ハッセルブラッド・ジャパンが2018年11月17日に開催したポートレート撮影講座の講師として、ハッセルブラッドグローバルアンバサダーおよびブロンカラーアンバサダーを務めるSails Chong（セールス・チョン）さんが来日した。数々の独創性あふれるポートレートを撮影しているチョンさん。最高のポートレート写真を撮影するためには、7つの重要なことがあるという。それは何か？
中国のトップウエディングフォグラファーとして活躍しているチョンさん。フォグラファーとして約10年の経歴を持つ彼だが、10年前は今の自分を想像することはできなかったと語る。それまでは商社マンだったそうだ。
セールス・チョンさんが語る 作品作りに重要な7つのアプローチ
① コンセプト
何をやるにもコンセプトが非常に重要だとチョンさんは切り出した。ポイントにしているのは、時代遅れにならないもの、SNSなどで拡散しやすい内容、そして今流行りの話題かどうかだ。数年後に見たときにダサいと思うようなものはよくない。だから伝統的なものを取り入れるのだと言う。
② ロケ地選び
どこで撮るかも重要なポイントになる。誰でも簡単に思いつかないような場所を選んで撮るようにしているのがチョンさんのやり方だ。簡単に思いつく場所なら誰もが行って撮るから、斬新な作品にならないのだとチョンさんは言う。もちろん、撮影許可が取れる場所が基本だ。
③ いかにコストを下げるか
撮影した写真を提供する条件で、衣装やアクセサリーを貸してもらうことも。ヘアメイクさんも自分の作品の写真が必要なので、衣装と同じように協力し合う。また記録として残すために、動画撮影のチームにも協力してもらう。撮影メンバーは、自分と同じレベルの人を集めることがポイントなのだと言う。そうやってお互いに刺激しあい、高め合っていくことが大切なのだそうだ。
④ モデルのセレクト
ポートレートはモデル選びが重要な要素の一つ。チョンさんがターゲットにしているのはインスタグラマーの女性たち。プロのモデルではない。普段からInstagramをチェックして、コンセプトが決まったら、Instagramで「写真のモデルになってくれませんか？」と声をかけるのだと言う。声を掛けるポイントは、フォロワーのたくさんいる人。フォロワーの多いインスタグラマーほど写真が必要になってくるからだ。
⑤ ロケハン
準備のない撮影はしないと言い切るチョンさん。撮影の前に必ずロケハンの時間を設けている。ロケハンのポイントは自然光の確認だ。移動時間を把握して、撮影当日に余裕を持って動けるように確認しておくことも重要だ。ロケハンが終わったら、当日どう撮るのか、起こりそうな問題をチームで確認し合うことも大切だと言う。必要な機材を確認して、用意しておく。スケジューリングをきっちりとすることを心掛けているのだそうだ。
⑥ 撮影のアイデア
気になる撮影のアイデアはどうやって生み出されているのだろうか。真似するのは恥ずかしいことじゃないというのがチョンさんの考え方。作品を分析して、いい部分を活かして撮ってみればいい。もちろん、ただのコピーを発表するのはNGだが。普段からインターネット上の画像や映像を見ることが、撮影の参考になっているそうだ。
⑦ まとめと反省
撮っただけではダメだと話すチョンさん。常に振り返って、昔の作品を今だったらどう撮るかを考えてみるようにしているのだという。失敗と反省を繰り返して、やっと自分のものになるのだ。
さらに、言語という武器がなければ、何も始まらないとチョンさんは強く言う。日本語、台湾語、広東語、英語を話し、簡単なロシア語なども理解できるチョンさん。技術はコピーすることができるが、センスや感性はコピーすることができない。感性をアップグレードさせる方法の一つは言葉なのだと話す。
気になる撮影機材については、ハッセルブラッドのカメラを使っているから、ブロンカラーの機材を使っているからいい作品が撮れるんじゃないのと言われることがあるけれど、それは関係ないと話す。機材はこうしなければいけないというルールはないのだから。ただ、ライティングは重要だと感じているそうだ。
撮影講座では、チョンさんの華麗なライティングテクニックが披露された。レポートはこちら。
https://getnavi.jp/capa/news/273154/
〈写真・文〉柴田 誠