CAPAのモータースポーツ連載フォトコンテスト流し撮りGP。1年間の激戦を勝ち抜き、2019年シーズンのシリーズチャンピオンを獲得した山田和宏さん(岐阜県)の作品によるチャンピオンズギャラリーです。新チャンピオンのコメントとともにお楽しみください。
※流し撮りGPは雑誌『CAPA』に連載されています。併せてお楽しみください。
■流し撮りGP2019シリーズチャンピオン山田和宏さんのコメント
二十歳のときにF1、モータースポーツと出会い12年間撮影してきました。当初はサーキット撮影する人もまだ少なかったのですが、今ではたくさんのファンがモータースポーツを撮影されています。そんな中で、CAPA流し撮りGPのチャンピオンを獲得できたことを光栄に思います。
私の写真は、光の明暗と背景の彩りを強調して、撮りたいものを明確にすることを心がけています。サーキットでは、陽の向きを特に重要視していて、細かく時刻を計算して撮影スケジュールを立てています。
定番の撮影場所以外にも毎年数か所は新しい撮影スポットを探して撮影意欲を高めています。小林稔審査委員長に評価していただいた「プロが撮れない(撮らない)作品」も、ここ数年の撮影スポット開拓と、流し撮りファンのSNSに掲載されている多くの作品を参考にして撮影できた作品たちです。
仕事の都合上、2019シーズンで流し撮りGPへの全戦応募フル参戦はあきらめる予定でしたので、今回チャンピオン獲得したことで悔いなく勇退することができます。今後も新たな作品づくりのためにサーキットには通いながら、モータースポーツの素晴らしさを伝えていきたいです。ありがとうございました。
山田和宏さんのInstaguramアカウント @mtkazu.photography
ハレーション
7年前、初めて流し撮りGPで入賞した作品。公募フォトコンテストに掲載されることが初めてだったこともあり、とても喜んだことを今でも覚えています。翌年からフル参戦で応募するようになり、本格的に考えて作品を撮るようになりました。
意地のぶつかり合い
大雨の中の再スタートで、中断時間中も同じ場所で狙いを変えず耐えて撮影。必ずバトルがあり、オーバーテイクの瞬間があると信じて待ち続けた結果の1枚です。雨の中の水煙とライトのリフレクションで味のある作品になりました。
フルパワー
HONDA F1 が7年振りに鈴鹿に帰ってきた! そんなファンの思いとは裏腹に、パワーと信頼性不足に泣き、世界チャンピオンのF・アロンソ選手からは「GP2エンジンみたいだ!」と格下呼ばわりされ、厳しい戦いとなった2016年の日本GP。いつかHONDAが鈴鹿で優勝することを信じて撮影した作品が、鈴鹿サーキットのF1フォトコンで特別賞に選ばれました。昨年、HONDAが復活優勝したときに「あのときの悔しさがあったから!」と振り返ることができた、特別な1枚です。
おつかれ様でした
ゴール後のパレードラップでエステバン・オコン選手が観客に挨拶する姿を、逆バンクの看板のすき間から夕陽が射しているタイミングで撮影した1枚。新しい撮影ポイントを求めて、例年とは違う撮影スケジュールを組んでトライした日本GPでしたが、2年連続でF1日本GPフォトコンテストで入選させていただいたことで、新撮影スポット探しに挑戦し続ける自信につながりました。
声援を背に
満員の観客席の彩りを活かし、カラフルに仕上げた流し作品。小林稔審査委員長の「美しく楽しい流し撮り」という評価コメントどおり、撮影しているときもレタッチしているときも楽しかった作品です。この頃から、背景の色合いや流れの量をさらに意識して撮影するようになりました。
白い三連星
初入賞から7年という長い歳月を経て、悲願の優勝を獲得できた作品。この作品は運もあったと思いますが、それを逃さない集中力と準備を整えたからこそ撮れた作品です。積み上げた経験がなければ撮り逃していたと今でも思います。レタッチも、2重の金網を生かして背景のトーンを落とし、3台のマシンを際立てて「カッコイイ」を追求した編集にしました。
Power of light
鈴鹿のナイトラン恒例となった観客席のペンライト流し撮り。きれいでカラフルで流し撮りしたくなるシチュエーション。この作品は広角のワイド画面で、10時間レースのフィナーレに暗闇に浮かぶグランドスタンドの美しさを表現しました。自分の中では最高レベルの流し撮り作品となりました。レースでこのような美しく感動的なゴールを撮影することができるのは、鈴鹿サーキットさんの演出努力と、多くの観客の協力があるからです。本当に皆さまに感謝です。
color
これは2019流し撮りGP第1戦で入賞した「雨の中のカラー」のオマージュ作品。背景といえば「後ろ」というイメージですが、「前」に流れやボケを置くきっかけとなった入賞作品でした。観客の姿を活用して流し撮りでカラフルにすることで、質素な画面に彩りと深みを出しました。彩りが出るように観客の服の色を見ながら撮影場所を選び、マシンがより目立つように、人と人の間に見える瞬間を狙ってシャッターを切っています。
隙間から見える世界
こちらも2019流し撮りGP第2戦で入賞した作品の別構図作品。この看板越しの作品は流し撮りファンからの反響が多くあり、驚きや好評のメッセージをたくさんいただきました。何か違う視点で撮影したいと思い、看板の隙間を観察してチャレンジした作品。看板の背景はきれいに出るよう流しの量を増やし、置きピンで撮影しました。難しかったのは、マシンが突然現れるため、それにタイミングを合わせることでした。
暗闇に進む
2018年に見つけた新撮影スポットでの作品。日が沈む前の時間帯しか撮影できない場所で、限られたレースでしか撮影ができず、また天候にも左右されます。背景の森が逆光で暗くなりマシンとタイヤバリアが照らされ幻想的シルエットとなります。より印象を良くするためコントラストを強めに仕上げた作品です。
CAPA「流し撮りGP2020」は、2020年4月からエントリー受付を開始予定です。皆様からのご応募をお待ちします。
流し撮りGPの審査委員長は、写真家の小林稔さん(日本レース写真家協会 [JRPA] 会長)。流し撮り作品の迫力や撮影技術など、写真の総合力を評価・審査します。