距離計運動機から一眼レフへ。そしてTTL測光から露出の自動化、各部の電子制御化と歩んできたカメラの歴史だが、キヤノン一眼レフには、そこにマントの進化が関係してくる。RからFL、FD、ニューFDと時代の流れを追いながら、それぞれの注目機をピックアップしてみよう。
レンズから入った光を測るTTL測光への幕開け(since1966)
1965年4月、キヤノン初のTTL測光方式を採用した一眼レフ「ペリックス」が誕生した。最大の特徴は、半透明処理した20/1000ミリ厚の極薄フィルムをミラー位置に固定化したこと。一瞬の像消失もないレンジファインダー式のメリットを一眼レフ機に採り入れるための工夫である。TTL測光方式は絞り込み測光で、ライバルの多くが平均測光または中央部重点測光であったのに対し、キヤノンは、画面中央約12%の光を捉える部分測光という独自の感度分布を採用。さらに測光素子が焦点面と等価距離に配置される焦点面測光の特性を持っており、精度の高さには定評があった。
66年3月になると、通常ミラーを使用し、一眼レフとしては初めてフィルム簡易装填システムQL(クイックローディング)機構を採用したTTL測光機FT QLを発売し、ラインアップを強化している。FT QLの測光システムは、ペリックスで好評の焦点面測光式部分測光を踏襲するため、コンデンサーレンズを斜め45度にカットし、視野12%相当部をハーフミラー化。入射光をその面で反射させて測光素子に導くという凝ったシステムである。同時にペリックスもマイナーチェンジが施され、QL機構搭載に加え、絞り込みレバーにロック機構を追加。ペリックスQLとして発売された。そのほか、アクセサリーシューに装着し、-3.5EVまで測光できる低照度測光用のキヤノンブースターが、2モデル共通のアクセサリーとしてラインアップされている。
CANON PELLIXQLの特徴
ハーフミラーを用いた固定ミラー式の一眼レフなので、一瞬の像消失時間もミラーショックも皆無である。高い測光精度も大きな魅力だった。
TTL測光とペリクルミラーを採用した先進の機構
キヤノン初のTTL測光機として誕生したペリックスは、ミラーショックや像消失の瞬間を完全にゼロとするため、固定式のハーフミラーを採用したユニークな発想のカメラだ。測光方式も、アームに支えられた画面12%相当部分の面積を持つ受光部が、測光時に焦点面と等価位置に出現し、レンズで絞り込んだ実際の光量を計測する部分測光方式。理想を追求するキヤノンのフィロソフィを感じる先進の機構である。
測光は、絞り込みレバーをレンズ側に押し込むと開始される。絞りまたはシャッター速度を動かして、ファインダー内に表示される定点に合わせると適正となる定点合致式である。
アイピースシャッター開閉レバー
ハーフミラーの特性上、長時間露光やセルフタイマー撮影などでファインダーから目を離すと、接眼部から入る光が写り込むこともあるため、アイピースシャッターを装備していた。
シャッター速度ダイヤル
シャッター速度ダイヤルは、感度設定ダイヤルも兼ねる。感度設定は、ダイヤルを引き上げながら動かし、小窓に表示される感度を選択する方式。シャッターボタン基部には、シャッターボタンの誤作動を防ぐロック機構も装備されている。
CANON FTQLの特徴
可動式ミラー機ながら、ペリックスで好評の焦点面部分測光方式を踏襲するためにユニークな受光経路を開発。後のモデルの基礎を築いたカメラだ。
フィルム装填のミスを防ぐ「クイックローディング」機構
大衆機であるキヤノネット QL用に考案されたフィルム簡易装填システムがQL機構である。フィルムのベロ部を引き、巻き上げ軸下部の赤いマークに合わせた状態で裏蓋を閉め、巻き上げる……これだけで確実なフィルム装填ができるという先進的アイデアだ。
フクロウの目の異名を持つ「キヤノンブースター」
-3.5EVという低照度化でも測光できるFT QLとペリックスQLに共通するアクセサリー。固定式ミラーと可動式ミラーの差を補正する必要があるので、サイドの機種設定ダイヤルでFT系ならF、ペリックス系ならPに切り替えて使用する。
水銀電池2個を電源とするが、うち1個はカメラ内から取り出してセット。アクセリーシューに装着し、カメラのバッテリー室にコードを差し込めば使用可能になる。
シャッター速度ダイヤル/バッテリーチェックレバー
シャッター速度ダイヤルの形状や操作方法はペリックスと共通となっている。巻き戻しクランク基部は、アイピースシャッターがなく、バッテリーチェックレバーのみだ。