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富士フイルムが全てのモノクロフィルムとモノクロ印画紙の販売終了を発表…ネオパンの思い出を写真家に聞いた

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社は、黒白フィルムおよび黒白印画紙の販売を終了することを発表した。生産効率の向上や経費節減などでのコスト吸収につとめてきたが、需要の継続的な減少により、安定的な供給が困難になったということだ。

 


「ネオパン100 ACROS」のパトローネ。

 

黒白フィルムのうち、「ネオパン400 PRESTO」については、2014年6月に出荷を終了していた。その後は「ネオパン100 ACROS」が富士フイルム製最後の黒白フィルムとして販売されていたが、ついに2018年10月をもって135サイズ/120サイズともに販売終了となる。

黒白印画紙は、多階調の「フジブロバリグレードWP」が2017年9月に販売を終了。その後は単階調の「フジブロWP」が代替品として販売が続けられていたが、こちらも今回、2018年10月から2020年3月にかけてFM2号/KM2号/KM3号/KM4号の各サイズが、それぞれ販売を終了すると発表された。

  • フジブロWP FM2号:2019年10月出荷終了見込み
  • フジブロWP KM2号:2019年10月出荷終了見込み
  • フジブロWP KM3号(四切):2018年10月出荷終了見込み
  • フジブロWP KM3号(六切/カビネ/大カビネ):2020年3月出荷終了見込み
  • フジブロWP KM4号:2019年3月出荷終了見込み

これにより、富士フイルム製の黒白フィルムおよび黒白印画紙ともに、全種類販売終了となる。なお、カラーネガフィルムやリバーサルフィルム、インスタントフィルムなどについては、今後も販売が継続される。

 

モノクロフィルムを愛用している写真家の佐藤弘康さんは、この件に関して
「今回のニュースは本当に残念でならない。かつては感度100のACROS、感度400のPRESTOともに長巻 のフィルムを愛用していた。いつまでもなくならないでほしかったが、時代の流れによる生産中止が相次ぎ、ACROSも長巻が手に入らなくなってしまった。モノクロフィルムと印画紙での作品作りは、プリントの仕上がりを予測して露出を変えたり、現像時間を考えたりするなど、職人的手仕事といった趣が強い。当然、手間と時間がかかるが、私はそのプロセスが好きだ。いまだにフィルム・印画紙の現像にはスーパープロドール、コレクトールE、スーパーフジフィックス、富士QWといった富士フイルム製品を使用しているので、今後もがんばって作り続けていっていただきたい」
と話している。

※30.5m(100フィート)のフィルム。フィルムローダーという専用の機械でパトローネにフィルムを収納する。パトローネは繰り返し使用することが可能。

 


佐藤さんが愛用していた「ネオパン400 PRESTO」の長巻とパトローネ、「ネオパン100 ACROS」の長巻。奥に見えるのが「フィルムローダー」。

 


2003年くらいに購入した「ネオパン400 PRESTO」長巻の箱(とその値段シール)。現在、他社の長巻で1万2000円から1万6000円ほどするという事実を見ると、隔世の感を禁じ得ない。

 


佐藤さんがネオパンで撮影した作品。


「軟調すぎず硬すぎもしないフィルムの調子が私の好みに合っていて、長年作品撮り用としてネオパン100 ACROS、ネオパン400 PRESTO を使い続けてきた」と、佐藤さん。

 

〈写真〉佐藤弘康 〈文〉佐藤陽子