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フルサイズ市場No.1を! ニコンが新型Z7で目指すものとは?

ニコンは、Zマウントシステムを採用し、35mm判フルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラ「ニコン Z7」と「ニコン Z6」を2018年8月23日に発表した。発表会の様子を中心に「Z7」の性能と、ニコンが目指す映像の世界を紹介しよう。

ニコンZ7/Z6

 

■「Z」は未来への「架け橋」

多くの海外メディアも招待して、都内で開催されたニコンのNew Products Global Launch Event。そこで発表されたのがニコンの新しいZマウントシステムだ。ニコン代表取締役兼社長執行役員である牛田一雄氏は、これからの未来を見据え、究極・最高を意味し、アルファベット最後の文字として、未来への「架け橋」を想起させるものとして、「Z」のネーミングを採用したと説明した。

ニコンZ7/Z6

 

■フルサイズ市場でNo.1を目指す

これまで、35mm判フルサイズのセンサーを搭載したミラーレスカメラはソニーとライカの製品しかなかった。そこにニコンが参入する形となるわけだが、新マウントの採用は大きなインパクトがあった。

ニコンZ7/Z6

ニコンのZマウントシステムは、大口径の新マウントを採用したミラーレスカメラとNIKKOR Zレンズ、アクセサリーで構成される。ニコンがデジタル一眼レフカメラDシリーズを中心に培ってきた画作りや操作性といったニコンクオリティを継承しているのが大きな特徴となっている。市場の約40%を占めるまでになったミラーレスカメラの開発に、100年かけて培ってきたニコンの技術を注ぎ込もうというわけだ。フルサイズ(FXフォーマット)採用のDシリーズのフラッグシップモデルD850が高い評価を得ていることもあり、Zマウントシステムのミラーレスカメラの登場によって、フルフレーム(フルサイズ)の市場でNo.1を目指すことが宣言された。これは、言ってみればソニーとライカに対する宣戦布告だ。

会場では、フルサイズよりも大きなセンサーを搭載する可能性はあるのかという質問が出たが、Zマウントシステムはフルサイズのセンサーに最適化されており、より大きなセンサーを搭載する予定はないことが明らかにされた。

 

■キャッチコピーは「ミラーレス再興」

Zマウントシステムのキャッチコピーは「MIRRORLESS REINVENTED(ミラーレス再興)」。これまでのニコンのミラーレスカメラは、1インチセンサーを搭載しマウントも小さなもので、どちらかといえばボディのコンパクトさにポイントが置かれていた。

ニコンZ7/Z6

Zマウントシステムは、新次元の光学性能、ニコンクオリティと未来の映像表現の進化への対応という3つの価値でミラーレスカメラ市場に訴求していくと、常務執行役員 映像事業部長の御給伸好氏によって語られた。1インチセンサーを搭載したミラーレスカメラに関しては、今後の新製品の開発予定はないという。

またZシステムとDシステムの両システムに、それぞれ特徴と利点があることから、引き続き一眼レフカメラシステムの開発、提供が継続されると説明された。

 

■高画質モデルの「Z7」

「Z7」は、有効画素数4575万画素、像面位相差AF画素搭載の裏面照射型CMOSセンサーを採用するZシステムの高画質モデル。フォーカスポイントは493点で、撮像範囲の約90%をカバーする。フルサイズのセンサーに最適化したアルゴリズムで、像面位相差AFとコントラストAFを自動的に切りかえてピント合わせを行うほか、NIKKOR Zレンズ使用時には、静止画でも動画でもより高精度の測距を行う。常用感度ISO64~25600を実現し、ISO32相当までの減感、ISO102400相当までの増感も可能。高画質モデルだけに、妥協のないスペックとなっている。

ニコンZ7/Z6

 

■短いフランジバックと大口径のZマウント

フルサイズセンサーに最適化された新マウント「Zマウント」は信頼性と優れた光学性能をより高い次元で提供するものとなる。フランジバックは16mm(従来のFマウントは46.5mm)で、マウント内径は55mm(Fマウントは47mm)と大口径化されている。フランジバックが短くなったことによって、カメラの小型化が実現されている。また、55mmに大型化されたマウント内径により、開放F値F0.95といった明るいレンズ開発が可能になったという。

ニコンZ7/Z6

 

■Fマウントと決別するわけではない

画面のすみずみまで緻密な描写を実現するクオリティの追求が、新マウント採用の理由になっているとの説明だったが、フィルム時代から変わることがなかったマウントの変更に踏み切ったのは、高画質化の追求はもちろんあるが、ミラーレスカメラにかける期待も相当高いものがあると思われる。またマウントの変更によって従来のシステムと決別するわけではなく、マウントアダプターを介して、ほぼ全てのニッコールレンズが使えるという点を大きなアドバンテージにした。

 

■「Z7」と「Z6」の違いは?

