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夜の闇に浮かび上がる植物たちの“気”を感じる写真集『真夜中のエーテル』

松本コウシさんの写真集『真夜中のエーテル』が発売された。

 

松本コウシ作品集『真夜中のエーテル』

 

夜、松本さんは郊外にある森に入り、闇に紛れ込むように散策を続ける。そこで頼るべきものは視覚ではなく、植物の「気の流れ」を感じることだという。

草木は壮大な生命循環の匂いを発し、それに刺激されて写真家は光を当てシャッターを切る。無作為に伸びる枝は繊細な神経細胞にも見え、艶やかに、そして鈍く発色した花びらが濃密に生命の存在を主張する。写真集の中央にはモノクロームで描かれた森が見開きで配置され、カラーで捉えた植物たちが前後に広がる。

長年、夜の都市を撮影してきた松本さんは、月の光と人工光に照らされた風景に人の営みの堆積や気配を探索してきた。松本さんが彷徨う森の隣には畑があり、その向こうには街の光が見える。今はそんな人との距離感が心地よく感じる。

 

松本コウシ作品集『真夜中のエーテル』
A4判・114ページ
本体 4,500円(税別)
2020年5月18日発売
QUATTRO

 

 

〈文〉市井康延