ルミックスというと、初代G1で“女流一眼”を謳うなど当初は柔らかいイメージで打ち出していたが、近年のGH系、G9PROによって、そのイメージはだいぶプロスペック、スパルタンなものに変わってきた。現在では比較的コンパクトに収めることができるマイクロフォーサーズ機のメリットを生かしつつ、フィールドでハードに使っている人たちも多いのではないだろうか。その延長線上で、新たな、そして大きな選択肢として登場したのが、今回取り上げる同社初のフルサイズミラーレス機「LUMIX S1/S1R」である。
ルミックスは、フラッグシップ機がGHシリーズということもあって動画の印象が強いが、G9PROの登場でスチル、すなわち写真撮影用としてもかなりのレベルに仕上がってきた。新たに登場したS1/S1Rでは、そのスタイリングがさらに本格的な一眼レフに近くなり、プロはもちろん、ハイアマチュアの人たちにも馴染みやすいものとなっている。
ここで気になるのは、今までマイクロフォーサーズを使ってきた人たちが導入する場合、同じルミックスのGシリーズと共存・使い分けができるのかどうか。まずその点について考えてみよう。
SシリーズとGシリーズの共用はできる?
Sシリーズが採用しているLマウントのフランジバック、つまりマウント面と撮像素子面との距離は、実はマイクロフォーサーズと同じ20ミリとなる。となると、余分なスペースがないため、マウントアダプターは非常に作りにくい。なので、そのような製品はなく、両者のスムーズな共用は今のところできない状況となっている。
その逆にマイクロフォーサーズにフルサイズのレンズを付ける……、これはもっと難しいだろう。アダプターにリレー系のレンズをかませればできないことはないが、焦点距離は伸びるし、ボディとの重量バランスからもそこまでの製品はわざわざ作らないと個人的には思う。
したがって、両者は全くの別もの、と考えたほうがいいだろう。S1/S1Rの操作系は、Gシリーズをおおむね引き継いでいるので、その点に関してはGシリーズに慣れている人たちにとって操作しやすいカメラといえる。もちろんメモリーカードはSDカードであればS1/S1Rでも引き続き使うことができる。RAW現像ソフトなどもSILKYPIX Developer Studio 8 SEなので、操作に不安はない。
SシリーズとGシリーズ、共用できるのはSDメモリーカードくらいか。S1/S1RではXQDとSDのデュアルスロットになるので、両スロットを生かす場合はXQDカードも用意したほうがいいだろう。このスロットは、ファームアップでさらに高速な、インターフェイス互換のあるCFexpressに対応することが告知されている。
バッテリーもG9PROなどで使われているものよりもさらに大型化されたので共用は不可。キヤノンEOS1-D X MarkⅡやニコンD5で使われているものよりもさらに大容量の3050mAhとなり、縦位置グリップ使用時にはそれが2個も収納できるようになっている。
S1とS1Rの違い――見た目は同じでも解像感の差は、やはり大きい
S1とS1R、外見自体は、ネームプレート以外同じで、操作系なども全く同じ。バッテリーやバッテリーグリップなどのアクセサリーも同じものとなる。ただし内部は大きく異なり、S1は有効画素数2420万画素、S1Rはその約倍となる4730万画素となる。汎用性の高いS1に対し、超高画素なS1Rといった位置づけとなる。まずここでは実際に撮影した画像でその差を確認してみよう。
(24-105mmF4(24mmで使用) 絞り優先オート F4 1/640秒 +0.3補正 ISO100 AWBで撮影)
<S1で撮影>
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<S1Rで撮影>
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窓上の鎧戸の部分を見比べてみると、S1ではゴワゴワしてしまっているのに対し、S1Rでは横縞となり、しっかりと解像している。ここまで高解像が可能だと、RAWデータでの運用や、さらにはハイレゾモードなどを大いに活用したくなるだろう。ただし、それだけのデータ量を扱う環境を整える必要がある(RAWでもJPEGでもS1Rのデータ量はS1の約2倍ほど)。高速なXQDカードも欲しくなるし、さらに高性能なレンズが必要にもなってくる。
最大伸ばしてA3ノビくらいであればS1Rではなく、242O万画素機のS1で十分だろう。もし、S1Rを導入したいぐらいバリバリ高解像で狙いたいのなら、S PROシリーズのレンズも同時に導入するのが絶対にオススメ。今回、S PRO70~200ミリF4とS PRO50ミリF1.4を使ってみたが、共に解像感はフルサイズ対応レンズのなかでも極めて高い部類。お財布が許すのであれば、ぜひS PROシリーズを購入したい。もちろん、今後登場するレンズにも期待だ。
そのほか、S1は画素数が少ないゆえのメリット(連続撮影コマ数が多くなる、常用高感度がS1Rよりも1段高くなってISO100~51200まで使える)もある。ここまで画素数の差が大きいと、撮影目的がハッキリしていればどちらにするか悩むまでもないだろう。
後編では、新たに搭載された動物認識機能を動画を交えつつ検証する。