距離計運動機から一眼レフへ。そしてTTL測光から露出の自動化、各部の電子制御化と歩んできたカメラの歴史だが、キヤノン一眼レフには、そこにマントの進化が関係してくる。RからFL、FD、ニューFDと時代の流れを追いながら、それぞれの注目機をピックアップしてみよう。
前玉交換式のユニークな構造を持つシリーズ(since1969)
1969年10月、キヤノンはフォーカルプレーン式シャッターを持ちながら、レンズを前玉交換式としたユニークなシステムカメラ「EX EE」を発売した。用意されたレンズシステムは35ミリF3.5、50ミリF1.8、95ミリF3.5で、ネジ込み式の専用EXマウントを採用し、2群3枚構成のレンズ後群系はボディ側に残る方式だ。一般的には、前玉交換式一眼レフといえばレンズシャッター式だが、このカメラはフォーカルプレーンシャッターを採用している。さらに驚くのが、キヤノン初のTTL開放測光、初のEE機能を採用していたこと。測光感度分布特性は中央部重点平均測光で、開放F値の設定は手動式だった。
EX EEは、1972年2月、改良型となるEX AUTOにモデルチェンジされている。主な改良点は、レンズの開放F値が自動設定されるようになったことと、レンズのフォーカスリングにフラッシュオート機構が付いたこと。専用スピードライト「キヤノライトD」をホットシューに取り付け標準レンズで撮影すると、CATシステムが機能し、撮影距離に応じた適正露出が自動セットされる。夜でも簡単に失敗のない写真が撮れる、という謳い文句が記憶に新しい。また、新交換レンズとして、125ミリF3.5も追加されている。
結果的にEXシリーズはこの2モデルだけで終焉となった。システムの全体構想の謎は未だに解けていないが、一眼レフをより身近な存在とするためのカメラとして、開発の目的を達しての勇退だった。
CANON EXの特徴
キヤノン初のTTL開放測光採用のシャッター速度優先EE搭載機。フォーカルプレーンシャッター機ながら前玉交換式という不思議な個性を持つカメラだ。
前玉のみの交換でシステム全体が小型・軽量化
EXシリーズは、カメラボディに、主光学系となる2群3枚の後玉部分を残し、前玉部分だけを交換する前玉交換式システムを採用。絞りや絞り調整リング、フォーカシングユニットもボディ側に残る固定鏡胴内に含まれているので、レンズ毎にヘリコイドや絞りを作る必要もない。1つ1つのシステムが小型化され、同時に大きなコストダウンに成功した新システムだった。なお、前玉用マウントは専用のスクリュー式だ。
当初発売されたレンズは全3本
EX EE発売当初のレンズシステムは、 35ミリ F3.5、50ミリ F1.8、95ミリF3.5の3本だったが、後に125ミリF3.5が追加されている。システムの大きな発展はなかったが、ユニークな考え方である。
EX EE
EEにセットするだけで、シャッター速度優先AEになる
左写真:EX EE、右写真:EX AUTO
シャッター速度優先EE方式なので、シャッター速度は自分で選択する。 絞りは、巻き戻しクランク基部外周の絞りコントロールリングをEEにセット。これでEE撮影準備完了となる。
「EX EE」では手動のF値設定が、「EX AUTO」では自動化
左写真:EX EE、右写真:EX AUTO
EXシリーズ用レンズの開放F値は、F1.8とF3.5の2種類だけ。EX EEは、感度設定の際、どちらかを選ぶ方式だったが、EX AUTOでは識別用のバーを設けて自動セットする方式となった。
EX AUTOの開放F値自動識別は、ネジ込み位置に識別用バーを設置。それを押すか否かで開放F値を判断するシンプル方式だ。
EX AUTO
専用スピードライト使用時に適正露出が得られる「フラッシュオート」撮影機構を搭載
ホットシュー付きに進化したEX AUTOは、同時発売の専用スピードライト「キヤノライトD」をホットシューにセット。フォーカシングリングに新設されたフラッシュオートスイッチをオンにすると、撮影距離に応じた適正露出が自動セットされるCAT(Canon Auto Tuning)システムを採用している。
「EX AUTO」には、電気接点付きのホットシューを装備
左写真:EX EE、右写真:EX AUTO
シンクロ接点の位置は上部から下部へ移動
左写真:EX EE、右写真:EX AUTO
EX AUTO ではホットシューが採用され、同時にソケット位置がエプロン部下方に移動している。コード接続時の取り回しが楽になった。
EX EE/EX AUTO共通
フィルムのセットには「QL」機構を採用
フィルム装填方法は、引き出したフィルムのベロを赤い定点に合わせ、裏蓋を閉じれば完了という、QL機構を採用していた。