機材レポート

センサーサイズが違うと何が違う? フルサイズカメラが話題のいまこそマイクロフォーサーズ機について語りたい

複数メーカーの新規参入や新システム登場などにより、昨年からいっそう注目度が高まっているフルサイズミラーレスカメラ。ただ、手にしてみると一眼レフに比べてボディは小さいが、明るいレンズはそれなりに大きくて重いのは一眼レフと同じ。画質の点ではフルサイズがもちろん有利なことはわかっているけれど、いざ持ち歩くとなるとちょっと大変、もっと気軽に持っていけるサイズがいいな、というのが率直な感想だ。

その点では、APS-C機やマイクロフォーサーズ機の魅力を再認識する。サイズはグッとコンパクトになり、価格のお手頃感も一気に増す。APS-C機やマイクロフォーサーズ機でも上級機はそれなりに大きく、価格的にも値は張ってしまうが、ミドルクラスでは急速にユーザーに寄り添ってくれる優しさを感じる。機能的にも十分だ。

フルサイズ機が話題のいまだからこそ、改めてセンサーサイズの小さなカメラの利点について考えてみたい。ということで、今回はマイクロフォーサーズ機について、「こんなに小さいけど画質はどうなの?」「フルサイズとの描写の違いは何?」といった基本的なところから検証・解説していきたいと思う。

 

マイクロフォーサーズではフルサイズの焦点距離の半分で同じ画角になる

まずは、マイクロフォーサーズとフルサイズとの根本的な違いであるセンサーサイズから触れてみよう。

マイクロフォーサーズの撮像素子サイズは、基本の縦横比が少し異なるが(マイクロフォーサーズは4:3、フルサイズは3:2)、縦・横それぞれがフルサイズのおよそ「半分の長さ」となる。つまり面積は、およそ1/4。この「半分の長さ」というのは比較の点でわかりやすく、同じ画角が欲しいときには、ちょうど半分の焦点距離となる。

例えば、フルサイズの標準レンズの代表格である50mmレンズの画角は、マイクロフォーサーズでは25mmとなる。カタログや雑誌などよくある文言でいうと、つまりマイクロフォーサーズ用の25mmレンズがフルサイズでいうところの50mm相当ということになる。

 

下の写真は、「フルサイズ機+50mmレンズ」と、「マイクロフォーサーズ機+25mmレンズ」で撮影したもの。条件により若干の差はあるが、おおよそ同じ画角になっているのがわかる。絞り値に関しては同じF1.4だが、背景を見るとわかるように、ボケ量は異なる。

<マイクロフォーサーズ(LUMIX G99+LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 ASPH.)>

 

<フルサイズ(EOS R+EF50mm F1.4 USM)で撮影>

 


▲左:EF50mm F1.4 USM、右:LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 ASPH.

 

センサーサイズが小さいほどボケにくくなる

特にポートレートユーザーなどは、背景をボカして人物を浮き上がらせる描写を楽しみたいという人も多いだろう。

マイクロフォーサーズ機のボケの量(直径)は、理論的には画角と絞り値が同じならば、これもフルサイズ機の「半分」となる。ボケの直径が半分になるということは、絞り値としては2段暗くなる。つまり同じ画角を持つレンズ(例えばマイクロフォーサーズの25mmとフルサイズの50mm)であれば、ボケの量(直径)はマイクロフォーサーズのF2とフルサイズのF4で同程度となる。この差は結構大きい。

マイクロフォーサーズが大口径のF1.4であっても、フルサイズのF2.8でのボケと同じ大きさとなり、マイクロフォーサーズはフルサイズと比べればあまりボケない。なので、より大きなボケが欲しいなら、より大口径のレンズを選んだり、より長い焦点距離のレンズを使うなどの工夫が必要になる。

作例(全体)

<LUMIX G99+M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8/F2で撮影>

 

<Z 6+AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G/F4で撮影>

 

作例(部分拡大)

<LUMIX G99+M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8/F2で撮影>

 

<Z 6+AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G/F4で撮影>

中望遠レンズでテスト。マイクロフォーサーズのほうが5mm相当長めになってしまうが、共に解放絞り値F1.8の画角の近い中望遠レンズでチェックした。周辺部はレンズによって口径食などで差が出やすいので、中央部の玉ボケに注目。F1.8が中途半端でわかりにくいのでマイクロフォーサーズがF2、フルサイズがF4というキリのいい絞り値で比べてみた。ボケの大きさがほぼ同じであることがわかるだろう。

 


▲M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8(右)とAF-S NIKKOR 85mm f/1.8G(左)を並べたところ。45mm F1.8は小さすぎるほどのコンパクトさ。2012年にCAPAレンズ大賞にも輝いた1本だ。

 

大きくぼかしたいなら明るい単焦点が1本欲しい

マイクロフォーサーズ機でキットレンズの標準ズームを使っている場合、元々の絞り値が暗いこともあって、望遠域を積極的に活用しない限り、大きなボケは期待できない。ぼかしたいときにはF1.8やF1.4、さらにはF0.95などの大口径レンズを使えばかなり効果的だ。その明るさでもレンズ自体は比較的コンパクト。

