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カメラグランプリ2026受賞製品にはどんな開発秘話が? 贈呈式で各社の担当者が明かした

カメラグランプリ2026贈呈式

 

贈呈式は、「カメラグランプリ2026」実行委員長・大江航さん (『フォトコン』編集部) の挨拶でスタート。

カメラグランプリ2026贈呈式
会場は受賞メーカー、選考委員、取材記者などでいっぱいでした。

 

続いて、長年に渡りパートナーシップを結んでいるTIPAから、チェアマンのトーマス・ガーヴァースさんが来日して挨拶。今回のグランプリ受賞製品が、日本のカメラグランプリとTIPAアワードの双方で選出された事実に触れ、真に優れた製品は地域を超えて世界で評価されると述べました。また、昨今のAIやコンピュテーショナル・フォトグラフィーなどの革新が進む現代において、「私たちのような確立したジャーナリズムと専門家の視点による評価は依然として不可欠なものと言えるでしょう」と、写真メディアが果たす役割の重要性を指摘しました。

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トーマス・ガーヴァースさん。TIPA (Technical Image Press Association) は、ヨーロッパを中心としてアジア・オーストラリアなどで発行されている写真・映像関連の専門誌やWEB媒体が加盟する業界団体。日本からはカメラ記者クラブがTIPAと相互加盟しています。

大賞 : ソニー α7 V

カメラグランプリ2026贈呈式:大賞「ソニー α7 V」

新時代の基準を作るべく、開発に長い時間をかけた

プロやハイアマチュアに限らず、幅広い層に届けるベーシック機として位置付けた「α7 V」が大賞を受賞した喜びを語ったのは、ソニーの町谷康文さん。偶然を必然にする最新技術で、新時代の基準を作るという高い目標を掲げ、イメージセンサーや画像処理エンジンなどの開発に長い時間を費やしたそうです。

2025年12月の発売以降、多くのクリエイターに使用されていることを挙げ、「これからもクリエイターの皆様と一緒に、新しい映像表現を実現するカメラを生み出していきたい」と述べました。

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ソニー株式会社 IE事業部カメラ事業部門カメラビジネス部 統括部長・町谷康文さん。

高性能と低消費電力の両立が最大の挑戦だった

ソニーの牛尾拓也さんは、「α7 V」の開発秘話を披露しました。「商品としてのバランスを高いレベルで実現することに徹底的にこだわって開発を進めました」。特に、高性能と低消費電力という相反する要素の両立が最大の挑戦で、新画像処理エンジン「BIONZ XR2」やソフトウェア、電源回路の密な連携により克服したといいます。

苦労して実現したこのバランス性能が評価され、多くのユーザーに愛されていることは開発者として幸せであり、「これからもより満足いただける商品を開発していきたい」と抱負を語りました。

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ソニー株式会社 技術センター商品設計第3部門 商品設計2部3課 α7 V 商品プロジェクトリーダー・牛尾拓也さん。

レンズ賞 : ソニー FE 50-150mm F2 GM

カメラグランプリ2026贈呈式:レンズ賞「ソニー FE 50-150mm F2 GM」

“焦点距離が変えられる単焦点レンズ”を目指して開発した

続いてレンズ賞が贈呈され、ソニーの岸政典さんが「カメラグランプリ2020」以来、6年ぶりとなる大賞・レンズ賞2冠の喜びを語りました。「FE 50-150mm F2 GM」は単なるズームレンズではなく、“焦点距離が変えられる単焦点レンズを作る” という思いで開発したそうです。

F2ながら大三元のように普段使いできるサイズにこだわり、小型軽量化のためには限界かと思われたテレ端135mmを超えて、このレンズでしか表現できない領域まで焦点距離を伸ばしました。ワイド端も当初は70mmスタートの案があったものの、表現の幅を広げたいという思いから50mmに決まったとのこと。

F値や解像力に関してもハードルの高い要求に応えた開発陣には、「今までにない夢のレンズを作ってくれた」と、感謝の言葉を贈りました。

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ソニー株式会社 レンズテクノロジー&システム事業部 事業部長・岸政典さん。

開発当初はまだ技術力が足りていなかった

開発秘話を披露したのは、ソニーの中西仁さん。設計を始めた時点では、50-150mm F2というスペックを実現するための技術力も全然足りていなかったと振り返ります。

そこで、XAレンズを一段上のクラスにし、AFのアクチュエーターもハード・ソフト共に進化させたとのこと。さらに製造プロセスをイチから作り直して、高い組立精度を実現しました。「静止画だけでなく動画でも新しい体験をしていただけるはずです」と、技術力の向上に心血を注いだことを明かしてくれました。

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ソニー株式会社 技術センサー商品設計第5部門 部門長・中西仁さん。
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大賞とレンズ賞を受賞したソニーの皆さん。

