機材レポート

カジュアルモデルながら画質は圧巻! “手が届く中判カメラ”「FUJIFILM GFX 50R」実写レビュー

デジカメは一般にセンサーサイズが大きく、画素数が多いカメラほど立体感のある描写が得やすく、階調も豊かに撮れるとされている。では一般ユーザーが量販店などで手に取れるできるだけセンサーサイズの大きなカメラはというと、フルサイズよりさらに大きいラージフォーマット(中判)センサー搭載の「FUJIFILM GFX」シリーズやリコーの「PENTAX 645Z」などが挙げられる。最近では、画素数約1憶200万画素を誇る「FUJIFILM GFX100」が話題となったことも記憶に新しい。

画質面で有利な中判カメラだが、センサーサイズが大きくなるほど高価になりやすいのがカメラの常で、先に挙げたGFX100のボディ価格は実売で130万円程度。さすがに100万円超えは手が届かない……でも中判カメラは気になる、という人におすすめしたいのが、同じGFXシリーズの「FUJIFILM GFX 50R」だ。約5140万画素のラージフォーマットセンサーを搭載しつつ、実売価格は60万円程度。さらにキャッシュバックキャンペーンを利用すればぐっと現実的な選択肢となってくる。本稿では、このGFX 50Rの魅力や特徴、向いている被写体などについて解説する。


▲FUJIFILM GFX 50R。収納性に優れた長方形のボディに約369万ドット、0.77倍のEVFを装備。ダイヤル中心のわかりやすい操作性など、特にフィールドでの使いやすさは抜群だ。

 

中判カメラとしては小型のボディで使いやすさ重視の設計

FUJIFILM GFX 50Rは、約775gとラージフォーマットミラーレスカメラとしては軽量かつ小型のボディを採用。これは、例えばフルサイズミラーレスカメラのニコン Z 7(約675g)と比較しても100g程度の差しかない。形状は長方形でレンジファインダーカメラに近く、ファインダーも多くのレンジファインダーカメラ同様、背面左上に装備されている。

背面モニターは約236万ドットの3.2型チルト式で、タッチ操作にも対応。露出設定は同社のX-Tシリーズなどでも好評のダイヤルを中心としたもので、視認性が高く露出ミスの少ないものだ。このほか、独立した露出補正ダイヤルや背面にフォーカスレバーが配置されるなど、使いやすさ重視の設計になっている。


▲タッチパネル採用ということもあり、非常にシンプルな背面。右手側にピント位置拡大などに用いるリアコマンドダイヤルやAF位置を操作できるフォーカスレバーなどを配置。露出やAF位置を素早く決定できる。背面モニターは3.2型と大きめで見やすく、上下チルトが可能。

 


▲上面は右手側にシャッター速度ダイヤルや露出補正ダイヤルなどを集中配置。シャッターボタンの周囲には、露出調整などに用いる、フロントコマンドダイヤルも用意されている。

 

AFは、コントラスト検出方式による425点AFが採用され、画面の広い範囲でAFが可能。顔検出/瞳AFにも対応する。連写は約3コマ/秒で圧縮RAW撮影時でも最大13コマまで(JPEG時はカード容量いっぱいまで)の連続撮影が可能だ。ISO感度は常用で100~12800(拡張で50~102400)に対応する。同社独自の「フィルムシミュレーション」機能のほか、「3D電子水準器」や各種のブラケティング機能にも対応しているので作画も行いやすい。

ちなみに、GFXシリーズには同じセンサーを用いた「FUJIFILM GFX 50S」も存在するが、あちらはスタジオ撮影なども意識したモデルで、EVFが着脱式になっていたり、背面モニターが3方向チルト式になっていたりといった特徴がある。GFX 50Rに比べると大きめで質量も約920g(EVF装着時)。実売価格も75万円程と少し高めだ。

 

肝心の描写力は? GFX 50Rの画質を実写でチェック!