さらに最短撮影距離も、フルサイズに比べて寄れるレンズが多く、テーブルフォトやネイチャー撮影などではフットワークよく活用できる。レンズやカメラが小さいことで、寄ったときに被写体への光を遮ることも少ない。

<LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S./25mm絞り開放F5.2で撮影>

 

<M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8/絞り開放F1.8で撮影>

 

<LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH./絞り開放F1.4で撮影>

 

<NOKTON 25mm F0.95/絞り開放F0.95で撮影>

 

上の朝顔の写真は撮像素子-被写体間を約30cmで撮影。最短撮影距離が短いのもメリットだ。最短撮影距離はLUMIXの2本が約30cm、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8が約25cm、NOKTON 25mm F0.95は約17cm。NOKTONはボケが大きい上に思いっきり寄れる。

 


▲撮影に使った4本を並べたところ。右の一番大きなMF専用のNOKTON 25mm F0.95でも約8cmほど。F1.8タイプになるとさらにグンと小さくなる。中望遠系でも同様だ。

 

高感度画質の違いをチェック

フルサイズと同じ画素数であれば、ひとつ当たりの画素の面積はマイクロフォーサーズでは1/4ほどになってしまう。となると、得られる光量も1/4で、感度的にも2段ほどの差が出てもおかしくない。

ただ、画素数の点では今回使ったLUMIX G99でも約2030万画素と抑えめ、それに対しフルサイズはさらに高画素になってきているので、機種によって違いはあるものの、その差はもっと小さくなり、約1段前後ほどの違いに収まっている印象だ。常用感度域としてはISO25600までも用意されていて、目一杯上げればさすがに荒れるが、ISO3200前後までは高画質を楽しめる範囲といえるだろう。

<フルサイズ機(EOS R)/ISO6400>

部分拡大

 

<マイクロフォーサーズ機(LUMIX G99)/ISO3200>

部分拡大

 

<マイクロフォーサーズ機(LUMIX G99)/ISO6400>

部分拡大

マイクロフォーサーズ機(LUMIX G99)とフルサイズ機(EOS R)で高感度の画質を比較してみた。比較で表示したのはEOS RのISO6400に対し、G99のISO3200、ISO6400。EOS RのISO6400は高感度に関わらず非常に滑らか。G99のISO3200は滑らかさではまずまずだが、髪のディテールを見ると潰れているところもある。同じISO6400同士では、さすがにはっきりとEOS Rが高画質だとわかる。

 

自分にとってどこまでが必要か? 足るを知ろう

マイクロフォーサーズ機でちょっと気になるところといえば、やはり画質だろうか? そりゃあ解像感や高感度画質などでは、もちろんフルサイズ機には物理的に敵わない。だた、問題なのは、自分がどこまでの画質を必要とするか、用が足りているかどうかだ。

大伸ばしするような仕事で使うのなら画質が良いに越したことはないのだが、趣味の範囲で必要以上を求めれば、実はデメリットも大きくなる。機材全体で大きく重くなり、高価にもなり、さらにはデータも大きくなる。データの大きさは、撮影枚数、メモリーカード容量、PC環境の整い具合にも関係してくる。

あくまでもこれらを承知の上で使うなら全然問題ないが、スペックの良さのみで手を出すと、あれ? 手に入れたはいいが、そのうち重くて持ち出すのが面倒くさくなってタンスの肥やしに……ということになりかねない。いつもお供に持っていけないと意味がないのだ。

画質比較などを見てしまうと気持ちが揺れることもあるだろうが、それはあくまでも参考としながら、果たして自分にとってどこまで必要か、コストや使用環境など全体を考慮して吟味すると良いだろう。

具体的には、とにかく大きなボケを、そして高感度域でできるだけ高画質が欲しいという明確な目標があるなら、迷うことなくフルサイズ機が大きなターゲットとなる。ただ、そこを思いきり突き詰める必要がないならば、汎用性の高さ、運用の容易さ、要するに使い勝手のいいパートナーとしては、マイクロフォーサーズ機(あるいはAPS-C機)という選択肢はかなり魅力的だ。撮りたいと思ったときに撮れるよう、気軽に持ち運べる1台になってくれるだろう。

 

システムが小さく、軽ければ対応できるシーンが増える

ボク自身、実際に旅行の際にはマイクロフォーサーズを使うケースが非常に多い。一番の理由は荷物の負担にならないからだ。仕事であれば機材をガッツリ仕込むことも覚悟するが、旅行の場合は機材だけ持っていくわけにはいかない。

カメラ本体が小さく軽いと、それだけレンズの種類を増やしたり照明機材などを加えたりすることができ、様々な撮影に対応可能となる。旅ではどんなシーンに出くわすかわからないだけに、これは心強い。マイクロフォーサーズのセットだとボディ3台にレンズ4~5本、さらにLEDライト、ストロボが1台くらいが中型のカメラバックに入ってしまう。


▲中型カメラバック(LOWPRO NOVA 200AW)に入っているもの <ボディ>LUMIX G99、LUMIX GX7 MarkⅡ、LUMIX GH2 <レンズ>LUMIX7-14mm F4、12-35mm F2.8、オリンパス40-150mm F2.8+1.4倍テレコン、NOKTON 25mm F0.95 <ストロボ>FL-600R <LEDライト>YONGNUO YN300Auto

 

モデル/朝倉璃奈(ABP Inc.)