2025年の年末に大きなニュースが入ってきた。かねてから登場が期待されていたソニーのフルサイズミラーレスカメラ α7シリーズ最新モデル「α7 V」が発表されたのだ。

市場推定価格 ボディ 42万円前後、ズームレンズキット 44万円前後 (いずれも税込)
※ズームレンズキットには「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II」が付属。
長らく突破できなかったソニーミドルクラスの “約10コマ/秒連写の壁” を打ち破り、最高連続撮影速度は約30コマ/秒。最新の高性能AFとのマッチングで、快速・高精度撮影を実現するハイパワーマシン。その実力を、プレス向け撮影体験会で撮影した作例カットとともに紹介しよう。

新世代のスタンダードフルサイズミラーレス
33M部分積層センサーとBIONZ XR2を搭載、約10コマ/秒の壁を破り約30コマ/秒連写をはじめ多くの面での大進化を遂げた
最近はミドルクラスのフルサイズミラーレスでも、電子シャッターなら約20コマ/秒以上の高速連写ができる機種が増えているのに対し、これまでのα7シリーズは約10コマ/秒どまり。ソニーαで約20コマ/秒以上の高速連写ができるのは、プロ仕様のα1シリーズやα9シリーズしか選択肢がなかったが、「α7 V」の登場でこの状況は一変する。
「α7 V」には3300万画素の部分積層センサーが搭載され、電子で最高約30コマ/秒の高速連写 (最高速でも14ビットRAW記録) &プリキャプチャー撮影が可能。また、画像処理エンジンは新開発の「BIONZ XR2」が初搭載され、これにはAIプロセッシングユニットの機能も内蔵されているので、被写体認識は「α7C II」や「α7R V」と同等以上。プロセッサーを内蔵したことで消費電力も低減し、従来の「α7 IV」よりスタミナ (撮影可能コマ数) も増えている。「α1 II」に迫るAFと連写性能を備えつつ、「α1 II」の半分以下の価格で買える高速連写モデルの誕生だ。


ポイント① 高速連続撮影は最高約10コマ/秒から約30コマ/秒にジャンプアップ
- 部分積層センサーの高速読み出し&BIONZ XR2の高速処理で約30コマ/秒連写を実現 (電子シャッター時)
- プリ撮影機能 (最大1.0秒) を搭載
- 14bit RAWでも約30コマ/秒連写が可能
最大の進化ポイントは、部分積層センサー「Exmor RS」×画像処理エンジン「BIONZ XR2」というキーデバイスの一新により、従来は約10コマ/秒どまりだった連写スピードが、電子シャッターで最高約30コマ/秒に高速化。0.03~1.0秒のプリキャプチャー撮影にも対応している。AF/AE演算速度は「α1 II」の120回/秒には及ばないものの、最大60回/秒と高速で、α7シリーズ最速のレスポンスを誇る。
ドライブモードに設定できる連写スピード (連続撮影の速度) は、30・20・15・10・5枚/秒。4種類のドライブモードを切り換えることで撮影シーンに応じた連写スピードで撮影できるが、一瞬だけ連写スピードを変えたいときは、カスタムボタンに [連写ブースト] を割り当てれば、そのボタンを押している間だけ任意の連写スピードに変えられる (「α1 II」「α9 III」搭載のC5ボタンは装備されていない)。
ちなみに、シグマやタムロンなどサードパーティ製のレンズや、ソニー純正でも初期のEマウントレンズを装着した場合、AF-Cでは最高約15コマ/秒という制約があるのは、α1シリーズやα9シリーズと同じだ。
約30コマ/秒連写とプリ撮影を使用して撮影したミルククラウン




