1917年から2017年に至るニコン100年の歴史はカメラだけでは語れない。双眼鏡、顕微鏡、レンズ、測定・検査機器、測量機、半導体露光装置(ステッパー)、その他さまざまな光学製品やその応用技術から成り立っている。また、それは技術者のたゆまぬ研究・開発努力によって構築されてきたことは言うまでもない。ここでは、その長い道のりの第一歩から順を追って見ていく。
高級コンパクトブームの時代に登場した2種類の単焦点ニッコールを搭載したコンパクトカメラ(since1993)
それまでの、プロや高級アマチュアには一眼レフ、一般ユーザーにはコンパクトカメラという図式を脱して、高級な単焦点レンズを備え、一眼レフのサブカメラとして使えるような「高級コンパクトカメラ」というカテゴリーが1990年ごろに登場した。
その代表的な機種になったのが、 ニコン35Tiと28Tiだ。35Tiは35ミリ F2.8、28Tiは28ミリ F2.8の単焦点ニッコールレンズを備え、その名の通りボディの主要部分にチタン材を使用した沈胴式のコンパクトカメラである。
2機種で特徴的なのは、ボディ上面に設けられた大型の指針表示だ。指針といってもメーターではなく、アナログ時計のメカを応用したもので、この指針で被写体距離、撮影コマ数、絞り値、露出補正の表示を行う。オートフォーカスはアクティブ方式。ファインダーは採光式のブライトフレームファインダーだが、採光窓は上面にあり、周囲が暗いときには内蔵のLEDで照明するようになっている。パララックス補正機能も付く。
上部の大面積 アナログ指針表示装置
アナログ時計のメカを用いた指針表示装置。左側の指針は、被写体距離を表示する(AF時は「AF」)。右側はAE時の絞り値表示。中央上の指針は撮影枚数をアナログ表示する。中央下は露出補正。補正値やMF時の距離設定はこの指針を見ながらダイヤル操作で行う。
上面左の操作ボタン類とファインダー採光窓
指針表示の左には3個のボタンがあり、前からAF/MF切り換え及び距離設定ボタン、セルフタイマーボタン、露出補正のボタンである。その左横はファインダーの採光窓で、LEDによる照明も組み込まれている。
ニッコールの名を冠した明るい単焦点レンズ
35Tiは4群6枚の35ミリ F2.8、28Tiは5群7枚の28ミリ F2.8と、いずれも贅沢な構成の単焦点レンズを備えており、両者とも前面にニッコールのレンズの銘が入っている。電動による沈胴式だ。
レトロ感のあるデザインを取り入れたデジタルカメラ
2013 ニコン クールピクス A
デジタルカメラでも高級コンパクトと言えるような機種が存在する。 2013年のクールピクスAは、大型のAPS-Cサイズの撮像素子を採用し、 35ミリ判換算で28ミリ相当の単焦点レンズを備えている。28Tiのデジタル版と言えるだろう。
専用の光学ファインダーと金属製の角形フードを取り付けると、クラシカルな外観に変貌する。