ニュース

カメラから人工衛星まで! キヤノンのものづくりが見渡せる「Canon EXPO 2023」へ行ってきた

キヤノンは、製品やサービス、それを支える技術を紹介する展示会「Canon EXPO 2023」を2023年10月18日〜20日の3日間、パシフィコ横浜ノースで開催した。パシフィコ横浜ノースは「CP+」の会場となっているパシフィコ横浜に隣接しているが、これまで訪れる機会がなかったので、今回初めて足を踏み入れた。

Canon EXPO 2023

 

8年ぶり5回目の開催となる「Canon EXPO 2023」では「Future Focused. Always. ~未来の可能性を、ひろげ続けよう~」をスローガンに掲げて、キヤノンの現在と未来が余すことなく紹介された。展示ゾーンは「コアコンピタンスの丘」(製品展示)、「ソリューションの広場」(ユースシーン展示)、「ホリスティックの森」(技術展示)、「シナジーの泉」(新領域展示) と名付けられていた。

Canon EXPO 2023

 

「プリンティング」「イメージング」「メディカル」「インダストリアル」の4つの産業別グループで、製品展示をはじめ具体的な利活用を紹介するユースシーン展示や、開発環境を紹介する技術を展示。さらに宇宙や先進医療の領域など、産業別グループの枠を超えた新領域の展示も行なわれていた。「イメージング」分野に関連する見どころを紹介しよう。

Canon EXPO 2023

多彩な映像機器を展示

入り口を入ると、一段高くなっている「コアコンピタンスの丘」から会場を見渡すことができる。その右側には現行レンズが展示され、大きなジオラマも用意されていた。

Canon EXPO 2023

 

放送用のレンズやシネマ用レンズ、リモートカメラシステムなど、普段あまりみることのないレンズも展示されていた。10月27日発売の超広角ズームレンズ「RF10-20mm F4 L IS STM」もあった。

Canon EXPO 2023

Canon EXPO 2023

 

実際にカメラを手にして撮影体験ができるジオラマコーナー。動物の瞳AFや高速連写を試すことができた。

Canon EXPO 2023

Canon EXPO 2023
CAPAの菅原編集長も体験。
Canon EXPO 2023
Vlogカメラ「PowerShot V10」もあった。

 

ジオラマの先には、実際の利用シーンを模したコーナーが続く。シネマEOSシステムやリモートカメラシステム、ドローンに装着したカメラなどが、撮影映像とともに展示されていた。

Canon EXPO 2023

Canon EXPO 2023

 

200種類を超えるというネットワークカメラ。「ME20F-SH」は、ISO400万相当で撮影が可能な超高感度カメラ。EFレンズを装着できる。

Canon EXPO 2023

 

CMOSセンサーとは構造の異なる、新開発のSPADセンサーを搭載した超高感度ネットワークカメラ「MS-500」。約320万画素の1.0型SPADセンサーは世界最高画素を実現したもの。フルHDでの撮影が可能だ。

Canon EXPO 2023
※映像撮影用のSPADセンサーにおいて。2023年4月2日現在、キヤノン調べ。

 

「MS-500」は、肉眼では確認できないほどの暗さでの撮影が可能。壁の向こう側にある模型が、明るさを変えても同じ色で見えることをモニターで確認できた。

Canon EXPO 2023

3D画像の生成技術やフェイク画像判別システムも開発中

撮像と位相差AFの機能を兼ね備えた「デュアルピクセルCMOSセンサー」の特性を利用して3D画像を作り出す技術のデモが行われていた。開発中の技術だが、撮影された範囲なら画像を動かしたり拡大することができる。

Canon EXPO 2023

Canon EXPO 2023

 

報道向けに、画像がフェイクでないことを保証するシステムも開発中とのこと。画像に埋め込まれたキーを確認することで、画像の真贋がチェックできるというもの。撮影段階で埋め込まれたキーには編集履歴も記録される。

Canon EXPO 2023

 

マルチカメラリモートシステムのデモ。アプリで最大10台までのカメラを操作でき、AEモードやISO感度、WBなども調整できる。将来的には、ワイヤレスでコントロールできるようにするそうだ。

