画素
撮像素子 フルサイズ裏面照射型CMOSセンサー
マウント ライカMバヨネットマウント (6ビットコード装備)
ISO感度 ISO 64~50000
シャッター速度 1/4000秒〜60分 (電子シャッター 1/16000秒〜60分)
ファインダー 576万ドット 電子ビューファインダー (倍率 0.76倍)
画像モニター 2.95型 233万2800ドット TFT液晶モニター
記録媒体 内蔵メモリー64GB、SD/SDHC/SDXCメモリーカード (UHS-II対応)
幅×高さ×奥行き 138.8×80.3×38.45mm (突起部を除く)
質量 約402g (本体のみ) / 約484g (バッテリーを含む)