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5年ぶりに登場の高感度フルサイズミラーレス「α7S III」は初めてづくしの超意欲モデル

ソニーは、フルサイズミラーレスカメラ「α7S III」を2020年10月9日に発売する。ソニーEマウントを採用した高感度モデル「α7S」シリーズの約5年ぶりとなる第3世代で、シリーズで初めて像面位相差AFシステムを搭載した。価格はオープンで、市場推定価格は410,000円前後 (税別)。2020年8月4日から予約販売を受け付ける。

α7S III

■システム刷新で処理能力が大幅に向上

「α7S III」は、システムのハードウェア構成を刷新。新開発の画像処理エンジンBIONZ XRにAFや被写体認識などのリアルタイム処理を集約することで、従来比約8倍の処理性能を実現している。また、伝送速度が速い銅配線を採用することで、従来比約2倍のデータ読み出し速度も実現しており、高速に動く被写体を撮影する際に起こりやすい動体歪み (ローリングシャッター現象) が、大幅に低減されている。

α7S III

■幅広い感度域に対応

イメージセンサーは、新開発の有効約1210万画素・裏面照射型CMOSセンサー Exmor Rを搭載する。α7Sシリーズで初となる裏面照射型構造と、イメージセンサーの性能を最大限に引き出す画像処理アルゴリズムとの組み合わせにより、静止画・動画ともに常用ISO 80〜102400の幅広い感度域でノイズの発生を抑え、高い描写力を実現した。拡張感度は、静止画時 ISO 40〜409600、動画時 ISO 80〜409600。

ノイズを低減させることで中・高感度域では従来機種 (α7S II) 比で1段分の画質向上を実現。全ての感度域で、低ノイズで滑らかな階調表現や細やかな質感、色再現性能などを実現している。

新搭載の可視光+IRセンサーの活用により、AWB (オートホワイトバランス) 性能も進化。また、肌色再現やハイライトの粘り (ロールオフ) が大幅に改善され、高感度時のノイズが抑制されて、解像感の高いクリアな画質が得られる。

■連写性能

CFexpress Type Aカード使用時には、最高10コマ/秒の高速連写を実現し、大容量バッファメモリーと高速処理性能による1000枚以上の非圧縮RAWファイルの連続記録も可能となっている。

■AF性能

ファストハイブリッドAFシステムをα7Sシリーズとして初搭載。高速性・追随性に優れた像面位相差検出方式とAF精度の高いコントラスト検出方式のメリットを兼ね備えたもので、動きの速い被写体に高精度かつ滑らかにフォーカスを合わせ続けることができる。

α7S III

「リアルタイム瞳AF (人物)」の検出能力は従来比で30%向上。角度のある横顔や上向き、下向きの顔でも、自動的に瞳にフォーカスを合わせ続けることができる。AIを活用したリアルタイムトラッキングで画面内の任意の場所にいる人物を追従し、瞳を認識すればリアルタイム瞳AFでの追従が可能となっている。

進化したAFアルゴリズムにより、測距可能輝度範囲の下限値はEV−4からEV−6 (AF-S時・F2.0・ISO 100) へ拡大した。

■多彩な表現が楽しめるクリエイティブルック

撮影した画像を思い通りの雰囲気に仕上げることができる機能「クリエイティブルック」を新たに搭載した。コントラストがありながら落ち着いた発色と印象的な色味の「FL」や、マットで柔らかな質感の「IN」など、色合いや濃さ、明るさ、コントラスト、シャープさなど多彩な要素を組み合わせた全10種類の画作り設定がプリセットされている。選択したモードをベースに独自の画作りができるほか、好みの設定をカスタムルックとして登録することも可能だ。

■階調豊かで圧縮率の高いHEIFフォーマットに対応

ソニーのデジタルカメラとして初めて静止画記録フォーマット HEIF (High Efficiency Image Format) に対応する。10-bitの豊かな階調表現で、被写体を微細に描写することができる。また、HEIFの高い圧縮技術により、従来のJPEGと同等の画質を保ちながら、約2倍の圧縮効率でファイル保存が可能となっている。なお、HEIF画像の閲覧・編集には、2020年9月公開予定の「HEIF Converter」が必要だ。

さらに、HLG静止画モードを新たに搭載。これにより、ソニー製のHDR (HLG) 対応テレビとHDMIケーブルで接続することで、記録したHEIF画像を従来よりも広いダイナミックレンジで、大画面で楽しむことができるようになっている。

■操作性

ソニーのミラーレスで初めてバリアングル液晶モニターを搭載
液晶モニターは3.0型・約144万ドットの大画面で、タッチ操作にも対応。ソニーのミラーレスカメラで初搭載となる、横方向に開くバリアングル機構を採用する。ジンバルやリグを使用した撮影時にもモニターの操作性が損われることがなく、動画撮影中は、撮影画面が赤枠で表示され、認識しやすくなっている。

