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新世代の望遠ズーム「EF70-200mm F4L IS II USM」で陸上選手たちの “挑戦” に迫った

「第102回 日本陸上競技選手権大会」を撮影するフリーランスフォトグラファー・奥井隆史さんの現場に直撃! 「第18回アジア競技大会・2018ジャカルタ」の日本代表選考も兼ねた同大会の撮影レンズとして、キヤノンの新世代望遠ズーム「EF70-200mm F4L IS II USM」をラインナップに加えた奥井さん。このレンズで、どんな一瞬を捉えるのだろう?

2018.6.23 モノクロの陰影で浮き彫りにした、スタートの緊迫感と強靭な肉体美

(C)奥井隆史
©奥井隆史
EOS-1D X Mark IIをカスタム撮影モードC2(モノクロに設定)に切り替え、選手を縦位置でフレーミング。自らもフライングしないように注意を払いつつ、スタートの瞬間を写し止めた。カメラマンがひしめくエリアから狙ったが、小型軽量なEF70-200mm F4L IS II USMはとても扱いやすく、シャッターチャンスを逃さなかった。ボディとの重量バランスも良く、さすがLレンズだけに階調描写も素晴らしい。モノクロモードに設定しているのは、現場でよりイメージしやすくするためだ。
キヤノン EOS-1D X Mark II EF70-200mm F4L IS II USM 絞りF4 1/1600秒 ISO8000 WB:太陽光 (男子400メートル)

 

自分ならではの感性を生かし、記憶に残る報道写真を!

「新しいEF70-200mm F4L IS II USMはAFの敏捷さが一段とアップしていて、正直びっくりしました!」。開口一番、こう表情を輝かせたのは奥井隆史さん。とりわけ陸上競技撮影においては、実績・実力ともに日本を代表する写真家といって差し支えない。日本陸上選手権は1996年から連続して撮影。近年は公式記録も担当している。

今大会は「割と自分で好きなように撮れる」状況なので、大口径Lズーム主体ではなく、EF35mm F1.4L II USMと新製品のEF70-200mm F4L IS II USM、それにEF400mm F2.8L IS II USMの3本を主軸として臨んでいる。利便性の高い大口径広角ズームや標準ズームはあえて使わず、プレスルームに置いたまま。スポーツ報道撮影とはいえ、“攻め” のレンズラインアップを揃えた。

「競技は3日間、午前から、日によっては夜まであります。集中力維持のため、体力消耗はなるべく抑えたい。その意味で、軽量コンパクト、かつ画質性能が大きくアップしたEF70-200mm F4L IS II USMには十分メインとして使えるポテンシャルを感じました。なので、ガチで実戦投入。フリーランスですから、機材にはシビアですよ(笑)」

 


会場の「維新みらいふスタジアム」。奥井さんは大会前日に現場入りして、太陽の位置などを事前に確認して撮影に臨んだ。

 

EF70-200mm F4L IS II USMは動けるサイズに高性能を凝縮した “小さな巨人” だ

EF70-200mm F4L IS II USM

新F4Lズームはオールラウンダーです!

「格段に進化していますね。特に、逆光に強くなっていて驚かされました。また、例えばアスリートが本番前に一人で集中している様子などをポートレート風に狙うとき、IS機能の大幅な性能向上は、感度を下げて少しでも良い画質で撮れるようになるので大歓迎。機動力も備えているし、高画質望遠ズームの “万能選手” だと思います」と奥井さん。

動画で見る! 奥井カメラマンの EF70-200mm F4L IS II USM 使いこなし術

逆光に強くAFの感触もすこぶるイイ


先代よりAFのハンチング(迷い)が明らかに減っているように感じた。撮影画像を拡大してみても、合焦スピードだけでなく、ピント精度も全く文句はない。逆光耐性がかなり向上しているとのことだが、画質面だけでなく、AF性能にも寄与しているのだろう。前モデルから約12年分の進化はやっぱりダテじゃない。

コンパクトで軽いのが助かる


重さは若干増えているが、実際に使ってみた印象では、気にならない。通常、陸上競技大会では並行して複数の競技が実施されるため、競技場内をあちこち歩き回るだけに小型軽量なF4タイプは本当に助かる。

 

奥井カメラマンの撮影スタイル

 

① 奥井カメラマンのカメラ設定はコレだ!

「M-Fn」ボタンで3つのカスタム登録を切り替えながら撮影


露出モードはマニュアルが鉄則。例えば、直射日光が当たっている選手を写し、すぐに競技場の影部分の競技を撮らなければならないケースも多々ある。そこで活用しているのがカスタム撮影モード。C1にISOオートの高汎用性モード、C2がピクチャースタイル「モノクロ」モード、C3を完全手動設定モードとし、その都度切り替える。

親指AFは使わない


親指AFの有効性は承知しているが、サブダイヤルによる測距点選択を迅速に行ないたいため、レリーズボタン半押しAF 作動に設定。同時にAF-ONボタンに「AEロック・AF停止」を割り当て。AIサーボAF中でもワンショット的なAF作動を可能にしている。また、「1点AF」「領域拡大(上下左右と周囲)」「ゾーンAF」を使い分ける。

② 経験が生み出したウエストバッグ活用法

シンクタンクフォトのプロスピードベルトとレンズチェンジャー(着脱式ポーチ)類を活用し、EF35mm F1.4L II USMやEF85mm F1.4L IS USMなどを携行。自分なりにポーチ類をアレンジしている。

ポーチを組み合わせてウエストバッグに!

