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キヤノンの「デュアルピクセルCMOS AF」に関する発明が全国発明表彰で内閣総理大臣賞を受賞

最近のキヤノン製一眼レフカメラやミラーレスカメラには、独自の像面位相差AF方式「デュアルピクセルCMOS AF」が採用されている。これは、撮像センサー自体が測距素子としても機能するもので、画質を犠牲にすることなく撮像面のほとんどの位置での位相差AFが可能。コントラストAF方式を採用していた従来機種に比べ、極めて高速かつ正確なライブビュー撮影やミラーレスカメラでのAFを可能にした画期的な技術だ。

EOS 70D
「デュアルピクセルCMOS AF」が初採用された「EOS 70D」(2013年8月発売)。発売時、コントラストAFを採用していた従来機に比べて、圧倒的に高速なAFを実現したことで注目された。実際、「デュアルピクセルCMOS AF」とバリアングルモニターによる撮影は非常にスムーズかつ便利で、このカメラの登場以降、ライブビュー撮影を多用するようになったというキヤノンユーザーは多いはずだ。

 

今回、この「デュアルピクセルCMOS AF」が、「撮像面位相差オートフォーカス方式を実現するイメージセンサの発明(「デュアルピクセルCMOS AF」に関する発明)」として、公益社団法人発明協会が主催する平成30年度全国発明表彰「内閣総理大臣賞」を受賞。同賞として山﨑亮さん(キヤノン株式会社 室長)が、発明実施功績賞として御手洗冨士夫さん(キヤノン株式会社 代表取締役会長 CEO)が表彰された。

全国発明表彰は、日本の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に、公益社団法人発明協会が、多大な功績をあげた発明を表彰するもので、2013年8月発売の一眼レフカメラ「EOS 70D」への初採用以来、製品への採用を進めてきたキヤノンの技術力やその意義が認められたかたちだ。

しかも、キヤノンによると、この発明は撮影画像とともに画素単位の「奥行情報」も取得できるため、被写体形状を立体的に把握できる次世代画像認識への応用も期待される技術とのこと。今後のデジタル一眼レフやミラーレスカメラ、動画撮影用カメラのAFや高画質化のさらなる発展はもちろん、画像解析など広範囲な活用も期待される。

 

デュアルピクセルCMOS AF
「デュアルピクセルCMOS AF」では、撮像素子の素子1つ1つが2分割されたフォトダイオードで構成されており、位相のずれた2枚分の画像信号の生成が可能。これにより、撮像面での位相差AFが行え、AFの高速化と高精度化を実現している。現在では、一部の廉価モデルを除く一眼レフやミラーレスカメラの撮像素子に採用され、最新のEOSシリーズの目玉機能のひとつとなっている。

 


「EOS 70D」の撮像素子。

 

このほか、今回の全国発明表彰では、キヤノングループのキヤノンメディカルシステムズも「2つの基本波の差周波と第2高調波を利用する超音波診断装置の発明」において「文部科学大臣賞」を受賞。同賞として川岸哲也さん(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 グループ長)、今村智久さん(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 参事)、神山直久さん(元 東芝メディカルシステムズ株式会社 参事)が、発明実施功績賞として瀧口登志夫さん(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 代表取締役社長)が表彰を受けている。

 

 

〈文〉河野弘道