あなたが選ぶベストカメラ賞 : キヤノン EOS R6 Mark III

カメラグランプリ2026贈呈式:あなたが選ぶベストカメラ賞 : キヤノン EOS R6 Mark III

ユーザーの声に応え、見えないところにも手を加えた

EOS R6 Mark III」は、ユーザーからのR6シリーズへの期待を丁寧にフィードバックし、大きさは「EOS R6 Mark II」と同じながら、モールドだった部分をマグネシウムに変更するなど、見えないところに手を入れたカメラだと語るのは、キヤノンの佐藤洋一さん。

EOSシリーズが掲げてきたコンセプト「快速・快適・高画質」に加え、オープンゲートなどの数年先まで使える新しい動画機能も追求。海外でも価格と性能のバランスを高く評価され、歩みに間違いはなかったと実感したそうです。

一般投票で選ばれたことについては「撮り手のことを考えたカメラとして評価されたことは、まさに設計者の冥利に尽きる」とのこと。「“今まで撮れなかったものが撮れるようになった” と言われるカメラ作りを進めていきます」と、これからもユーザーの声に寄り添い、真摯な開発を続ける決意を述べました。

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キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG製品第一開発センター所長・佐藤洋一さん。

あなたが選ぶベストレンズ賞 : キヤノン RF45mm F1.2 STM

カメラグランプリ2026贈呈式:あなたが選ぶベストレンズ賞「キヤノン RF45mm F1.2 STM」

心に響く描写とは? オールドレンズも参考にしながら追求した

RF45mm F1.2 STM」は、「“憧れのF1.2” という大口径を、もっと気軽に使っていただきたいという設計者たちの熱い思いから開発が始まりました」と、キヤノンの畠山弘至さん。スペックだけではない撮影体験や、心に響く描写とは何か? オールドレンズをかき集め、あらためて追求したそうです。「大口径と手軽さを両立するため、どこに性能の線を引くか試行錯誤し、快適なAFを軸に開発を進めました」。

古典的なダブルガウスをベースに、あえてバランスを崩すことで、開放のボケと絞ったときのシャープさを両立。電子歪曲収差補正やプラスチックモールド非球面レンズを組み合わせ、このサイズでの手軽さを実現しました。「これからも心に響く描写を追求し、数値やスペックだけではない部分を大事にしながらレンズを作り続けてまいります」。

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キヤノン株式会社 イメージング事業本部 光学技術統括開発センター所長・畠山弘至さん。
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あなたが選ぶベストカメラ賞、あなたが選ぶベストレンズ賞を受賞したキヤノンの皆さん。

カメラ記者クラブ賞【企画賞】シグマ Sigma BF

カメラグランプリ2026贈呈式:カメラ記者クラブ賞【企画賞】シグマ Sigma BF

のび太が一生懸命がんばって作ったカメラ

カメラ記者クラブ賞というと、「カメラグランプリ2008」で同賞を受賞した「DP1」を思い出すと語る、シグマの山木和人さん。当時の選考理由で「改善の余地がある」などと評されたことを挙げ、「シグマはカメラ業界のいじられ役というポジションが定着した気がします」。

また、「ソニーさんやキヤノンさんが出木杉君なら、シグマはのび太」と『ドラえもん』のキャラクターに例え、「のび太が一生懸命がんばって作ったカメラが、Sigma BFです」と、ユニークな表現で会場を沸かせました。

ユーザーからは「BFを使い始めてから写真が楽しくなった」と言われることが多く、「このカメラを作ってよかった」とのこと。「これからもカメラ業界ののび太として、面白いことをやっていきたいと思います」。

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株式会社シグマ 代表取締役社長・山木和人さん。

アルミ削り出しボディは工場の担当者と膝を突き合わせて議論を重ねた

開発秘話を語ってくれたのは、シグマの田中武志さん。「この企画を実現させるために、どんな機能やスタイリングが必要か、技術者全員で昼夜を問わず議論しました」と、開発の日々を振り返りました。その中で、採用した機能もあれば、思い切って削ぎ落とした機能もあったとのこと。

大きな特徴であるアルミ削り出しボディは特殊な組立工程が必要なため、開発の初期段階から工場の組立部門と膝を突き合わせて議論を重ね、実現に至ったといいます。また、シグマのカメラとして被写体認識を初めて搭載するなど、ソフト面でのチャレンジもありました。「技術者全員が、“どうやったらお客様に喜んでもらえるカメラになるのか?”と、いろいろ議論した上で出来上がったカメラです」。

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株式会社シグマ 開発本部 開発第1部 部長・田中武志さん。
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カメラ記者クラブ賞【企画賞】を受賞したシグマの皆さん。

