
2025年11月21日に発売されたばかりのキヤノン「EOS R6 Mark III」。40コマ/秒の高速連写性能は従来機種を継承し、3250万画素に画素数がアップ、AF精度も向上しているということで、連写機好きの筆者としてはその進化の度合いを試すべく、発売前に実機をお借りして、2025年11月1・2日にモビリティリゾートもてぎで行われた「SUPER GT」最終戦に持ちこんで実写を行ってみました。

レンズは「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」と、「EOS R6 Mark III・RF24-105 L IS USM レンズキット」に付属する「RF24-105mm F4 L IS USM」を使用しました。本記事内のカメラボディが写っている写真以外は「EOS R6 Mark III」で撮影しています。

「EOS R6 Mark III」の進化点
「EOS R6」は、「EOS-1D X Mark III」と同じセンサーを採用し2020年に誕生。その後、2022年に「EOS R6 Mark II」が発売され、今年「EOS R6 Mark III」が発売となりました。「Mark II」から大幅な進化こそありませんが、連写性能はメカシャッターで12コマ/秒、電子シャッターで40コマ/秒と変わらず、有効画素数が2420万画素から3250万画素へとアップしています。画素数は「EOS R5 Mark II」の有効約4500万画素にはおよびませんが、上位機種の「EOS R1」(有効約2420万画素)、「EOS R3」(有効約2410万画素) よりも高画素となっています。
そのためバッファメモリを強化し、連続撮影枚数が従来の最大約190枚から最大約330枚に。それに合わせて記録メディアはSDメモリーカード (2枚挿し) から、CFexpress Type B / SDメモリーカードへと変更されています。被写体検出AFの種類は「EOS R6 Mark II」と同様ですが、アルゴリズムが向上し、「プリ連続撮影」を新たに搭載しました。ほかにも進化ポイントはありますが、高速連写での動体認識と追従性能を中心に、高速連写でマシンをどう捉えるか、実写撮影体験をレポートします。

予選は一般観戦エリアから撮影、フェンス越しも問題なし
11月1日の土曜日に行われた予選は、一般の観戦者が入場可能なエリア (エリアやイベントごとにチケットの購入は必要) で実写を行いました。撮影状況もスナップしていますので、モビリティリゾートもてぎでの撮影には参考になるかもしれません。

高速で走る被写体にはプリ連続撮影が有効

AFの検出する被写体は「乗り物優先」に。「乗り物優先」の設定時には、ヘルメットやコックピットへの「スポット検出」も設定できます。これは、オートバイや、フォーミュラカーのようにオープンタイプに有効だと思いますが、「する」に設定してみました。サーボAFは「Caseオート」に。連続撮影の設定は、マシン撮りの際はほぼ「H+」に設定したため、撮影枚数は優に6000枚を超えてしまいました。

まずは、ファーストアンダーゲートブリッジの手前のコーナーに設けられた観戦スペースから撮影。フェンス越しではありますが、足場が用意され、目の前を高速で疾走するマシンを見る (撮る) ことができます。フェンス越しなので、本当はズームしてフェンスを抜いてしまいたいところですが、ものすごく近いのと高速でマシンが通過するので、しっかり止められるシャッタースピードとマシンの入る焦点距離を調整しながら撮影しました。高速で通過するマシンもしっかりと検出し、AFが追従していきます。ここではシャッターボタン全押し前の画像を記録する「プリ連続撮影」を「する」に設定しています。あまりのスピードにカメラを振り遅れ気味になりますが、そこは「プリ撮影」が救ってくれることも。


続いて、ファーストアンダーゲートブリッジのトンネル出口を狙います。ここでは、フェンスにぴったりとレンズ先端を着け、300mm以上のズームでトンネルから飛び出してくるマシンを狙います。いきなり飛び出してくるので、トンネルを通過してくるマシンのエンジン音を聞きながらタイミングを計ります。ここでもAFがしっかりとマシンを捉え追従してくれました。電子シャッターで40コマ/秒で連写です。



予選の最後はコーナーを駆け上がっていくマシンのバックショットを。15時をまわっていたので、西日を受けてマシンが美しいです。ここは見晴らしの良いポイントで、カメラもマシンを確実に捉えてくれるので、好きなアングルを探して撮影に集中です。
予選の結果は、GT500クラスは38号車「TGR TEAM KeePer CERUMO」が、GT300クラスは61号車「R&D SPORT」が見事ポールポジションを獲得しました。61号車のBRZが搭載する水平対向エンジン “EJ20” が今シーズンラストと発表されていて、今シーズン2度目のポールポジション獲得で、SUBARUファンは大いに盛り上がっていました。


