CAPAのモータースポーツフォトコンテスト「流し撮りGP」では、年間シリーズチャンピオン獲得者の勝利を称える「チャンピオンズギャラリー」を紹介しています。2022年のシリーズチャンピオン・細野勉さんの作品とインタビューをお楽しみください。
受賞コメント「とにかくたくさん撮ること! が信条です」
憧れだったCAPA流し撮りGPのシリーズチャンピオンを獲得することができて、こんな光栄なことはありません。渇望していた初勝利、そして年間シリーズ制覇と、すべてがかなって夢のようです。
今シーズンを振り返ると、序盤で2勝と最高のスタートを切ったものの、後半戦はライバルの素晴らしい作品の数々に猛追されて、背後からのプレッシャーは計り知れないものでした。
それでも、最後までリードを守り切ることができたのは、1枚でも多く撮ることを考え、準備、実践してきた日々の積み重ねのおかげだったと思います。これからも「とにかくたくさん撮ること」を信条に、チャンピオンの名に恥じぬよう精進してまいります。
今回はチャンピオンズギャラリーという晴れの舞台をご用意いただきましたので、これまでの投稿応募の中から思い出深い作品を選んでみました。これから流し撮りGPにチャレンジしてみよう、サーキットで撮影してみたい、と思われている方にとって少しでも参考になれば幸いです。
CAPA流し撮りGP2022 チャンピオンズギャラリー
「加速!」2018第7戦 予選通過
初めて予選通過した作品になります。いつかはチャレンジしたいと思っていた流し撮りGP。フォトコンを楽しんでいる方と知り合ったのがきっかけとなり、参戦を開始しました。書店の本棚の前に立ったときのドキドキと、誌面に自分の名前を見つけた時の感動は今でも忘れられません。
「疾きこと風の如く」2019第1戦 7位
予選通過で自信をつけ、2019シーズンからフル参戦を開始し、なんと初戦から初入賞! 自分の作品が誌面を飾る誇らしさは、また格別でした。小林先生の「風洞テストのような光の帯が不思議に面白い」と講評いただき、作品のテーマがしっかり伝わって評価をもらえたこともとても嬉しかったです。
「縁石の上から」2019第7戦 3位
作品のバリエーションを広げるため、止めて見せる構図にチャレンジした作品です。この作品は、新調したプリンターを使って、色にもこだわってプリントしました。シンメトリー構図と赤の配色がバッチリ決まり、今でも私のお気に入りの1枚です。
「チャレンジの痕跡」2020第1戦 2位
2019シーズンに続き、2020も初戦から入賞! しかも2位! と幸先のよいシーズンでした。縁石に刻まれたブラックマークを見せたくて、ハイアングルで撮れる場所を探しまわって撮影しました。縦位置の構図にきれいに収めることができたこの作品も、お気に入りのひとつになっています。
「フォーミュラドライバー」2020第3戦 3位
こんな写真を撮ってみたいとて憧れていたフォーミュラのドアップ構図です。画面いっぱいにドライバーとむき出しのタイヤを入れつつ、逆光気味の光で撮れる位置と時間を考えて撮った作品です。このころから、太陽位置図と航空写真を見ながら「撮る絵柄のシミュレーション」をするのが撮影前のルーティーンになりました。
「三つ巴」2020第5戦 5位
序盤でのST-Zクラス3台による三つ巴バトルを収めた作品です。複数台がきれいにフレームインするチャンスはなかなか出会えないので、この絵が撮れた時は興奮しました。また、この作品はWeb流し撮りGPのサムネイル画像に選んでいただいたので、獲得した順位以上に誇らしかったです。
「ねじ伏せろ!」2020第6戦 2位
SUPER GTの花である火花を題材にしました。「タイトルどおりGTマシンが持つ超絶パワーの荒々しさを感じます」と狙い通りの講評をもらえたのが嬉しかったです。でも、どうしても優勝までは手が届かず、2020シリーズ順位も2位と悔しい結果。そして「レース写真の魅力とは何か?」を考え直すきっかけとなりました。
「トップランナー」2021第3戦 6位
サーキット撮影の背景処理は黒っぽくなりがちなので、色で魅せる絵にしようと考え、朝日で輝くグリーンにオレンジのマシンが収まるタイミングを調整しながら撮影しました。背景処理は写真の基本ですが、その大切さを改めて気付かされた作品です。
「Lap leader」2021第7戦 5位
こちらは水煙で背景処理した作品。決勝の直前から雨が降り出したので、水煙を狙って撮影ポイントを移動しました。水煙が舞い上がる適度な雨量に、後続車が整列した瞬間、どちらも条件が整わないと撮れない絵なので、奇跡的な1枚になりました。
「金色に染まる時」2021ドライバー特別賞 中嶋一貴受賞
2021シーズンでは、思うような成績が残せず、気持ちがへこみましたが、最後の「中嶋一貴賞」をいただいて、すべてチャラになりました! 写真を趣味にされている中嶋さんの、カメラマン目線での講評には感激してしまいました。副賞のサイン入りプリントは、我が家の玄関に飾って、毎日の活力になっています。改めまして、中嶋一貴さんありがとうございました!