高画質モデルの「Z7」とオールラウンダータイプの「Z6」では、画素数、フォーカスポイント、ISO感度、連写速度に違いが見られる。ボディ単体で約44万円の「Z7」と約27万円の「Z6」の価格差を考えれば、納得できるだろう。いずれも新画像処理エンジン「EXPEED 6」を採用し、ファインダーは約369万ドット、有機ELパネルを採用した電子ビューファインダーを搭載する。

ニコンZ7/Z6

 

■フルサイズ一眼レフよりも高いファインダー倍率

電子ビューファインダーの視野率は約100%、ファインダー倍率は約0.8倍で、対角視野角は約37.0°。ファインダー倍率0.8倍は、D850の約0.75倍、D5の0.72倍に対して、さらに大きく見やすいものになったといえるだろう。またファインダー内にもiメニューが表示され、覗いたままの状態で、ISO感度やAFエリアモード、ピクチャーコントロールなどの設定を確認、変更することができる。接眼レンズには反射防止コーティングに加えてフッ素コートが施されている。

ニコンZ7/Z6

ニコンZ7/Z6

 

■新画像処理エンジン「EXPEED 6」

静止画でも動画でも高画質を実現する新画像処理エンジン「EXPEED 6」を搭載する。解像感やノイズ特性が向上しているのが特徴で、レンズの解像力を損なうことなく被写体をシャープに描写でき、高感度撮影時でも効果的にノイズを低減する。さらに、ピクチャーコントロールのシャープネス調整に「ミドルレンジシャープ」が新たに追加された。「輪郭強調」と「明瞭度」、「ミドルレンジシャープ」は静止画だけでなく動画でも有効となる。「Creative Picture Control」は全部で20種搭載されていて、独創的な表現を可能にしてくれる。

ニコンZ7/Z6

 

■ニコン初のボディ内手ブレ補正機構

「Z7」「Z6」ともに、ニコンで初となるボディ内手ブレ補正機構を搭載する。補正効果は最大約5段分。Zレンズでは5軸、マウントアダプターFTZを介したそれ以外のレンズでは3軸の補正となる。

ニコンZ7/Z6

 

■一眼レフと同等以上の信頼性を目指す

Zシリーズの信頼性は、デジタル一眼レフカメラと同等以上を目指しているという。ボディには軽量で堅牢なマグネシウム合金を採用し、高い剛性と耐久性とともに軽量化を実現する。また接合部にシーリングを施し、D850と同等の防塵・防滴性能を備える。ちなみに「Z7」のシャッターユニットもD850と同等の20万回のテストをクリアしている。

ニコンZ7/Z6

 

■マウントの大きさが一目瞭然!

厚さ67.5mmのボディには、シャター、センサー、各種基盤がぎっしりとつまっている。マウントからセンサーまでの間にはシャッターユニットがあるだけで、フランジバックはわずか16mm。ミラーのない構造だから実現できたものだ。ボディサイズに対していかにマウントが大きく、フルサイズのセンサーが大きいのかが分かるだろう。

ニコンZ7/Z6

 

■開放F1.0以下の明るいレンズが開発可能に

Zマウントシステムが目指したのは新次元の光学性能だ。マウントを大口径化したことで、光学設計の自由度が増し、これまでにない映像表現を可能にするレンズ設計が実現すると御給伸好氏は語る。開放F値0.95といった明るいレンズや高性能化と小型化の両立の実現など、Fマウントのレンズではできなかった多くのことが、Zマウントシステムでは実現可能になるという。

ニコンZ7/Z6

 

