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“生きているところを撮ろうと思った” 信州の夏を追いかけた市橋織江写真集『サマー アフター サマー』

市橋織江さんの写真集『サマー アフター サマー』が発売された。

市橋織江写真集『サマー アフター サマー』

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長野県の中部に位置する松本地域を紹介するフリーペーパーの制作が始まりだった。何の制約もなく、自由に見たまま感じたままの写真を撮ってほしいと依頼された。市橋さんは普段、中判カメラをメインに使うが、存分に町を歩いて撮ろうと考えたので、軽くて小さい35mm判一眼レフを選んだ。最初は「ニコン EM」で、途中、故障したので「ニコン FG」に変えた。フィルムはネガカラーの「ポートラ 400」だ。

町外れで車を降り、半日歩き回り、車で迎えに来てもらい帰る。そんな撮影を繰り返した。鬱蒼とした森や長い時間を経て朽ちた風景はフォトジェニックで心引かれたが、今回は「生きているところ」を撮ろうと思ったという。もちろん街の中心街というわけではない。この地で過ごす人の日常でありつつ、ここだけの空気感を纏った場所。撮るうちに、周囲の情報をたくさん入れたくなり、レンズを35mmから28mmに替えたそうだ。

写真にはアーティストの外山夏緒さんが絵を重ねた。小さな星がきらめき、鯉が画面から外に泳ぎ出していく。二人とも、この地を歩いていると、浮遊する何かの存在を感じたらしい。タイトルはプリントを焼いているとき、子どものころに感じた想いが蘇り、付けた。「繰り返す夏」といった意味合いだ。

市橋織江写真集『サマー アフター サマー』

体裁 B5判・128ページ
価格 2,200円(税込)
発売日 2023年3月10日
発行 玄光社

 

市橋織江 (Orie Ichihashi)

写真家。1978年生まれ。広告写真、グラフィック、エディトリアルなど多分野での撮影を手掛ける。テレビCMなど シネマトグラファーとしても活動。映画「ホノカアボーイ」「恋は雨上がりのように」、ドラマ「雨の日」「オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ」などで撮影監督を務める。主な写真集に『TOWN』『Gift』『PARIS』『BEAUTIFUL DAYS』『SHIBUYA-KU』などがある。
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〈文〉市井康延