「Winning Run」2022第1戦 1位
念願の「流し撮りGP 初優勝」となった作品です。コースからの撮影距離が近いダンロップコーナーで、さらに観客席近くへマシンを寄せて来てくれた野尻選手をファインダーに捉えたときの高揚感は今でも忘れられません。小林先生から「勝者を迎えた瞬間を記憶にも記録にもしっかりと残す1枚」と講評いただき、ずっと考えていた「レース写真の魅力とは何か?」の一つの答えだと感じました。わたしの歴代最高傑作です。
「あと1時間!」2022第3戦 1位
走るチームだけでなく、撮るほうも耐久の24時間レース。22時間を過ぎ体力も写欲も底をついたので、あとはゆっくり観戦しようとスタンド席に移動を開始しましたが、「この時間帯の雰囲気を撮っておかないと」と思い直したおかげで撮ることができた作品です。タイトルを付けたときには、エントラントの気持ちを表現したつもりでしたが、いま振り返ると、24時間観て撮影してきた自分の気持ちも入っていたかもしれません。
「凱旋」2022第6戦 4位
車内に西日が射し込む瞬間を狙って、トップチェッカー直後の平川選手の表情をきれいに捉えることができました。プレビューで確認したときは思わず「ヨシ!」と声が出てしまいました。シリーズを折り返して後半戦唯一の入賞作品でしたが、チャンピオン争いに踏みとどまることができた貴重な1枚となりました。
チャンピオンインタビュー Q&A
Q. 流し撮り歴を教えてください。
細野 1990年代にはグループA、グループCやF3000を観戦していました。20年ほどレース観戦から遠ざかっていましたが、2015年からサーキット通いを再開し、スーパーGT、スーパーフォーミュラ、WEC、スーパー耐久など撮っています。
Q. レース撮影以外も含めた写真歴は?
細野 高校の写真部で本格的に写真を始め、モノクロフィルムの現像とプリントをやっていました。撮影旅行や作品をパネルにして文化祭で展示するなど、写真を楽しく学んだ時期でした。高校を卒業した後は、旅行やレース観戦で撮影を楽しむくらいで、写真はほどほどに楽しんでいました。
9年前に子どものスポーツクラブ活動を撮影するためにデジタル一眼レフを購入して写真を再開。子どもたちの活躍をスライドショーに編集して皆さんに観てもらうなど、銀塩写真時代とは違ったデジタルならではの鑑賞方法で楽しんでいました。
そして子どもが進学したのを機に、レース観戦とサーキット撮影を再開。流し撮りGPへの投稿のほか、毎年フォトブックを作成して写真を楽しんでいます。
Q. 写真とレース以外のご趣味や楽しみにされていることは?
細野 最近は、各地のサーキットに行った後のお楽しみとして、地元の美味しいものを食べたり、お土産を買いに行ったりしています。先日は、お目当ての定食屋さんが休みで、飛び込みで入ったお隣のお好み焼き屋さんが美味しかったなど、新たな発見も楽しんでいます。(談)
流し撮りGPの審査委員長は、写真家の小林稔さん (日本レース写真家協会 [JRPA] 会長)。流し撮り作品の迫力や撮影技術など、写真の総合力を評価・審査します。
※「流し撮りGP2023」は、2023年4月より応募受付を開始する予定です。