ドイツのライカカメラ社は、国際的な写真関連用品専門のオークション「Leitz Photographica Auction (ライツ・フォトグラフィカ・オークション)」をオーストリア・ウィーンで、2020年6月13日の11時 (現地時間) に開催する。36回目の開催となる今回は、400点を超えるライカ、ライツ社が製造した製品とレアなコレクターズアイテムが出品される予定となっている。
「Leitz Photographica Auction」は、2018年のオークションで試作機の「Leica 0-series (ライカ 0シリーズ)」が、カメラの史上最高額となる約3億円で落札されたことでも知られている。また2019年には、東京・銀座のライカプロフェッショナルストア東京でプレビューが開催され、オークションの目玉となる約30点の希少なコレクションがお披露目された。
■今回のオークションで注目の出品カメラ
今回出品されているものの中で、特に注目度が高いのは、アメリカの写真家でフォトジャーナリストのウォーカー・エヴァンス氏が所有していた「Leica M2 Black Paint (ライカ M2 ブラック ペイント)」。予想落札価格は4万〜5万ユーロになるとみられている。20世紀で最も偉大な写真家のひとりに数えられているエヴァンス氏は「Leica M2 Black Paint」を1962年に購入し、1973年まで使用。その後、エヴァンス氏のアシスタントが譲り受け、今回のオークションに出品される運びとなった。
「Leica M2 Grey Paint Betriebskamera (ライカ M2 グレー ペイント ベトリーブスカメラ) 」も今回のオークションの目玉のひとつ (予想落札価格 40万〜50万ユーロ)。1960年に20台製造され、現存するのは10台ほどと言われている、グレーペイント仕上げが施された「ライカ M2」。今回出品されるのはその試作モデルで、シリアルナンバーは 2071。1958〜1962年に製造された「ライカ M2 ベトリーブスカメラ」(シリアルナンバー2001〜2082) の中の1台という、ライカカメラの中でも非常に希少なアイテムのひとつだ。
歴史的価値が非常に高い「Leica 0-Series Prototype (ライカ 0シリーズ プロトタイプ)」も出品予定となっている (予想落札価格 80万〜100万ユーロ)。このカメラは、ウル・ライカに続くカメラ開発の過程でつくられた歴史的なプロトタイプとして知られ、カメラ製造初期の時代に、開発過程が技術的にどのように進化していったのかがわかる非常に興味深い製品。しかも出品される機種には、何度か改良された形跡が残っていることから、数年の間テスト機として使用されたものだろうとされている。またこのカメラには、ライカ製品に詳しいオットマール・ミヒャエリー氏の解説文が付属する。
■「ライカ M10 プロトタイプ」の落札金を慈善団体に全額寄付
「Leitz Photographica Auction」に出品される1台の落札金が、慈善団体カリタス・ウィーンに寄付されることになっている。今回対象となっているのは、「Leica M10 Prototype P01 (ライカ M10 プロトタイプ P01)」。「ライカ M10」のプロトタイプで、ISO感度設定ダイヤルに「PUSH」の設定があることや、前面のフォーカスボタンを装備していない、バリースロットの設計が異なるなど、細部のデザインが通常の「ライカ M10」と異なる部分が多数あるというもの。コレクターズアイテムとして非常に魅力的なカメラだ。予想落札価格は、8千〜1万ユーロ。
■オークションにはオンラインでも参加可能
「Leitz Photographica Auction」の事前入札は、オンライン、書面、電話で受け付けられている。またオークション当日には、会場入札のほかに、ライブオークションサイトでのリアルタイム入札も可能となっている。興味のある人は、覗いてみるといいだろう。
〈文〉柴田 誠