カメラ記者クラブ賞【企画賞】富士フイルム X half

カメラグランプリ2026贈呈式:カメラ記者クラブ賞【企画賞】富士フイルム X half

若手デザイナーが提案した1台のモックから始まった

富士フイルムの米山諒さんは「X half」の開発について、「当時、入社2年目の若手デザイナーが提案した1台のモックアップから始まりました」と明かしました。ハーフサイズの構想や2枚の写真を組む表現といったコンセプトは、その時点で完成度が高いものだったそうです。一方で、それをいかにコンパクトな筐体で実現するかが課題だったと語ります。

「例えば、背面の2つの画面は実はつながっていて、1枚の液晶で出来上がっています」。こうしたアイデアの積み重ねにより課題を克服して、フィルムカメラの楽しさをデジタルで再現し進化させた「X half」が完成しました。「今回の受賞は、そうした新しい価値に対する評価をいただけたのだと嬉しく思っています。今後も面白く新しい撮影体験を提供していきたい」と述べました。

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富士フイルム株式会社 イメージングソリューション事業部 プロフェッショナルイメージンググループ 商品企画グループ・米山諒さん。
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カメラ記者クラブ賞【企画賞】を受賞した富士フイルムの皆さん。

カメラ記者クラブ賞【技術賞】リコーイメージング RICOH GR IV Monochrome

カメラグランプリ2026贈呈式:カメラ記者クラブ賞【技術賞】リコーイメージング RICOH GR IV Monochrome

6年前から開発に取り組んでいた

リコーイメージングの濟木一伸さんは「RICOH GR IV Monochrome」について、スナップで街撮りを楽しむ人たちと一緒に作り上げた、ピンポイントマーケティングの結晶だといいます。

モノクロのフィルターを使って撮影を楽しむGRユーザーが多かったことから、モノクロ専用機開発の気運が高まったのは2020年。モノクロ専用センサーやレッドフィルターの搭載など、GRの速写性や携帯性は生かしつつ、白黒ならではの楽しさを追求しました。

2026年は、GRシリーズ初号機のフィルムコンパクトカメラ「RICOH GR1」誕生から30年。「この節目に、このような素晴らしい賞をいただけたことを誇りに思います。皆様に感謝したい」と語りました。

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リコーイメージング株式会社 取締役・濟木一伸さん。

モノクロ専用機を求めるユーザーの声が届いた

リコーイメージングの大久保恵滋さんは、「GRというカメラはユーザーとのコミュニケーションを大事にしています。このカメラが受賞できたのは “モノクロ専用機が欲しい” とインプットしてくれたお客様のおかげです」と、まずはユーザーへの感謝の言葉を伝えました。

今回の受賞は、開発陣や工場の協力はもちろん、なぜカラーで撮れないのかをユーザーに説明する営業チームまで、全メンバーへの評価だと捉えているとのこと。「本当にいいカメラにできたと思いますので、写真に興味を持ったすべての方に使っていただきたい。白黒写真はすごく楽しいんだという思いを、このカメラに込めています」。

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リコーイメージング株式会社 カメラ事業本部 商品企画センター 商品企画部・大久保恵滋さん。
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カメラ記者クラブ賞【技術賞】を受賞したリコーイメージングの皆さん。

“一部の人たちの特別な行為”で終わらせないカメラの登場に期待

最後に、カメラ記者クラブの代表幹事・柴田誠さんが挨拶し、贈呈式を締めくくりました。

「TIPAとは15年来のパートナーであり、業界を盛り上げる思いは共通しています。日本を代表する専門家とユーザーが最高の一機種を選ぶことこそ、カメラグランプリの核となる価値です。一方、最近の特別賞の選考では “先進性は十分だが、この価格で大衆的な製品と言えるのか” という判断が、最も難しいポイントになっています。スマホからステップアップしたい人が、すぐに手にできるカメラはあまりに少ないと感じます。メーカーの皆様には、誰もが気軽に楽しめる手に入れやすいカメラの開発にも力を入れていただきたい。写真を “一部の人たちの特別な行為” で終わらせない、そんなカメラの登場を期待しています」。

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カメラグランプリとは?

「カメラグランプリ」は、写真・カメラ媒体が加盟するカメラ記者クラブ (2026年5月現在で8媒体1団体が加盟) が主催し、カメラグランプリ実行委員会による運営のもと、選考委員を組織しています。選考委員は、カメラ記者クラブ会員、加盟媒体の編集長もしくは代表者、外部選考委員、特別選考委員で構成。43回目の開催となる今回は、総勢57名が選考にあたりました。

「カメラグランプリ2026」の選考対象は、2025年4月1日~2026年3月31日の1年間に日本国内で新発売された機種。もっとも優れたスチルカメラを選ぶ「大賞」、もっとも優れた交換レンズを選ぶ「レンズ賞」、カメラ記者クラブ会員の合議によって選ぶ「カメラ記者クラブ賞」、一般ユーザーの投票で決定する「あなたが選ぶベストカメラ賞」「あなたが選ぶベストレンズ賞」が設けられています。

〈写真〉カメラ記者クラブ