③ 前を向ければすぐに400mmで撮影できる


スポーツフォトグラファーにとって、なくてはならないEF400mm F2.8L IS II USM。陸上競技の撮影でも使用頻度はきわめて高い。その総合性能には十分に満足している。

④ 色分けされたスケジュール表


やや大きめのIDケースに入れた進行スケジュール表。「撮りたい競技」「依頼仕事で撮影マストな競技」「可能なら撮るもの」と優先順位をつけ、色鉛筆などで色分けしている。

⑤ トレードマークの短パン


よほど寒くない限り、短パンがトレードマーク。背景処理のため、ローポジションで撮るケースが多く、長ズボンだと膝が生地に擦れて気になったり、座りづらいので愛用している。

 

カメラバッグの中を拝見!

陸上日本選手権取材の携行機材

大口径単焦点レンズがメイン。スポーツ撮影の “標準レンズ” ヨンニッパとEF35mm F1.4L II USM、それにEF70-200mm F4L IS II USMの3本を基本セットとし、表現を広げるために超広角ズームとシフトレンズを準備。収納力を稼ぐため、キャリーバッグの中仕切りはすべて外し、それぞれのレンズを柔らかなポーチ類に包んでバッグに収納する。


〈カメラ〉 EOS-1D X Mark II(3台) 〈レンズ〉 EF11-24mm F4L USM / EF70-200mm F4L IS II USM / EF35mm F1.4L II USM / EF85mm F1.4L IS USM / TS-E90mm F2.8L マクロ / EF400mm F2.8L IS II USM / エクステンダー EF1.4×III / エクステンダー EF2×III 〈その他〉 スピードライト 600EX II-RT / CFカード/64GB(3枚) / CFast/64GB(3枚) / ノートPC / キャリーバッグ、バックパック(シンクタンクフォト) / 一脚(ジッツォ) / リモコン撮影システム

レンズに求める性能はすべて人間を捉えるため

奥井さんにインタビューしたのは大会3日目。相当数のカットを撮ったあとのことだ

「逆光に強くなっていますね。厳密な比較ではありませんが、スタジアムの照明をもろに画面内に入れた構図でも、ゴーストやフレアは全く気にならない。逆光耐性が向上しているからなのか、AFの迷いもほとんどなく、気持ちよくスッとピントが選手に合いました」

ここで、レンズに求める資質をたずねてみると、「機動性と描写性の高さ」と即座に答えが返ってきた。一瞬をモノにしなければならないスポーツ写真では、ベストなポジションをどれだけ素早く確保できるか、現場でいかに疲労を最小限に抑えられるかなどが重要なのだ。
「記録性に加え、作品として仕上げるべく、レンズの描写性能にも留意しています」

絵づくりでのこだわりが、光と背景だ。そのため、カメラのカスタマイズやAFの設定に独自の哲学がある。それらは皆、「アスリートという人間を描きたいがため」。当然、勝者がいれば、敗者も生まれる。負けた選手にレンズを向けるのは心苦しいが、結果は事実として撮らなければならない。
「とはいえ、必要以上に迫り、バシャバシャ連写するような強引さは避けたい。そういえば昨夜、負けてしまったある選手から、『今日は撮影ありがとうございました。次は勝利の瞬間を撮ってもらいますから』とメールをもらいました。当たり前ですが、トップ選手もひとりの人間。相手を思いやる気持ちがとても大切なんだと心から感じています」。

奥井さんはこれからも “人間ドラマ” を追い続ける。頼れるEFレンズとEOSシステムとともに。

アスリートたちの一瞬を捉えたレンズ

EF70-200mm F4L IS II USM(別売の三脚座装着時)
EF70-200mm F4L IS II USM
機動力と画質に定評のあるキヤノンの「EF70-200mm F4L IS USM」(2006年11月発売)が、11年以上の時を経てリニューアル。従来の高画質を継承しつつ、EFレンズとして初めてシャッタースピード換算で5.0段分の手ブレ補正を実現するなど、大幅にスペックアップした。
http://cweb.canon.jp/ef/info/ef70-200/index.html

フリーカメラマンの仕事とは!?


陸上専門誌の仕事も多い奥井さん。新聞社の写真記者ほど速報最優先ではないため、JPEGではなくRAW記録。当然、オファーによっては急いでプレスルームから送信しなければならない場合もある。「ほかのカメラマンとは違う写真を!」と肝に銘じている。

プロフィール


フリーランスフォトグラファー 奥井隆史さん
1968年、東京生まれ。スポーツフォトエージェンシー「フォート・キシモト」を経て、96年に独立。陸上競技をメインに、光と影を駆使して人間を描き続けている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツ記者協会各会員。シンクタンクフォトのアンバサダーフォトグラファーも務める。

 

 

第102回 日本陸上競技選手権大会 2018年6月22日~24日
〈協力〉日本陸上競技連盟、東京写真記者協会 〈取材執筆〉金子嘉伸 〈取材撮影〉我妻慶一 〈撮影協力〉高橋 学(AJPS)