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美しさの中に感じる儚さが気持ちを静かに震わせる 南佐和子写真集『Obscure 風の記憶』

南佐和子さんの写真集『Obscure 風の記憶』が発売された。

南佐和子写真集『Obscure 風の記憶』

■収録作品ギャラリー (タップ/クリックで拡大します)

 

東京に住む南さんは、年間200日ほど北海道に滞在して撮影を続けてきた。その前はアイスランドに通っていたというから、北の光景に魅せられているのだろう。

本書も冬の風景が多く出てくる。湖面が凍結してできる霜花=フロストフラワーや、降った雨が木の枝で凍る雨氷、凍った湖面に気泡が閉じ込められてできるアイスバブルなど、そこにはダイナミックな自然の中で生まれる繊細な美しさがある。写真集には落ち着いた風合いの紙を選んだことで、1点1点の写真とその色合いがより味わい深く目に届く。

タイトルの「Obscure」は「あいまいさ」を意味する。自然が織り成す風景は常に変化を続け、美しさの中には曖昧さが潜む。そして、そこにこそ大切な何かを教えてくれる核心があると南さんは言う。満開の桜や晴れた日の青空を捉えた1枚であっても、常に寂寥感や儚さが感じられる。それが南さんの写真に深みと奥行きを与え、心地よい余韻となって気持ちを静かに震わせる。

南 佐和子『Obscure 風の記憶』

体裁 220×240mm・112ページ
価格 4,180円(税込)
発売日 2024年1月19日
発行 日本写真企画

 

南 佐和子 (Sawako Minami)

和歌山県生まれ、東京都在住。海外ではアイスランドやフランスほか、国内では北海道東部を中心に、自然の織りなすフォルムを撮り続けている。カメラ機材メーカーの広告、キャンプ場WEBサイトの撮影等でも活躍中。写真集に『カメラと旅するアイスランド』(風景写真出版)。日本写真家協会正会員。
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〈文〉市井康延