続々と登場する最新テクノロジー満載のデジタルカメラ。しかーし、ここに至るまでには名機と呼ばれる様々なカメラがあったのです。クラシックなボディや独特の操作に憧れるフィルム派もお見逃しなく!!
ドイツ製カメラの長所を取り入れたニコン初の35ミリ判オリジナルカメラ(since 1948)
記念すべき日本光学製のカメラ第1号は、1947年の10月に発表され、翌1948年3月に発売された。開発時には「ニコレット」の仮称で呼ばれていたが、それでは弱い印象があるというので、日本光学の略称である「ニッコー(Nikko)」をベースとして語尾に「ン(n)」を付けて「ニコン」と命名され、これが今日まで引き継がれている。なお「I型」というのは、後世別のモデルと区別するためのもので、当時は単純に「ニコン」あるいは「ニコンカメラ」と呼ばれていた。
外観デザインとダブルバヨネットのレンズマウント、小ギアによるフォーカシング、そして裏蓋着脱式のフィルム装填は、ツァイス・イコンのコンタックスの流れを汲むものだが、内部機構の大部分はライカを踏襲している。フォーカルプレーンシャッターはライカタイプの横走りドラム型のものであり、連動距離計も撮影レンズの前後の動きをコロでひろってミラーを回転させる、ライカのメカをお手本としたものだ。ボディはダイキャストではなく、砂型鋳物を用いた。当時のダイキャスト材料の品質が十分でなかったため、やむを得ず砂型鋳物に後加工を加えて使ったとのことだ。この鋳物ボディはS型まで続いている。
GHQの指導で輸出と駐留軍向けを優先し、国内市場にはほとんど出回らなかった。その輸出もニホン判の自動裁断機問題で米国向けが困難になったため香港や南米、東南アジア、カナダなどがメインであったようだ。
ニコンI の特徴
ニコンIは、ライカとコンタックスの特徴を設計に取り入れている。まず、バルナックライカの弱点であったフィルム装填のやりにくさや二眼式の連動距離計の不便さは解消されている。一方、コンタックスの複雑なメカに起因する扱いづらさや故障が多い点も回避できている。いわば「いいとこ取り」のメカとして完成させたのである。
高速シャッターと低速シャッターの設定
高速のダイヤルはバルナックライカと同じく先幕のドラム軸に直結しており、シャッター作動時に回転する。速度の設定はダイヤルを持ち上げて行う。低速ダイヤルはライカと異なり高速ダイヤルと同軸になっている。
距離計窓とファインダー窓
ファインダーは逆ガリレオ式でブライトフレームはない。連動距離計はファインダーの視野の中に距離計像を導く一眼式なので、バルナックライカのようにピント合わせとフレーミングで覗き窓を変える必要はない。
フォーカシングギア
ピント合わせは、コンタックスと同様にギアを回転して行う。ギアは距離計窓の外側に配置されているのでコンタックスのように距離計窓を指でふさいでしまう心配はない。
フィルム巻き上げノブとコマ数表示板
フィルム巻き上げは、ノブを時計回りに回転させて行う。コマ数表示はノブと同軸にあるが、フィルム装填と空送りの後、スタート位置に手動で合わせる必要がある。
レンズの着脱と無限遠止め
標準レンズ用の内バヨネットはヘリコイド付きなので、無限遠に固定した状態で着脱する。無限遠のロックはマウント部の斜め上にあるピンか、ピント合わせギア近くのレバーで解除する。弓形の板バネは内バヨネットの着脱ロック。
フィルムの巻き戻しと取り出し
シャッターボタンの前方にあるARレバーをR側に倒すとスプロケットがフリーになるので、巻き戻しノブを回転してフィルムを巻き戻す。フィルムの取り出しは底部の2個のキーを回転し、裏蓋を取り外して行う。
画面の横幅を伸ばしたニコンIの改良版
ニコン M
画面の横幅を32㍉としたニホン判の問題の対策として、とりあえず応急処置を施した機種がニコンMで、1949年の10月に発売された。7枚歯のスプロケットを8枚歯のものに変えてライカ判と同じパーフォレーション8個分のフィルム送りとし、画面枠を横に広げたのだが、内部機構の関係で36㍉までは到達せず、 34×24㍉となった。これは次のニコンSまで続く。
シリアル番号の話
ニコンMのボディにはI型との識別のためにシリアル番号の頭に”M”の文字を刻印している。当時のニコンのシリアル番号は最初の3桁は609となるはずなのだが、ごく少数のM型では906が使われたものが確認されている。彫刻のためのテンプレートを、ミスで上下を逆にセットしたものと推測されている。