距離計運動機から一眼レフへ。そしてTTL測光から露出の自動化、各部の電子制御化と歩んできたカメラの歴史だが、キヤノン一眼レフには、そこにマントの進化が関係してくる。RからFL、FD、ニューFDと時代の流れを追いながら、それぞれの注目機をピックアップしてみよう。
シャッター速度優先によるTTL・AEを初搭載した先進機(since1973)
1973年11月に発売されたキヤノンEFは、キヤノン製一眼レフの歴史において、孤高のモデルといえるカメラだ。その理由はいくつかあるが、第一にいえることは、キヤノン初にして最後となった縦走り金属幕を使用した量産型フォーカルプレーンシャッター「コパルスクエア」を採用したことだ。これに伴う必然か否かは不明だが、巻き上げの感触も、どのキヤノンと比較しても類似性が感じられない。
測光方式はTTL開放測光で、測光素子に新素材SPC(シリコンフォトセル)を用いた中央部重点式平均測光となっている。また、シャッターを切ることで確実に適正露出が約束される利便性を最優先し、自動露出を採用。キヤノンのフィロソフィともいえるシャッター速度優先AEによる撮影をデフォルトとするカメラだった。もちろん、マニュアル露出も可能だが、その場合、開放測光ではなくTTL絞り込み定点合致式測光となる。
シャッターの高速側、1/2~1/1000秒とバルブは機械制御とし、低速側となる1~30秒を電子制御とする、革新的なハイブリッド制御方式を採用したこともEFの大きなチャレンジだった。このハイブリッド式シャッター制御は、さらに磨きをかけ、後のニューF-1にも採用されている。さまざまな意味で、未来へ踏み出す先進的メカニズムが凝縮されたカメラであり、キヤノンのチャレンジスピリットが生み出した、実験的市販モデルだったように思えてならない。
CANON EFの特徴
キヤノン初の縦走りフォーカルプレーンシャッター機で、シャッター速度優先AEでの撮影を前提とするTTL開放測光機。マニュアル時は絞り込み測光となる。
レンズからの光を直接測るTTL測光によるAEを実現
シャッターを押せば、適正露出が約束される自動露出の利便性を具現化するため、TTL開放測光のシャッター速度優先AEをデフォルトとして最優先。マニュアル露出時はTTL絞り込み測光とした大胆な発想で生み出されたF系キヤノン初のAE一眼レフ。斬新なアイデアを凝縮したカメラだ。
撮影の準備
① バッテリーを挿入
② 底面のボタンでバッテリーチェック
電源は1.3VのHD型水銀電池を2個使用する。メインスイッチをオンにし、レンズの絞りをオートにすれば準備完了だ。
③ メインスイッチをONに
④ レンズの絞りをオートにセット
感度設定ダイヤル
フィルム感度はISO12~3200。巻き戻しクランク基部の感度設定ダイヤルを回し、感度の数字を指針に合わせる。
シャッターは機械式と電子式のハイブリッド式
選択可能シャッター速度は、30秒~1/1000秒とバルブ。バルブと1/2~1/1000秒までの高速側は機械式制御で、1~30秒の低速側を電子制御とした先進のハイブリッド式制御を採用している。
縦走り式金属幕使用を使用したコパルスクエアシャッターを採用
コパルスクエアシャッターは、信頼性を誇る量産型のシャッターで、多くのメーカーが採用した汎用性の高いモデルだが、キヤノンではEFが最初で最後の採用機となった。巻き上げ時に感じられる独特の感触は、このシャッターの個性かもしれない。
フラッシュ同調は1/125秒、「CATシステム」にも対応
コパルスクエアシャッターのX接点同調速度は1/125秒以下。対応レンズと専用スピードライトを併用した調光撮影時、絞り値を自動コントロールする、CATシステムと名付けられたキヤノン独自のコントロール方式にも対応している。CAT撮影をする場合は、ファインダー左横のスイッチをフラッシュマークにセットする。
CATシステムで撮影する場合、対応レンズにフラッシュオートリングを組み合わせる。これは、ピントリングの回転角から撮影距離情報を得、信号化してカメラ側に伝達するCATシステム活用の要となるアイテムだ。
露出記憶スイッチ/多重露光ボタン
最新機種のAEロックボタンに相当する露出記憶スイッチは、巻き戻しレバー脇の軍艦部手前側にレイアウトされているが、やや押しづらい位置だ。逆に多重露光ボタンはメインスイッチと同軸上にあり、操作しやすい。
絞り込み/ミラーアップレバー/セルフタイマー
ボディ前面右手側にあるレバーは、右に倒せばセルフタイマーとなり、押し込むと絞り込みレバーとなる。また押し込んだ状態で、レバー下部にある下向きのレバーを1段引いて赤いLマークに合わせると、絞り込みロックとなり、さらにもう一段引いて、黄色いMマークに合わせるとミラーアップになる。