■Fマウントレンズが装着できるマウントアダプターを用意

「マウントアダプターFTZ」は、既存のFマウントレンズとの互換性を確保するマウントアダプター。新マウントのカメラでは、どうしても対応レンズの少なさが問題となるが、それを解消する「マウントアダプターFTZ」の存在は大きい。「Z7」「Z6」のマウントアダプターキットを購入すれば、既存の多くのFマウントレンズをそのままZシステムの一部として使うことができる。

ニコンZ7/Z6

 

■マウントアダプターを介してもFマウントレンズの使用感は変わらない

「マウントアダプターFTZ」を使った場合でも従来レンズの使い勝手は大きく変わらない。AI NIKKOR以降の約360種のFマウントレンズではAE撮影に対応し、モーターを内蔵するAF-P、AF-S、AF-Iレンズ90種以上でAFとAE、VR機構が動作する。また、モーターを内蔵するAF-P、AF-S、AF-Iレンズ計90種以上ではAE/AF撮影が可能で、ほぼ違和感なく従来レンズが使える点は高く評価できる。なお、VR機構つきの既存レンズを使用した場合には、レンズ側でヨーとピッチを、ボディ側でロール補正を行うという。

ニコンZ7/Z6

 

■400本以上のNIKKORレンズを装着できる

Zマウント対応レンズ群は400本以上ある。Zマウントの規格をサードパーティーに情報開示する計画はないということなので、マイクロフォーサーズやソニーEマウントのような形で、他社からZマウント用のレンズが出てくることは当面ないと思っていい。ただし、これまでのようにリバースエンジニアリングでZマウント用レンズが出てくる可能性については否定しなかった。

ニコンZ7/Z6

 

■3本のレンズを開発中

タッチ&トライの会場には、開発中の「24-70mm f/2.8」「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」「14-30mm f/4」のモックアップが並んでいた。Zマウントは光学設計の自由度がかなり高くなっており、AF性能と光学性能を大幅に向上することが可能だという。高い光学性能を追求したS-Lineでは、品質管理のレベルも一段高く設定されているとのことだ。

ニコンZ7/Z6

 

■2019年以降は9本のレンズを計画中

発表会では、Zマウントシステムのレンズロードマップが示された。年内はキットレンズの「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」と9月下旬発売予定の「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」、10月下旬発売予定の「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」の3本のみとなっているが、来年以降は開発発表された大口径「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」をはじめ9本のレンズの登場が計画されている。いずれも高い光学性能を追求したS-Lineのレンズとなっており、高画質へのこだわりが伺える。

ニコンZ7/Z6

 

■4K UHD動画の手持ち撮影が可能

「Z7」「Z6」ともに4K UHD/30pの動画をフルフレームで撮影することができる。また4K UHD、フルHDの動画撮影時にはアクティブD-ライティング、電子手ブレ補正、フォーカスピーキングが使用できる。さらに約5段の手ブレ補正効果を発揮するボディ内手ブレ補正の機能と、ブレを画像処理で軽減する動画専用の電子手ブレ補正を組み合わせたハイブリッドVRを採用。4K UHD動画でも手持ちで撮影が可能となっている。

ニコンZ7/Z6

 

■一眼レフの開発も継続

ミラーレスカメラZシステムの良いところばかりが強調され、従来のデジタル一眼レフDシステム(Fマウント)がどうなるのか、気になっているユーザーも多いと思うが、ニコンとしてはDとZの両輪で技術革新を続け、映像文化に感動を与え続けていくことを明言した。

光学ファインダーをきちんと自分の目で確認してシャッターを切りたいユーザーは確実にいるわけだし、光学ファインダーのメリットもある。一方、スマートフォンからのステップアップで、よりハイクオリティな写真を撮りたいと思ってカメラを手にするユーザーはミラーレスに抵抗がない。市場の反応を見ながらという言い方ではあったが、今後も両方のユーザーに向けた製品開発が進められる。

ニコンZ7/Z6

ニコンZ7/Z6

 

■Zシステムのお披露目はファンミーティングで

Zシステムのお披露目は、2018年9月1日(土)の東京会場を皮切りに全国7会場で開催される「ニコン ファンミーティング2018」でということになる。詳しくはオフィシャルサイトでチェックしよう。

ニコンZ7/Z6
http://www.nikon-image.com/event/fanmeeting_2018/

 

 

〈文〉柴田 誠