ソニーのスマホ「Xperia」プレミアムラインの新作として「Xperia XZ2 Premium」が登場した。同社では初めてメインカメラに2つのレンズ&センサーを採用し、暗所での撮影性能に徹底してこだわったモデルである。その実写レビューをお伝えしよう。
ソニーモバイルコミュニケーションズ「Xperia XZ2 Premium」
■高感度でも低ノイズでシャープな写り
最近のスマホではデュアルカメラなど複数のカメラを搭載した製品が増えているが、その仕組みは機種によってまちまちだ。例えば「iPhone X」のようにデュアルカメラによって望遠撮影やボケ表現が楽しめる機種がある一方、ファーウェイ「HUAWEI P20 Pro」のように複数のカメラから得たデータを合成することで、高解像や広階調を作り出せる機種もある。
今回取り上げるソニーモバイルコミュニケーションズ「Xperia XZ2 Premium」は、主に高感度画質を高めるためにデュアルカメラを採用している。1つのカメラには19メガピクセルのRGBセンサーを、もう1つのカメラには12メガピクセルのモノクロセンサーをそれぞれ搭載し、その2種類の画像をリアルタイムで合成することで、高感度のカラー画像を生成する仕組みだ。
この「Motion Eye Dual カメラシステム」と命名された独自技術によって、静止画で最高感度ISO51200に、動画で最高感度ISO12800に対応。夕方や夜間、室内といった光量が乏しいシーンで活躍してくれる。
下の写真は、動物園の室内展示を感度ISO12800で撮影したもの。写真では明るく感じるが、実際には動物の姿が判別しにくいほど暗い場所だ。にもかかわらず被写体のディテールまでを明るく、くっきりと描写できている。PCのディスプレイ上で拡大表示にすれば、高感度ノイズはそれなりに見られるものの、小さなプリントやウェブ用途なら実用十分のクオリティといっていい。
<感度ISO12800で撮影>
シャッター速度は1/125秒となり、暗所ながら手ブレや被写体ブレのないシャープな写りが得られた。
次の3枚は、やや明るめの室内での撮影例だ。感度は順にISO3200、ISO1250、ISO640。このくらいの感度では拡大してもノイズはあまり目立たず、高感度による彩度低下や細部のつぶれもほとんど気にならない。いずれも車体の金属感がリアルに再現され、立体的で臨場感のある写真となった。
<感度ISO3200で撮影>
<感度ISO1250で撮影>
<感度ISO640で撮影>
画像融合処理プロセッサーとして新開発の「AUBE(オーブ)」を、イメージセンサーにはメモリー積層型の「Exmor RS」を搭載。センサーサイズは既存モデル「Xperia XZ Premium」と同じく1/2.3型となる。近ごろはセンサーを大型化して暗所撮影性能を高めた他社製品も登場しているが、本モデルの場合は大型化ではなくデュアル化によって高感度化を図ったというわけである。その効果はてきめん。今回の試用では、従来の1/2.3型センサーに比べるとワンランク上の写りを実感できた。
上にあるのが1220万画素のモノクロセンサーで、レンズの開放値はF1.6。下にあるのが1920万画素のカラーセンサーで、レンズの開放値はF1.8となる。
デュアルカメラを生かした撮影機能としては、まもなく行われるソフトウェア・アップデートによって「ボケ」と「モノクロ」撮影に対応する。「ボケ」では背景をぼかして被写体を際立たせることができ、「モノクロ」では階調豊かな白黒写真が撮れる。
動画に関しては、スマホカメラでは初めて「4K HDR撮影」に対応したことが見どころだ。暗部から明部までの幅広い階調を再現することで、白とびや黒つぶれを抑え、より肉眼に近い映像を残せる。
■安定感の高いフルオート撮影性能
続いて屋外での作例を見ていこう。次の5枚は、いずれも晴れた日にフルオートで撮影した屋外スナップだ。感度は最低感度のISO40。クリアで鮮やかな発色と、細部までの高精細な描写を確認できる。
幅広く使える焦点距離
35mm判換算の焦点距離は25mm相当。風景や建物、スナップ撮影用に使いやすい焦点距離といえる。
軽快なレスポンス
撮影レスポンスが軽快なので、ストリートスナップなど瞬間を捉える用途にも役立つだろう。
細部までシャープな質感描写
最大の画像サイズは5056×3792ピクセル。屋根瓦の模様や軒下の網など細部の質感までをシャープに描写できている。
目で見たとおりに撮れる
強い日差しの中での撮影だったが、ハイライトが白とびすることなく、見た目どおりの色と明るさで記録できた。
デジタルズームも実用レベルのクオリティ
デジタルズームで撮影。ズームアップすると画質はやや低下するが、2倍程度までなら実用レベルのクオリティは維持できる。
撮影モードは、13種類のシーンと4種類のコンディションをカメラが自動判断する「プレミアムおまかせオート」のほか、感度やシャッター速度をユーザー設定できる「マニュアルモード」を搭載。ピントのマニュアル設定や、1秒間で最大10コマの連写、18種類のエフェクトなどの機能も備えている。
既存モデルから「先読み撮影」機能を継承。シャッターを押した瞬間と、その直前の画像を最大4枚まで記録できる機能だ。動体撮影に役立つ。
<マニュアルモードで撮影>
マニュアルモードでは、ホワイトバランスと露出補正、感度、シャッター速度、ピントのユーザー設定ができる。RAW記録には非対応で、ファイル形式はJPEGのみとなる。
<プレミアムおまかせオートで撮影>
「プレミアムおまかせオート」を選択した場合、被写体までの距離が近いと、画面上にチューリップのアイコンが表示され、マクロでの撮影が可能になる。
<プレミアムおまかせオートで撮影>
同じく「プレミアムおまかせオート」で撮影。必要に応じて画面上をタップしてピント位置を変更したり、明るさや色合いを調整することも可能だ。
本体サイズは幅80×高さ158×奥行き11.9mmで、重量は約236g。最近のハイスペックなスマホのなかではやや分厚くて重めであり、手に取るとずっしりとした凝縮感と存在感が伝わってくる。携帯性という点では不利だが、撮影時の安定性では適度な重量はむしろ好都合といえる。背面は滑らかな曲面になっており、手になじむフィット感もある。
注意点は、デュアルカメラの位置が背面の中央付近にあること。そのため、撮影時に指でレンズをふさいでしまったり、レンズを触って指紋をつけたりしたことが何度かあった。慣れるまでは気をつけたい部分だ。
ディスプレイは5.8インチの「トリルミナスディスプレイ for mobile」液晶で、画面解像度は4K(3840×2160ドット)に対応。最近流行りのベゼル領域が狭いタイプではなく、持ちやすさを重視したデザインだ。
トータルとしては、シーンや被写体を問わず、常にバランスのいい色と明るさで記録できるオート撮影の安定感の高さに好印象を受けた。特に、光量の乏しい場所でも手持ちでシャープかつ色鮮やかに写せる高感度性能の高さは、現在のスマホのなかでもトップレベルといっていい。「Xperia XZ2 Premium」は、暗所での撮影機会が多い人には、積極的にお勧めできるスマホだ。
〈写真・文〉永山昌克