機材レポート

もう望遠ズームはいらない!? M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3のスゴイ機動力と描写力

ズーム全域での近接撮影能力の高さも大きな魅力

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3の魅力の1つは、400mm相当までカバーするズーム比の高さだが、もう1つ挙げるとすれば、近接撮影能力の高さだ。それも、ズーム全域で最短撮影距離が短く、被写体に近づける点。

写真はアメリカンデイゴの花をテレ端200mm(400mm相当)の最短撮影距離、約70cmで撮影したもの。このとき、レンズは大きく繰り出され、レンズ先端から花までのワーキングディスタンスは50cmほど。撮影倍率は0.23倍(35mm判換算では0.46倍)とかなり高倍率の撮影ができた。また、ボケが素直なので、花の撮影にもこのレンズは活用できそうだ。
 

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 絞り優先オート F7.1 1/250秒 −0.3補正 ISO320 WB:5300K

■最短撮影距離での写り方を主な焦点距離で比較

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3の最短撮影距離は12mm時に約22cm、レンズ先端からのワーキングディスタンスは約10cm、ズームするに従って、最短撮影距離は伸び、200mm時には約70cmになる。しかし、実写すると広角域ではさらに近づいてもAFが合い、ワイドマクロ的な表現が可能であった。各焦点距離での花の写真は公式の最短撮影距離ではなく、AFが合う、最短の距離で撮影した。 

〈12mm(24mm相当)で撮影〉

〈25mm(50mm相当)で撮影〉

〈100mm(200mm相当)で撮影〉

〈200mm(400mm相当)で撮影〉

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 絞り優先オート F6.3 1/400秒 −0.3補正 ISO200 WB:5300K(4枚共通)

 

広角でも寄れるから遠近感を強調した撮り方ができる

広角域の最短撮影距離が短いと、表現の幅が広がる。写真は神社の参道に並ぶ店をスナップしたもの。左下のダルマまでの距離はレンズ先端から20cmほど。このダルマにピントを合わせ、12mm(24mm相当)の広い絵で参道の雰囲気を捉えた。近景にある被写体に思い切り近づくことで、遠近感が強調された。
 

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 絞り優先オート F14 1/60秒 −0.7補正 ISO200 WB:オート

 

高倍率ズームレンズのなかでの位置づけ

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3は、オリンパスの高倍率ズームレンズとして、コンパクトなベーシックモデルM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6Ⅱ、画質重視のPROモデルM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROに続く、3本目として登場した。

▲OM-D E-M1 MarkⅡ+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3(右)、OM-D E-M1X+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(左)

位置づけは超望遠400mm相当をカバーする欲張りなレンズだが、性能面に抜かりはない。スーパーEDレンズを2枚、EDレンズを2枚、球面収差の補正能力の高いスーパーHRレンズを1枚、HRレンズを2枚、非球面レンズを3枚使用し、ズーム全域で高い描写性能を実現している。100mmを超える望遠、超望遠域では若干、描写は甘くなるが、各種収差を効果的に抑えていることもあり、コントラストの低下も少なく、十分な解像感を維持する。
 
望遠撮影がメインの方には M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROなどをオススメしたいが、望遠ズームレンズを持っていてもあまり使う機会がない、という方にはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3が向いているかもしれない。標準ズームとしてはやや重量があるが、いざとなれば400mm相当の超望遠撮影ができ、ズーム全域で近接撮影能力が高いので、撮影できるシーンが広がる。
 
筆者が愛用しているM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROのキレの良さに及ばないが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3の描写に不満を感じることはほとんどなかった。高い光学性能やZEROコーティング、さらには防塵・防滴性能まで加味するとPROレンズに準ずる高性能レンズだと言える。
 
〈写真・解説〉小田切裕介

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