機材レポート

【キヤノン歴代カメラ】キヤノン FTb/FTb-N FDレンズとともに登場した、中級機のスタンダード

距離計運動機から一眼レフへ。そしてTTL測光から露出の自動化、各部の電子制御化と歩んできたカメラの歴史だが、キヤノン一眼レフには、そこにマントの進化が関係してくる。RからFL、FD、ニューFDと時代の流れを追いながら、それぞれの注目機をピックアップしてみよう。

 

FDレンズとともに登場した、中級機のスタンダード(since1971)

FTbはフラッグシップ機F-1と同様、1971年の3月に発売された。モデル名からわかるように、絞り込み測光のFTをベースに、TTL開放測光に進化させたのが本機だ。測光素子(CdS)が焦点面と等価距離に置かれ、高精度な測光で知られるぺリックス同様の焦点面測光の特性を備えている。露出モードはマニュアルのみ。メーター表示はFDレンズの開放測光ではいわゆる追針式となり、FLレンズの絞り込み測光では定点合致式となる。例えば、シャッター速度をシャッターダイヤルでセットし、あとはメーターを見ながらレンズの絞りリングで露出コントロールをすれば快適に撮影が行える。

高速シャッターや耐久・堅牢性、システム拡張性などにモノ足りなさは否めないが、コンセプトや基本機能はF-1に準じており、写真愛好家ばかりでなく、プロがF-1の予備機として活用するなど、幅広いユーザー層に支持された。そのような背景もあり、2年後にはマイナーチェンジを経てFTb-Nがリリース。ファインダー内にシャッター速度が表示されるようになったほか、巻き上げレバーの指当てやシンクロ端子カバーの追加、絞り込みレバーの形状 ・材質の変更、シャッターボタンの大型化など、いくつものキメ細かな改良が加えられ、一段と使いやすくなった。

FTb、FTb-N共通の機能として、ぺリックスやFTにも採用されていたQL(Quick Loading)が挙げられる。これは所定位置にフィルム先端を置き、裏蓋を閉めるだけでフィルム装填が安心確実にできるという、キヤノン独自のフィルム簡易装填機構である。

 

CANON FTbの特徴

キヤノンFTをもとにTTL開放測光を可能にしたモデル。プロ機F-1の普及バージョンという位置づけで機能はシンプルだが、メカニカル機として人気を得た。

 

 

測光精度の高い、TTL焦点面開放測光を実現

フラッグシップF-1同様にTTL開放測光方式を導入。これはキヤノンFTの中央部焦点面測光を絞り開放でも使えるようにしたもので、FDや後のニューFDレンズと組合せれば、自動的に正確な開放測光が行えるようになる。TTLメーターのスイッチは軍艦部のフィルム巻き戻しクランクの横。このスイッチを「C」マークに合わせるとバッテリーチェックが可能。なお、FLレンズでは絞り込み測光が行える。

 

FDやニューFDレンズには開放F値をカメラに伝える開放F値設定ピンが備わっており(写真の赤丸部分)、これがカメラ側の開放F値設定レバーとメカニカルに連動する仕組みだ。この仕組みは後のAシリーズにも引き継がれている。

 

キヤノンF-1と共通オプションのスピードライト

F-1、EF、FTbでフラッシュオート撮影を実現できるのが、スピードライト133Dと専用アクセサリー。被写体との撮影距離に合わせて自動調光してくれるというもので、CATまたはCATS(Canon Auto Tuning System)と呼ばれていた。

 

絞り込みレバー/ミラーアップ/セルフタイマー

ボディ前面の絞り込みレバーをレンズ側に回し、ロック設定レバーを「L」の位置にセットすると、絞り込んだ状態で固定できる。絞り込みレバーを押した状態でロック設定レバーを「M」の位置にするとミラーアップが可能。絞り込みレバーはセルフタイマーも兼ねており、反時計回りに回して設定できる。

 

シャッター速度ダイヤル/シャッターボタン安全ロック

軍艦部はオーソドックスなデザイン。シャッター速度の「60」はオレンジ色でX同調速度であることを示している。シャッターボタン同軸のシャッターボタン安全ロックは、バルブ撮影時にシャッターボタンを押したまま「L」位置に回すことで、シャッターを固定(開いたままに)できる。

 

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