Canon EXPO 2023

レンズの性能を支える技術も展示

技術展示をしている「ホリスティックの森」の一角では、白レンズの遮熱塗料が紹介されていた。高温になると部材の膨張が起こり、熱くなっていない部分と大きさが変わってくるため画質にも影響する。それを防止するのが遮熱塗料。デモでは、触ってわかるくらい温度が下がっていた。また、その隣ではプリンターやコピー機で熱や静電気を制御する技術のデモも行なわれていた。

Canon EXPO 2023

 

SWCコーティングを紹介するコーナー。ナノサイズのくさび状の構造物をレンズ表面に無数に並べ、光の反射を抑制する反射防止技術だ。10万倍の模型を使って、わかりやすく解説していた。

Canon EXPO 2023

 

光の回折現象を利用して収差を補正し、レンズの小型化を可能にしたDOレンズ (積層型回折光学素子レンズ) も紹介されていた。レンズ表面に同心円状の溝をつくり、1枚のレンズで蛍石レンズと非球面レンズの特性を同時に実現している。

Canon EXPO 2023
「EF400mm F4 DO IS II USM」のカットモデル。

 

コンパクトな超望遠レンズ「RF600mm F11 IS STM」「RF800mm F11 IS STM」は製品名に「DO」が入っていないが、DOレンズが採用されている。

Canon EXPO 2023

宇宙や農業分野でも活躍しているキヤノンの技術

人工衛星に搭載されている観測装置用ミラーや半導体露光装置のモックアップなども展示されていた。普段見る機会のないものだけに、その大きさに驚かされる。

Canon EXPO 2023

Canon EXPO 2023

 

キヤノンのグループ会社では、人工衛星の開発・生産を行なっている。部品から自社で開発・製造しており、すでに2基が打ち上げられている。

Canon EXPO 2023

 

実際に打ち上げられている超小型人工衛星「CE-SAT-I」と「CE-SAT-IIB」のエンジニアリングモデルが展示されていた。

Canon EXPO 2023

 

「CE-SAT-I」には口径400mmの望遠鏡が、「CE-SAT-IIB」には口径200mmと87mmの望遠鏡が搭載されている。望遠鏡はレフレックスタイプ (反射式) で全長を短くしてあり、400mmにはフルサイズ一眼レフカメラ「EOS 5D Mark III」が、200mmにはキヤノン製CMOSセンサーを使った超高感度カメラが、87mmにはAPS-Cミラーレスカメラ「EOS M100」が装着されている。「CE-SAT-I」は地上500kmの軌道上から約5×3kmの撮影が可能で、自動車が大型車か小型車かの車種を認識できる解像度があるという。超高感度カメラは月明かり程度の光源しかない状況でも撮影可能で、さまざまな画像データを地球に送信している。次の衛星の打ち上げも計画されているとのことだ。

Canon EXPO 2023

Canon EXPO 2023

 

こちらは、ネットワークカメラを利用して、工場での検品やメーターの読み取りなどができるデモ。目的の部分にズーミングして読み取ることができる。人間が目視で行なっていた作業を正確にこなしていく。

Canon EXPO 2023

 

農業分野での活用例として、稲やイチゴの生育状況をモニタリングするシステムのデモも行なわれていた。稲は、カメラで俯瞰撮影して生育状況を判断していく。これまで経験に基づいて判断されていたものを数値化することができるようになる。今後の実用化が期待されている。

Canon EXPO 2023

 

イチゴのモニタリングはすでに実用化され、収穫や出荷を効率よく行なうことができるようになったという。

Canon EXPO 2023

 

「Canon EXPO 2023」の会場内にはいくつものネットワークカメラが設置されていて、会場の混雑状況がリアルタイムでわかるようになっていた。混雑しているブースに説明員を増員したり、時間帯による変化を見るなど、キヤノンの技術が実際に活用されていた。

Canon EXPO 2023

 

今回は映像に関係の深い「イメージング」の分野に絞って取り上げたが、「プリンティング」「メディカル」「インダストリアル」の各分野でも、キヤノンは新たな技術と製品の開発に取り組んでいる。完成された製品やサービスだけでなく、開発途中のものやコア技術、デバイスなど、キヤノンの今と未来を俯瞰できるのが「Canon EXPO」だ。宇宙開発や農業での活躍は初めて見ることができたし、開発途中のさまざまな技術も興味深かった。次回、5年後にはどんなものを見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。

Canon EXPO 2023

Canon EXPO 2023