距離計運動機から一眼レフへ。そしてTTL測光から露出の自動化、各部の電子制御化と歩んできたカメラの歴史だが、キヤノン一眼レフには、そこにマウントの進化が関係してくる。RからFL、FD、ニューFDと時代の流れを追いながら、それぞれの注目機をピックアップしてみよう。
5つのAEモードが使える多機能一眼レフ(since1978)
AE-1からスタートした「Aシリーズ」一眼レフの最上位モデルとして発売されたのがA-1だ。AE-1の露出モードがシャッタースピード優先AEとマニュアルだけなのに対し、A-1は、絞り優先AE、さらにプログラムAE、絞り込み実絞りAE、ストロボAEが加えられ、計5つものAEモードを搭載したのが最大の特徴だ。
マルチモードを使いこなすためのAEモードセレクターとATダイヤルによる操作系は秀逸で、慣れればファインダーをのぞいたまま、各種モードの切り換えや絞り値の設定などがスムーズに行える。しかもファインダー内の情報表示には7セグメント赤色LEDを採用。非常に認識しやすいのも特筆すべき点だ。こうした操作性に対するキヤノンのこだわりは、現行EOSに通じるものがある。
また、一眼レフならではの高い拡張性を兼ね備えたことも、多くのカメラファンを魅了した点だ。フォーカシングスクリーンは標準のスプリットマイクロ以外に6種類揃えられ、サービスステーションで交換可能だった。ほかにもワインダーAに加え、高性能なモータードライブMAがラインアップ。さらにストロボAE対応のスピードライトが複数用意されるなど、トータルなオート化が進められている。
当時はまだ、「シャッタースピード優先AEか? 絞り優先AEか?」といった論争も起きていたが、A-1以降、いわゆるマルチモード機がメインの潮流となり、そうした議論もいつしか下火になっていく。“カメラロボット”A-1は、キヤノンのカメラヒストリーだけでなく、カメラ業界全体のトレンドを方向づける1台でもあった。
CANON A-1の特徴
5つのAEモードをフル装備。ダイヤル操作で設定した絞り値などは、ファインダー内に撮影情報がデジタル表示される。本格電子制御の高級一眼レフだった。
主要なAEモードが瞬時に切り換えられる操作系
シャッタースピード優先AE、絞り優先AE、プログラムAEはAEモードセレクターとATダイヤルで選択できる。AEモードセレクターを「Tv」にすればシャッタースピード優先、「Av」にセットすれば絞り優先となり、表示も連動して切り換わる。プログラムAEは、「Tv」の位置でATダイヤルを「P」に設定する。ファインダー内には、モードによる設定値などがデジタル表示される。
写真左から、絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、プログラムAEの状態。この実用的なギミックも当時のカメラファンを唸らせた。
差し指で操作が可能。ATダイヤルガードを上にスライドすれば、ダイヤルの不用意な回転を防げる。
A-1にマッチする専用スピードライト
スピードライト577G/533G/199A/177A/155Aを使えば、A-1のストロボAEモードが利用可能。このモードでは充電が完了すると、シャッタースピードを1/60秒(X接点)、絞りをストロボ側の設定値に自動でセットしてくれる。特に199AはA-1にマッチする。
199Aはガイドナンバー30。背面にはメインスイッチとオートの切り換えスイッチ、それにフィルム感度設定ダイヤルなどが並ぶ。もちろん上方へのバウンスライティングも可能。
感度設定ダイヤル/露出補正ダイヤル
軍艦部左側には、同軸で感度設定(写真左)と露出補正(写真右)を行うダイヤルが設けられている。どちらもロック機構付き。露出補正は1/3刻みで± 2EVまで可能だ。倍数表示で若干わかりづらいが、「1」が補正なしだ。
2種類のセルフタイマー/多重露出レバー
セルフタイマーは2秒と10秒が選べる(写真左)。作動は無音で、赤色のLEDが点滅。レリーズ直前には、点滅が速くなる。多重露出は多重露出レバーを左に押し込み、再度巻き上げるだけ。シャッターチャージのみ行われる。
ファインダー表示スイッチ/バッテリーチェックボタン
被写体に集中したいときなどには、ファインダー内の7セグメントLED表示を消灯することができる。またOFFにしてもエラーマークは表示される。スイッチ中央の丸ボタンでバッテリーチェックが可能だ。
露出記憶スイッチ(上)と露出読み取りスイッチ(下)/絞り込みレバー
露出記憶スイッチは聞き慣れない名称だが、要はAEロックボタン。露出読み取りスイッチは、露出の値をファインダー内に表示させるためのもの。絞り込みレバーを押し込んでロックさせれば、絞り込み実絞りAEが可能になる。
秒5コマの連写が可能になる、高速モータードライブMA
A-1用のモータードライブMAはコンパクトでありながら、H(5コマ/秒)、L(3.5コマ/秒)、S(1コマ)の3段階にコマ速を切り換えられる(バッテリーパックMA使用時)。 電源部は当時、充電式のNi-CdパックMAと単3形電池12本を使用するバッテリーパックMAが用意され、ワンタッチで交換することもできた。
モータードライブMAには、縦位置用シャッターボタンが装備されている。バッテリーパックMAは、L、S時でも瞬時にHに切り換えられるインスタントハイスピードボタンを備えている。