※本記事の作例写真は、すべて2025年12月3日のプレス向け撮影体験会にて撮影したものです。
ポイント② 被写体を認識し、しっかり追い続ける「α1 II」に迫る高性能AF
- 人物・動物・鳥に加え、乗り物や昆虫などフルスペックの認識対象と、最上級機に迫るトラッキング性能を備える新AF
- 被写体の種類を自動で切り替えて認識AFを行う「オート」も搭載
従来の「α7 IV」で、顔/瞳検出対象の被写体は人物・動物・鳥の3種類。AIプロセッシングユニットを搭載したαに慣れていると、えっ、こんなに少なかったっけ? とビックリするが、被写体の頭や目を認識できなくても、ソニーαのリアルタイムトラッキングAFは非常に優秀で、被写体の特徴点を捉えてしっかりの追従してくれるので、「α7 IV」でもそこまで大きな不満は感じなかったと思う。
とはいえ、被写体が複数存在したり、障害物に見え隠れする場合、AF枠にアバウトに被写体を捉えたときなどは、やはりAIによる被写体認識機能があるほうが、撮りたい被写体にピントが合う率が高い。「α7 V」にはAIプロセッシングユニットそのものは搭載されていないが、新開発の画像処理エンジン「BIONZ XR2」に処理機能が統合されていて、「α7R V」や「α7C II」と同等以上の被写体認識が可能。「α1 II」(Ver.4.00) で採用されているリアルタイム認識AF+は非搭載だが、認識対象 [オート] も使えるので、被写体ごとに認識対象を切り換えずに済むのも便利だ。
リアルタイム認識AF+約30コマ/秒連写で撮影したカット



ポイント③ 部分積層センサー搭載によりローリングシャッター歪みは「α7 IV」に比べ低減
通常のセンサーの読み出しスピードは、メカシャッターよりも幕速 (画面の上から下までのデータを読み出す時間) が遅く、高速で横方向 (画面の長辺方向) に動く被写体を電子シャッターで撮影すると、垂直の線が倒れたり、ゴルフのスイングが弓なりにしなるなど、被写体の形が歪んで写ることがある。これが “ローリングシャッター歪み” と呼ばれる現象で、センサーの読み出しスピードが速くなれば、ローリングシャッター歪みは少なくなる。
この読み出しスピードを速くするために開発されたのが “積層センサー” だが、それなりに高価なデバイスなので、現時点ではフラッグシップ機や一部のハイエンドミドル機にしか採用されていない。そこで、センサー回路の一部分だけを積層化してコストダウンを図ったのが、「α7 V」にも搭載されている “部分積層センサー” で、一般的なセンサーよりも歪みが少なくなっている。積層センサーを搭載した「α1 II」のアンチディストーションシャッターの歪みの少なさには敵わないが、高速にパンニング撮影でもしない限り、歪みが気になるケースは少ないと思われる。
■メカシャッター


■電子シャッター


ポイント④ 新センサーによる広ダイナミックレンジ化など、画質面も着実に進化
- 新開発の部分積層センサー Exmor RSの採用でダイナミックレンズは15stopsから16stopsに向上
- AIディープラーニングを活用し安定性が増したホワイトバランス
- 中央7.5段、周辺6.5段に向上した手ブレ補正
- コンポジットRAW、エクステンデッドRAWで、さらなる高画質撮影が可能
部分積層センサーが採用されたことで、高速な読み出しが可能になった。その一方で、高感度特性やダイナミックレンジが低下するのでは? という懸念もあるかもしれないが、ソニーによると、メカシャッター使用時には16ストップのダイナミックレンジを実現 (「α7 IV」は15ストップ) したという。常用ISO感度もISO100〜51200で、「α7 IV」と同じスペックだ。
また、AIディープラーニングの活用により、オートホワイトバランスの精度も進化。センサーから得られた画像からシーンを推定するだけでなく、画像データベースや光源データベースを学習させることで、画像から正確な光源推定ができるようになり、これまで日陰の緑が青っぽくなっていたようなケースでも、青みを抑えた自然な色調で撮影できるよう改善されている。
RAW記録方式も見直されている。これまでは、非圧縮、ロスレス圧縮 (L)、ロスレス圧縮 (M)、ロスレス圧縮 (S)、圧縮と5種類のRAW記録方式があったが、「α7 V」は、ロスレス圧縮、圧縮 (画質優先)、圧縮の3種類にスッキリと整理され、すべてのRAWファイルフォーマットにおいて30コマ/秒の高速連写で14ビットRAWの記録が行える。
「RX1R III」で採用された新クリエイティブルック [FL2] と [FL3] も搭載されているほか、コンポジットRAWやエクステンデッドRAWといった「Imaging Edge Desktop」を使って高画質化を図るソリューションにも対応している。ただ、カメラ内RAW現像機能は、残念ながら未だ非搭載だ。
ハイライトからシャドーまでの階調再現性も優秀

