ミラーレス機の隆盛が感じられる今日この頃だが、主流は依然として一眼レフ機である。カメラは距離計運動機から一眼レフへ。そしてTTL測光から露出の自動化、各部の電子制御化と進化してきたのだが、キヤノン一眼レフには、そこにマウントの進化が関係してくる。RからFL、FD、ニューFDと時代の流れを追いながら、懐かしの名機に注目してみよう。
最初の一眼レフは、工夫された機構を満載して登場!(since1959)
クイックリターン式ミラー機構や自動絞り機構の基本技術が誕生すると、小型システムカメラの主流は、レンズの選択に制約を受けない一眼レフへと移行していった。距離計連動式システムカメラで多くの斬新なモデルを生んできたキヤノンも、次世代を睨んで一眼レフカメラの開発を進め、1959年5月、処女作「フレックス」を発売した。レンズ着脱時に生じるマウント部の摩耗がないようレンズ外周のロックリングでボディマウントの外爪を締め付ける、ブリーチロック式のスピゴットマウントを採用し、スーパーキヤノマチックと命名された凝ったメカニズムの完全自動絞り機構や、距離計連動機でも積極的に採用していた底部トリガー式巻き上げ機構など、キヤノンらしい斬新なメカニズムを持つカメラだった。同時発売のレンズシステムは少なかったが、交換式ファインダーや外付け式ながらセレン光電池式露出計をアクセサリー群にラインアップ。次の時代を見たシステムとして期待された。
翌60年9月には、一眼レフとしては初となる最高速1/2000秒の高速シャッターを搭載した上位機種「フレックスR2000」を発売。基本性能はフレックスと同じだったが、時代の魁となる新機能をいち早く搭載するキヤノンらしいモデルだった。当時キヤノンの主役は距離計連動式だったが、充実していくレンズシステムとともに、次世代へのバトンを引き継ぐ役割を果たしたR系各モデル。威風堂々とした端正なデザインは、今見ても美しい。
CANON FLEXの特徴
交換式ファインダーやセレン光電池式露出計など、高度な発展性を感じさせる、キヤノン一眼レフシステムとして最初のカメラがFLEXである。
交換可能なファインダーシステム
ファインダーは交換式で、標準のアイレベル式のほか、ウエストレベルファインダーがシステムとして用意されていた。マウント部に設置されたロック解除レバーを作動させ、ファインダーを後方にずらすと外せる。またガイドの溝に合わせるようにスライドさせていくと、定位置で自動的にロックがかかる。しっとりした動きに精度の高さを感じる。
シャッターボタン/ダイヤル
シャッターボタンにはロック機構が設けられており、誤ってシャッターを切ってしまうことがないよう配慮されている。フィルムが高かった時代では大切な機能だった。シャッターダイヤルは大径で操作感も良好。X接点同調速度は1/55秒だった。
感度設定
メーターに連動する感度設定ではなく、あくまでも使用者が覚えておくためのメモリー的な装備。撮りきっていないフィルムを残す場合などに役立った。当時は、裏蓋にフィルム箱の一部を挿入する方式もあった。
底部トリガー式の巻き上げ
距離計連動機の時代からキヤノンが積極的に採用していた底部トリガー式の巻き上げ機構。迅速巻き上げをウリとしていた方式だが、使ってみると確かに迅速に操作できる。しっかり支えられるので長玉使用時には重宝する。
連動式外付け露出計「キヤノンメーター」
ボディ前面に設置された露出計装着用のガイドに装着。カメラのシャッター速度ダイヤルを動かすと、ギアで連結されたメーターが連動し、表示される絞り値を読み取るタイプだ。高低2段切り替え式でE V10~19、4~13の範囲で測光できる。
FLEX R2000の特徴
フレックスをベースに、最高速1/2000秒の高速シャッターを先駆けて採用した上位機種。ファインダースクリーンを全面マット式としたことも特徴の1つだ。
1/2000秒が使える
一眼レフとしていち早く1/2000秒の高速シャッターを採用。フィルム感度が低く、実際に役立つ場面は少なかったかもしれないが、夢にあふれる性能だった。
ファインダーを固定式にして価格を抑えたキヤノンフレックスの普及モデル
キヤノンFLEX RP
キヤノンフレックスRPのコンセプトは、59年に発売されて大きなヒット作となった距離計連動機「キヤノン P」同様、高級機をより身近にすることだった。発売は上位機種のフレックスRPと同じ60年9月。フレックスをベースに、ボディの上部カバーとペンタカバー部を一体構造としたファインダー固定式に変更し、セルフタイマーを、フレックスのシャレたデザインのものから一般的なレバー式に変更することでコストダウンしたモデル。基本性能はフレックスと同じで価格は約20%も安かった。