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存在を消して“ありのまま”の鳥たちに迫った 菅原貴徳写真集『木々と見る夢』

菅原貴徳さんの写真集『木々と見る夢』が発売された。

菅原貴徳写真集『木々と見る夢』

■収録作品ギャラリー (タップ/クリックで拡大します)

 

菅原さんは小学生のとき、カワセミを見て野鳥に強く引かれた。彼らのありのままの姿を見たいから、「彼らに無視される存在になる」ことが望みと話す。

世界には1万種類もの鳥がいて、菅原さんは彼らに会うため国内外を旅している。ポリネシア、ニュージーランド、ペルー、ノルウェーなど移動は渡り鳥より広範囲だ。歩行が不得手なニシツノメドリが生真面目に足を上げて歩く姿や、ゴシキヒワが蜂とにらめっこをするシーンなどは、菅原さんの存在が無視されているからこそ目撃できたシーンなのかと思う。

アオミミハチドリは全身が小さな扇形の紋様に覆われ、実に美しい。全長8cmほどのこの鳥を、300mmレンズに2倍のテレコンバーターを付けた「OM-D E-M1X」で、ディテールまで精緻に捉えている。

けれども何点か、レンズのほうをばっちり向いているカットがある。一緒にスコールに打たれたクロハラアジサシや、好奇心の強いクビワアメリカムシクイだ。彼らには菅原さんが木に見えていたのかもしれない。

巻末に記載された鳥のワンポイント解説が、写真の見方をより深めてくれる。

菅原貴徳『木々と見る夢』

体裁 195×220mm・96ページ
価格 2,420円(税込)
発売日 2022年11月11日
発行 青菁社

 

菅原貴徳 (Takanori Sugawara)

1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学と交換留学先のノルウェー北極圏で海洋学、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学び、2017年より写真家に。鳥たちの暮らしを追って、国内外を旅することをライフワークとする。図鑑や雑誌などへの写真提供のほか、野鳥撮影テクニック、啓蒙関連の執筆や講演会も多数。日本自然科学写真協会会員。
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〈文〉市井康延