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ダイナミックな写真で世界遺産の本質を伝える写真集『辺境異境の世界遺産 野町和嘉50年の旅』

野町和嘉さんの写真集『辺境異境の世界遺産 野町和嘉 50年の旅』が発売された。

辺境異境の世界遺産 野町和嘉 50年の旅

■収録作品ギャラリー (タップ/クリックで拡大します)

 

1972年、野町さんはサハラ砂漠から世界を巡る取材を始めた。過酷な環境下で生きる人々と信仰をテーマに置いていたが、選んだ地は世界遺産とオーバーラップする。サハラ砂漠の奥地にあるタッシリ・ナジェールへは遺産登録の4年前、1978年に訪ねた。ラクダ5頭のキャラバンで1か月ほど砂漠を旅した。

本書はそうしたかつての写真とともに、2016年から2020年までキヤノン世界遺産カレンダーの仕事で撮影したものを加えて編集。観光資源化された場所は避け、「撮影時に感じた強烈な手応えが伝わる」風景を選んだという。

野町さんの写真の魅力は事前のリサーチと、現地で時間をかけて取材を行なうことで、被写体に肉薄していることだ。その情報は文章で添えられ、写真の見方に新たな視座を与えてくれる。

デンマーク・イルサリットは北半球で最も多くの氷山を生む場所で、タイタニック号を沈めたそれもここから流れたものだそうだ。表面的な見どころを教える観光ガイドブックとは全く違い、世界遺産本来の意味、価値が伝わってくる一冊だ。

辺境異境の世界遺産 野町和嘉 50年の旅

体裁 B5判変型・176ページ
価格 2,970円(税込)
発売日 2023年7月4日
発行 クレヴィス

 

野町和嘉

野町和嘉 (Kazuyoshi Nomachi)

1946年、高知県生まれ。杵島隆氏に師事した後、1971年にフリーの写真家となる。1972年のサハラ砂漠への旅をきっかけとして、ナイル川、エチオピアなど、アフリカを広く取材する。1980年代後半からは、過酷な風土を生き抜く人々の営みと信仰をテーマとして舞台を中近東、アジアに移し、長期の取材を続ける。2000年代以降は、アンデス、インド等を中心に取材。『サハラ』『ナイル』『メッカ巡礼』『チベット』など多くの写真集が国際共同出版される。東京、ローマ、ミラノ、台北ほかで『聖地巡礼』展を開催。土門拳賞、芸術選奨文部大臣新人賞などを受賞。2009年紫綬褒章受章。前・日本写真家協会会長。
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〈文〉市井康延