機材レポート

ソニー「α9 II」ファーストインプレ! 実際に触ってわかったカメラとしての成熟度

ソニーは、 フルサイズミラーレスカメラの新モデル「α9 II( ILCE-9M2)」を2019年11月1日に発売する。価格はオープン。ボディの市場推定価格は55万円前後(税別)。ひとあし早く実機(外観機)を手にすることができたので、その印象を交えつつ詳細を紹介しよう。

▲圧倒的な高速撮影性能で大きな衝撃を与えた「α9」の後継にあたる「α9 II」。今回は高速通信性能や操作性が大きく進化している

 

正統進化で操作性が大きく向上

「α9 II」は、有効約2420万画素のイメージセンサーや693点の像面位相差AFセンサーを搭載し、ブラックアウトフリー連続撮影が可能など、基本性能の面では従来機「α9」を踏襲。ボディサイズ、形状もほぼ同じだ。α9 IIとα9を並べてみると、グリップ上部の角度に違いが見られる程度で、正面から見るとほとんど見分けがつかない。

▲α9 II(左)とα9(右)

 

では何が大きく変わったかというと、主に使い勝手の部分だ。上部の操作部を見ると違いがわかる。後ろダイヤルの形状と位置が変わり、ダイヤル全体が見えるようになったこと、露出補正ダイヤルの中央にロックボタンが設けられたこと、C1・C2ボタンのストロークが深くなったことなどだ。 C1・C2のボタンの間にあった突起もなくなっている。

▲α9 II(左)とα9(右)。見切れているが、ファインダーのアイピースの形状が少し変わっているのもわかる

 

α9 IIの背面のボタン配置もα9とほぼ同じだが、「α7IV」(2019年9月発売)と同様に、押し間違えをしないよう「AF-ON」ボタンが大きくなって確実な操作性を実現した。またマルチセレクターの表面が滑りにくいような形状に変更され、コントロールホイールの溝も深くなっているのが確認できる。ファインダーを覗きながらの操作を意識しており、液晶モニターもタッチ操作で被写体選択がしやすくなっている。また操作レスポンスが約1.5倍に高速化されている。

▲α9 II(手前)とα9(奥)

 

見た目ではわかりにくいが、α9 IIではグリップの形状が微妙に変化している。具体的にはグリップの窪みが深くなっており、グリップの長さが伸びたことでホールド感が向上した。小指までしっかりと握りこむことができるので、超望遠レンズを装着したときにも安定感がある。またホールド感がよくなったことで、前ダイヤルもグリップを握り直すことなく人差し指で回しやすくなった。こうしたグリップの変化により、シャッターチャンスにも強くなったと言えるだろう。

▲α9 II(左)とα9(右)。グリップの変更に加え、α9 IIではシャッターボタンに角度がつき、より自然に押せるようになっている。

 

上部左にあるドライブモードダイヤル、フォーカスモードダイヤルも、一見すると違いはないように思えるが、よくよく見るとα9ではダイヤル脇にあったフォーカスモードダイヤルロックがα9 IIではなくなっているのがわかる。ワンアクションで操作できるだけでなく、ファインダーから目を離さずに操作できるような配慮が施されており、カメラとしての完成度が一段上がったようだ。

▲α9 II(左)とα9(右)

 

α9 IIでは、カードスロットも変化した。デュアルカードスロットはそのままだが、上がSLOT1、下がSLOT2に入れ替わった。さらにメモリースティック非対応となって、カードスロットがSDメモリーカード(UHS-II対応)専用になっている。シンプルになったということは、操作ミスを防ぐという点では大きな意味がある。

▲α9 II(左)とα9(右)

 

ちなみに、こうした操作系は「α7R IV」(2019年9月発売)で採用されたものが生かされているようで、両者を一緒に並べてみると、ボディ右側のダイヤルの配置やボタンの形状などがほぼ同じだ。

▲α7R IV(上)とα9 II(下)。α9 IIでは左側にドライブモードダイヤルが搭載されているが、右側はほぼ同じデザインだ

 

高速通信性能の強化でプロのワークフローをサポート

もう1つの大きな進化点は、「高速通信性能」だ。α9譲りの高速撮影性能に加え、高速データ転送を実現したことで、プロの現場で撮影から納品までのワークフローを強力にサポートするカメラになっている。

ボディ側面には、最高1Gbpsの高い転送速度を実現するために規格1000BASE-Tに対応したLAN端子を内蔵(α9は100BASE-TX)。無線LAN(Wi-Fi)機能は「IEEE 802.11ac」規格に対応し、2.4GHzに加えて5GHz帯域での高速データ転送も可能となった。さらにUSB Type-C(USB3.2Gen 1対応)の端子も増設されている。

▲α9 II(左)とα9(右)

 

また、α9 IIは、音声メモ機能を搭載。「Imaging Edge」のモバイルアプリケーション「Transfer & Tagging add-on」(トランスファーアンドタッギングアドオン)を使って、モバイル機器に画像と音声データ(WAVEファイル)を転送し、音声を自動でテキスト化してIPTC メタ情報 として画像に埋め込むことができる。さらに、サーバーへの自動FTPアップロード機能を利用すると、モバイル機器を操作することなく、テキスト化された音声データ付き画像をサーバーにアップロードすることができるようになる。

 

機能面での進化としては、最高約10コマ/秒の高速連写が可能になったほか(従来機は最高約5コマ/秒)、蛍光灯などの人工光源の点滅によるフリッカーの影響が少ないタイミングを検出し、シャッターを切ることができる「フリッカーレス撮影」にも対応した(いずれもメカシャッター時)。ボディ内手ブレ補正も5.5段にアップしている(従来機は5.0段分)。

▲フリッカーレス撮影に対応

 

地味に便利な変更点として、再生時の画像送り設定で、複数枚の選択ができるようになった。またシャープネス設定が±3.0から±5.0に拡大され、選択できるアスペクト比に4:3が加えられるなど、細かい点でもブラッシュアップが図られている。

▲画像再生時のジャンプ移動が可能に。

 

使い勝手を高めるアクセサリーに対応

α9 IIでは、α7R IVにも対応可能な縦位置グリップ「VG-C4EM」を装着できる。バッテリー(NP-FZ100)を2個装着することができるため、ホールド性の向上とともに、長時間の撮影を可能にしてくれる。 TVG-C4EMは、本体と同様のボタン配置となっており、縦位置にした状態でも違和感なく操作することができる。

▲縦位置グリップ「VG-C4EM」。ソニーストアでの価格は3万5500円。

 

また、Bluetooth接続に対応し、カメラのフォーカスやズームを遠隔で操作できるワイヤレスシューティングリモコン「RMT-P1BT」に対応。マニュアルフォーカス時の微妙なフォーカス調整も可能となっているほか、カメラ本体のC1ボタンに割り当てられた機能を呼び出せる「カスタムボタン」も装備されている。

▲ワイヤレスシューティングリモコン「RMT-P1BT」。ソニーストアでの価格は6,750円(税別)。

 

α9 IIは、2019年10月9日(水) から予約販売が開始されるほか、10月12日(土)と13日(日)に東京・大崎のソニーシティ大崎で開催されるイベント「α Universe 2019 PREMIUM EVENT」で体感することができる。また、10月12日(土)より、ソニーショールーム/ソニーストア 銀座をはじめ札幌、名古屋、大阪、福岡天神の各ソニーストアで先行展示され、いち早く手にすることができる。