ここからはGFX 50Rの画質について見ていこう。

FUJIFILM GFX 50Rの作例

※以下の作例はリサイズしたものを掲載しています

<作例1>

フィルムシミュレーションを「Velvia」に設定して撮影。色濃く印象的な青空を再現できた。

 

<作例2>

120mm F4のマクロレンズで馬の表情をアップで狙う。F5.6に絞ったが、120mmだけあってピントは浅い。とはいえ、キレがよくボケ描写が自然で、馬の潤んだ瞳や毛並みが立体的に美しく撮れた。

 

<作例3>

噴煙の切れ間からのぞく硫黄山(アトサヌプリ)の山肌。荒々しい山肌の岩や石、1つ1つの様子が解像される一方で噴煙のトーンも破綻なく写せた。

 

<作例4>

駐機中の飛行機をISO1600で撮影。ISO3200程度までは高感度でも画質劣化はほとんど見られず、十分以上の解像感で撮れる。

 

<作例5>

120mm F4マクロを使い、最短撮影距離付近で撮影。F8、1/80秒での撮影だが、極めて立体的な写りになった。大型センサーを使いながら、手持ちでマクロ撮影ができるのは凄い。

実際に使ってみると、解像感が高いのはもちろん、非常に立体感が感じられ、階調も豊かな写りが得られた。高感度もISO1600以上を常用しても、ほとんど画像が荒れることがなく、安定した描写だ。ただ正直なところ、AFは正確なものの最新のFUJIFILM Xシリーズほどの速さはなく、連写も最高約3コマ/秒と速くはないので、スポーツのような動きの激しい被写体を撮影するには、置きピンで撮影したり、連写を多用せずに一発で瞬間を切り取ったりといった工夫や技術が必要なカメラだと感じる。

そのため、GFX 50Rの使用を特におすすめしたいのは、風景やスナップ、ポートレートなどを中心に撮るユーザーだ。風景であれば、解像感や階調、色再現などこのカメラが持つ多くの特性を生かせるし、スナップであれば感度を高めに設定することで被写界深度を稼いだり、シャッター速度を速めたりすることでブレやボケを防げ、解像感や階調を生かした撮影ができる。ポートレートなら、絞りを開けてボケを生かした撮影ができるのはもちろん、優れた階調特性を生かして肌の質感を再現したり、メリハリの効いたライティングでの撮影が画像の破綻なく楽しめたりするはずだ。

 

GFXシリーズの交換レンズラインナップは?

現状で発売されているGFXシステム用交換レンズ(Gレンズ)は、2019年9月発売予定の50mm F3.5を含め単焦点7本とズーム2本、そして250mmレンズ用の1.4倍テレコンバーターが用意されている。これらで23mm(35mm判換算で18mm相当)から350mm(同277mm相当)までをカバーしている。

ただ、ボディのセンサーサイズが大きいぶん、どうしてもレンズが大きく、重くなりがちだ。そのため、レンズに関してはあまり本数を欲張らずに、まずは標準ズームに1~2本のレンズを組み合わせて使うのがおすすめ。例えば、風景であれば望遠ズームとマクロレンズ、スナップなら23mmの広角レンズ、ポートレートなら110mm F2の大口径レンズといった具合だ。

GF120mmF4 R LM OIS WR Macro


35mm判換算で95mm相当のマクロレンズで、単体で最大撮影倍率0.5倍までの撮影に対応。約5段分の手ブレ補正が搭載され、手持ち撮影も容易だ。実売価格/33万9660円(税込)。

 

GF23mmF4 R LM WR


35mm判換算で18mm相当の超広角レンズ。高解像なのはもちろん、ディストーションが少なく、「ナノGIコート」によりゴーストやフレアも少ない。防塵・防滴仕様で-10℃の耐低温構造も採用。参考価格/32万8860円(税込)。

 

GF110mmF2 R LM WR


35mm判換算で87mm相当の中望遠レンズ。開放F2と明るく、大きく美しいボケ描写を引き出すことができる。4枚のEDレンズにより、色収差が徹底して抑えられ、にじみの少ない描写が得られる。実売価格/35万460円(税込)。

 

【まとめ】GFX 50Rは“手が届く”中判カメラ

現在の最新機種で画素数を追求するなら、約1憶200万画素のFUJIFILM GFX100ということになるが、ボディのみで130万円というカメラは誰にでも買えるものではない。しかし、その半額以下で買えて、約5140万画素のラージフォーマットセンサー採用のGFX 50Rは、画質面の性能と価格のバランスが取れていて、少し頑張れば何とか買えるかも……と思わせてくれる。

しかも、2019年9月30日まで開催中のキャッシュバックキャンペーンなどを上手く活用すれば、フルサイズの高画素モデルなどとの価格差も詰まってくる。被写体に向き不向きが多少あるので、誰にでもおすすめできるカメラではないが、風景撮影などがメインのユーザーにとっては非常に魅力的な選択肢といえるのではないだろうか。

※記事内の実売価格は2019年8月23日時点のものです(編集部調べ)