決勝レースはコースサイドから撮影

いよいよ今シーズンも最終戦となった決勝レース。取材エリアのコースサイドに入って撮影を行いました。やはりスタートは正面からということで、スタートグリッドのセレモニー取材を早めに切り上げ、メディア用の足場にカメラをセットしました。フォーメーションラップの後、各マシンが隊列を整えホームストレートに戻ってくると、シグナルがレッドからグリーンに変わり、いよいよレースがスタートします。
実は、この瞬間はかなり緊張します。1回しかチャンスがありませんし、先頭で1コーナーに入ってくるマシンがポールのマシンとは限りません。一気に加速するマシンの中、AFが先頭のマシンを追従したまましっかりと捉えてくれました。
HDMIはタイプA対応に

メディア用に組まれた足場からの景色はこんな感じです。今回の「EOS R6 Mark III」の変更点として地味にありがたかったのが、HDMI端子がタイプAになったことです。ファインダー内の映像をATOMOSの「NINJA」で録画していたのですが、変換ケーブルなしで録画できました。


トンネル内でも確実に被写体を検出
予選日もファーストアンダーゲートブリッジのトンネル出口を狙いましたが、今回はコースサイドから狙ってみました。ここはトンネルでもあることから、マシンの音がヤバいです。来シーズンは耳栓を持ってこようと思いました。ただ、トンネル上部のライトに照らされたマシンはボディの曲線が強調され、ヘッドライトも相まってとても美しいのです。


CAPA「流し撮りGP」応援ドライバーの成績は?
最終戦の300kmにわたるレースを制したのは、GT500クラスは1号車「au TOM’S GR Supra」(坪井翔選手 / 山下健太選手)。今シーズン3勝を挙げる強さを見せ、なんと史上初の3連覇を達成しました。GT300クラスは、5号車「マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号」(塩津佑介選手 / 木村偉織選手) が優勝。チームとして初優勝を飾りました。その結果、GT300チャンピオンは65号車「LEON PYRAMID AMG」(蒲生尚弥選手 / 菅波冬悟選手) が獲得しました。


そして気になる、CAPA「流し撮りGP」応援ドライバーの結果はというと、GT500クラスの佐藤蓮選手と大津弘樹選手がドライブする16号車「ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT」は8位という結果。9番手スタートでしたが、前半ほかのマシンとの接触によりマシンの状態を崩す中、14番手でバトンを受けた佐藤選手は徐々に追い上げ、54周目に追突をされながらもポイント圏内でフィニッシュとなりました。三宅淳詞選手と高星明誠選手がドライブする3号車「Niterra MOTUL Z」は5番手スタート。6番手を走行していた3号車は22周でピットインし、三宅選手にバトンを渡します。レース後半の接近戦による順位争いの中、順位も激しく入れ替わり9位でフィニッシュとなり、こちらもポイント獲得となりました。


PW、ニューマシン発表から、F2、ライブと盛りだくさん!
「SUPER GT」では、レースはもちろん、コース上やイベント広場などでさまざまなイベントが開催されます。なので、レースのない時間帯も撮影できるものがたくさんあります。それらのイベントも「EOS R6 Mark III」でたくさん撮影しましたので、ご覧ください。アルゴリズムが改善され、AFの精度がさらに安定し、最高8.5段の手ブレ補正を搭載していますので、どんな被写体にも対応してくれました。
来シーズンのGT500クラスでのデビューが発表された「ホンダ プレリュードGT」のデモランが行われ、100号車「STANLEY TEAM KUNIMITSU」のドライバー・牧野任祐選手がドライブしました。シビックからプレリュードになり、どんな走りをしてくれるのか楽しみです。

キヤノン EOS R6 Mark III RF24-105mm F4 L IS USM マニュアル F7.1 1/125秒 ISO100 WB : オート 31mm

キヤノン EOS R6 Mark III RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM マニュアル F7.1 1/1250秒 ISO100 WB : オート 500mm (トリミング)
複雑なフォーメーションで踊る人物の瞳を捉え続ける
イベント広場で行われたライブのシーン。前後に入れ替わる動きの激しいダンス中でも、瞳にピントを合わせ続けます。もちろん被写体検出は「人物」に設定。


初搭載の美肌モードも試してみた
PW (ピットウォーク) は、整備中のマシンが見られたり、チームのノベルティグッズがもらえたり、ドライバーのサインがもらえたり、レースアンバサダーの撮影ができたりと大人気のイベントです。また、GW (グリッドウォーク) は、スターティンググリッドについたマシンを間近に見ることができたり、スタート直前の選手の表情を見ることもできます。それぞれチケットや参加できる条件は異なりますが、レース観戦に来たら一度は体験してほしいイベントです。
ここは「RF24-105mm F4 L IS USM」を使用しました。また、静止画スペシャルシーン (SCN) に追加された「美肌」モードは「EOS R50 V」と同じく新しいアルゴリズムを採用しているということなので、こちらも試してみました。撮影直後に処理時間が発生するので注意が必要です。


週末の2日間、とにかく撮影しまくりました。予選から決勝レース、さまざまなイベントを含め、撮影枚数は1万枚以上。動画性能は試していませんが、正式発表前 (取材日時点) の「EOS R6 Mark III」でこれだけ撮影したメディアは少ないと思います。「EOS R6」の進化に触れた2日間でした。