α7S III

高解像の電子ビューファインダー
電子ビューファインダーは、新開発の約944万ドット (Quad-XGA)・0.64型の有機ELディスプレイを採用する。解像度は「α7R IV」比約1.6倍の世界最高解像度 (発表時点) で、ファインダー倍率0.90倍 (対角視野角 約41°) も世界最大レベル。約25mmのハイアイポイント、周辺歪みを抑えた低減設計により、すみずみまでクリアな映像を映し出すものとなっている。防塵・防曇性能を備えており、被写体に応じたモード設定が可能。

α7S III

CFexpress Type A対応のデュアルスロット
次世代メモリーカード規格のCFexpress Type Aを世界で初めて採用しており、CFexpress Type AメモリーカードとSDXCメモリーカードに対応したデュアルスロットを搭載する。リレー記録で長時間撮影をしたり、2つのメモリーカードへの同時記録でバックアップすることが可能だ。

α7S III

メニュー構成を刷新
メニュー構成も刷新し、一覧性とアクセス性が向上。迅速な設定操作が可能となっている。タッチによるメニュー操作にも対応したことで、より直感的にレスポンスよく設定変更ができるようになった。Fn (ファンクション) メニューは、静止画・動画で別設定が可能になるなど、多彩なカスタム設定にも対応している。

より防塵・防滴に配慮
フィールドでの使用を想定してセンサークリーニング機能が強化されており、より防塵・防滴に配慮した設計となっている。また、新たにHDMI Type-A端子を搭載。USB Power Deliveryにも対応し、給電・高速充電を実現する。

α7S III
シーリング

■動画性能

4K/120p記録に対応
動画撮影においては、15+ストップの広いダイナミックレンジで階調豊かな映像表現が可能となり、新開発のイメージセンサーと画像処理エンジンの組み合わせにより、画素加算なしの全画素読み出しによる高精細4K/120p・4:2:2 10bit記録を実現した。

動画AF性能
AFトランジション速度を7段階に設定可能で、AF乗り移り感度は5段階に設定することができる。また、追従する被写体を画面のタッチ操作ですばやく変更可能。マニュアルフォーカス中には、タッチフォーカスによるピント合わせも可能だ。さらに、モバイル機器から「Imaging Edge Mobile」(Ver.4.2以降) を使用して、タッチ操作によるフォーカシングができるようになっている。

温度上昇を抑制
撮影中の温度上昇を抑制するために低消費電力を実現するだけでなく、カメラの内部構造やパーツを新たに設計。イメージセンサーや画像処理エンジンの駆動に伴う熱を効果的に分散して放熱させている。これにより、1時間を超える4K/60pの動画記録をバッテリー容量を使い切るまで可能となっている。

手ブレ補正
αシステムで初めて「動画専用アクティブモード」を搭載する。手持ちによる歩き撮りなどさまざまな場面で、安定したなめらかな映像を撮影することができる。

音声記録
デジタルオーディオインターフェースに対応したマルチインターフェースシュー (MIシュー) を搭載する。高音質な音声記録を求める映像クリエイターの要望に応えたもので、別売のショットガンマイクロホン「ECM-B1M」、XLRアダプターキット「XLR-K3M」と組み合わせにより、音声をデジタル信号でダイレクトにカメラに入力することができ、ノイズを徹底的に抑制した高音質な録音が可能となる。「XLR‐K3M」との組み合わせでは、αシステムで初めてデジタル4CHや24-bitでの音声収録に対応する。

α7S III

■通信機能

PCリモート (テザー) 撮影や画像のバックアップが可能な、SuperSpeed 5Gbps (USB 3.2) 対応のUSB Type-C端子を搭載する。無線LANは、IEEE 802.11ac規格準拠の5GHz帯に加え、複数のアンテナで通信品質を向上させるMIMO (multiple-input and multiple-output) に対応。「α7R IV」に比べ、高速通信性能が2倍以上向上した。

α7S III

また、新たにUSBテザリングにも対応し、スマートフォンなどの5G対応端末とUSB接続により、5G網を活用した高速かつ安定したFTPファイル転送も可能となっている。アダプターを用意すれば、USB経由での有線LAN接続が可能で、FTP転送機能は新たに動画ファイルにも対応した。

■先行展示

2020年7月31日から、ソニーショールーム/ソニーストア銀座で先行展示。ソニーストア札幌・名古屋・大阪・福岡天神では、期間を限定して先行展示が行われる。

SONY α7S III 主な仕様

型名 ILCE-7SM3
有効画素数 約1210万画素
撮像素子 35mmフルサイズ (35.6×23.8mm) Exmor R CMOSセンサー
マウント ソニーEマウント
ISO感度 ISO 80〜102400 (拡張:下限 ISO 40、上限 ISO 409600)
シャッター速度 1/8000〜30秒 (静止画撮影時)、バルブ
ファインダー 0.64型 9,437,184ドット 電子式ビューファインダー
画像モニター 3.0型 1,440,000ドット TFT液晶モニター
記録媒体 SD/SDHC/SDXCメモリーカード (UHS-I/II対応)、CFexpress Type Aカード
サイズ (幅×高さ×奥行き) 約128.9×96.9×80.8mm
質量 約614g (本体のみ) / 約699g (バッテリー、メモリーカードを含む)

 

 

〈文〉柴田 誠