早すぎた天才が遺した“奇跡の乾板”に写真の力を感じずにはいられない 横内勝司写真展「時を超えて」

横内勝司写真展「時を超えて」が、2021年11月23日から開催される。

横内勝司写真展「時を超えて」
© Katsuji Yokouchi

■展示作品ギャラリー

 

約90年前、農業の傍ら独学で写真を学び、信州の山岳風景や穏やかな戦前の日常を写真に収めた1人の若者がいた。彼の名は横内勝司。33歳の若さでこの世を去った無名の写真家である。

写真家の石田道行さんは、横内家に眠り続けた“奇跡の乾板群”と出会い、修復作業を含む作品制作に取り組んだ。そして、氏の没後80年を経た2015年に初の個展を開催。松本から全国各地を巡回して多くの反響を呼び、今回は京都展が実現した。

「横内勝司を伝えることは今を生きる僕に与えられた役割なのかもしれない」と石田さんは語る。時を超えて人々を魅了し、現代社会へのメッセージとして広がりを見せていく作品群。写真の力を思わずにはいられない。

横内勝司写真展「時を超えて」京都展

会期 2021年11月23日 (火・祝) 〜28日 (日)
会場 京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク
住所 京都市東山区堀池町374-2
時間 11:00〜18:00
休館日 会期中無休
入場料 無料
問い合わせ 京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク(TEL 080-5988-7720)

 

 

横内勝司 (Katsuji Yokouchi)

1902年 (明治35年) 〜1936年 (昭和11年)。信州・松本の裕福な農家に生まれ、まだ一般に普及していなかったカメラを手に入れた横内は、農作業の傍ら独学で写真撮影の技術を学び、自宅周辺の日常や山岳風景を撮り始める。写真がまだ晴れの日の記念でしかなかった昭和初期、ガラス乾板と暗箱式カメラでのスナップ撮影という未知の分野にチャレンジし、文字とイラストによるものが大半だった広告の分野でも将来の写真表現の可能性を見据えていたというが、彼自身の死によりそれらが結実することはなかった。

 

〈文〉鬼沢幸江