ポイント⑤ 充実の動画性能や操作性を装備
- 4K120pや4K60pフルサイズなど従来機から向上した動画フォーマット
- 放熱構造の改良で長時間撮影を実現
- 4軸マルチアングルモニターを搭載
- CFexpress Type AとUHS-II対応SDXCのデュアルスロットを搭載

正面から見たボディデザインは「α7 IV」とほぼ同じ (グリップ傾斜角がわずかに改良されている) だが、背面モニターが「α7R V」や「α1 II」「α9 III」と同様、4軸マルチアングルモニターに。ボディの厚みが少し増しているものの、チルトとバリアングルのどちらでも使え、側面端子部にケーブルを差し込んでいたり、Lブラケットを装着していてもバリアングル方式でモニターを上向きに回転できるのは便利だ。


記録メディアは従来の「α7 IV」と同じで、スロット1がCFexpress Type AとSD (UHS-II対応) の両対応で、スロット2はSD (UHS-II対応) のみ。バックアップ記録をする人にとっては、高速でコスパの高いCFexpressがスロット1でしか使えないのはちょっと残念な仕様だ。

動画撮影機能も強化されている。4K120p (画角はSuper35mmよりもやや狭い) に対応したほか、4K60pでフルサイズの画角で撮影できる「4K動画画角優先」機能も搭載。4K120p時に4K動画画角優先をONにすると、Super35mmの画角で撮影できる。7Kオープンゲート撮影には非対応だ。
また、放熱構造の改良で、動作環境40℃における4K動画撮影時間が従来の約10分から約60分に改善されており、動画メインのユーザーにも魅力的な機種に仕上がっている。
※2025年12月19日発売の『CAPA』2026年2月号には、さらに詳細な解説を掲載します。
ソニー α7 V 主な仕様

型名 ボディ ILCE-7M5、ズームレンズキット ILCE-7M5M
有効画素数 最大約3300万画素
撮像素子 35mmフルサイズ 部分積層型 Exmor RS CMOSセンサー
マウント ソニーEマウント
AF方式 ファストハイブリッドAF
AF測距点数 最大759点
被写体検出 自動、人物、動物、鳥、車/列車、飛行機、昆虫
ISO感度 静止画撮影時 ISO 100~51200 (拡張 下限ISO 50、上限ISO 204800)、動画撮影時 ISO 100~51200相当 (拡張 上限ISO 102400)
シャッター速度 電子シャッター 1/16000~30秒、メカシャッター 1/8000~30秒、バルブ
高速連続撮影速度 電子シャッター時 約30コマ/秒、メカシャッター時 約10コマ/秒
ファインダー 0.5型 約368万ドット 電子ビューファインダー (倍率 約0.78倍)
画像モニター 3.2型 約210万ドット マルチアングル液晶モニター
手ブレ補正 ボディ内5軸手ブレ補正
中央7.5段、周辺6.5段 (CIPA2024規格準拠、ピッチ/ヨー/ロール補正性能、FE 50mm F1.2 GM 装着時、長秒時ノイズリダクションオフ時)
カードスロット CFexpress Type AカードとSD (UHS-II対応) のデュアルカードスロット
幅×高さ×奥行き 約130.3×96.4×82.4mm
質量 約610g (本体のみ)、約695g (バッテリー、メモリーカードを含む)