以前レビューをお届けした「PowerShot G5 X Mark II」(以下、G5 X Mark II)と同時に、同じく1.0型のCMOSセンサーを搭載するコンパクト、G7 Xシリーズの3代目「PowerShot G7 X Mark III」(以下、G7 X Mark III)も発売された(キヤノンオンラインショップでの価格は税別9万2500円)。本稿では従来機からの進化点やG5 X Mark IIとの違いを中心にレビューしていく。
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キヤノンの本格派コンデジが華麗にイメチェン! スタイリッシュな実力機「PowerShot G5 X Mark II」レビュー
【外観・操作性】EVFがないぶん軽くて安定して構えられる
デザインが大きく変わったG5 Xシリーズに対し、G7 X Mark IIIはMark IIを踏襲した形をしている。正面から見ると、G7 Xのロゴの位置が異なるくらいで、実によく似ている。そしてG5 X Mark IIにも近いデザインだ。
▲左がG7 X Mark II、右がG7 X Mark III。一見しただけでは見分けがつかないほど似ていて、高品位コンパクトデジタルのデザインを継承しているのがうかがえる。G7 Xのロゴがボディ下にあるのがMark IIIだ。
▲ボディ上面もG7 X Mark IIやG5 X Mark IIとよく似たレイアウト。モードダイヤルと露出補正ダイヤルが同軸にある2階建て式は、少ないスペースで確実な操作を可能にしている。
▲背面もG7 X Mark IIを踏襲し、G5 X Mark IIと同様のレイアウト。コントローラーホイールによりスムーズなスクロール操作が行える。ボタンも大きくて押しやすい。
▲背面モニターはチルト式のタッチパネル。ハイアングルやローアングルでも撮りやすい。また動画撮影時にもチルト式のモニターは活躍する。
しかしG7 X Mark IIIは、G5 X Mark IIに搭載されているEVFを持たない。そのぶん、G7 X Mark IIIはわずかだが小さく、重量も約36g軽い。手に取ってみると、大きさよりも軽さが印象的だ。G5 X Mark IIはポップアップ式のEVFを搭載しているため、グリップを握ると左側が重く感じる。しかしEVFがないG7 X Mark IIIはバランスがとても良く、G5 X Mark II以上に安定して構えられた。
ブラックボディはG7 X Mark IIやG5 X Mark IIと同様に重厚感のある仕上がり。ポケッタブルなコンパクトデジタルカメラながら、本気で作品を撮りたくなってくる。カラバリのシルバーボディは美しくカジュアルな印象だ。小型ながら手にする満足感があるのも、G7 X Mark IIIの魅力と言えるだろう。
▲内蔵ストロボは、室内や暗所はもちろん、日中でも逆光の補助光にも便利だ。ボディ側面のレバーを下げるとポップアップする。
レンズもG5 X Mark IIの24-120mm相当とは異なり、F1.8-2.8の24-100mm相当。これはG7 X Mark IIと同じだ。望遠側がやや短いものの、常用域を十分カバーしている。レンズの付け根に備えられたコントロールリングにはクリックがあり、絞り値などの設定が扱いやすい。
※10/15追記・修正:G7 X Mark IIはクリックあり/なしの切り替え式でした
なおG5 X Mark IIではクラシックレンズのピントリングを思わせるデザインだったが、G7 X Mark IIIはシンプルなリング。本格派のカメラらしさを感じるのはG5 X Mark IIのコントロールリングだが、G7 X Mark IIIは小型軽量のイメージを損なわないデザインだ。各ダイヤルやレバー、ボタン類の操作性も良好。それぞれ適度に大きく、とても使いやすい。
▲G5 X Mark IIと比べるとシンプルなデザインのコントロールリング。クリックがあり、絞り優先AEでは1/3ステップのF値設定が確実に行える。一眼レフやミラーレスの絞りリングを操作している感覚だ。
▲各ボタンやコントロールリング、コントローラーホイールは、機能のカスタマイズが可能。自分が使いやすいG7 X Mark IIIに仕上げられる。
【画質・機能】ズーム全域で絞り開放から解像力が高い。動画ライブ配信サービスにも対応
撮像素子や画像処理エンジンもG7 X Mark IIから進化した。どちらのCMOSセンサーも1.0型の有効2010万画素。しかしG7 X Mark IIIは積層型のCMOSセンサーを採用し、より高画質化と高機能化を実現している。さらに画像処理エンジンもDIGIC7からDIGIC8になり、高感度でも低ノイズで高速化も可能にした。
実写結果からも、高画質なのを実感した。ズーム全域で絞り開放から解像力が高く、よほど拡大しなければ1.0型のCMOSセンサーとは思えないほどだ。2段ほど絞るとさらに解像感が増し、画面周辺まで安定した画質になる。逆光にも強く、フレアやゴーストはとても少ない。厳しい光線でも安心して撮影に集中できた。
【作例1】
背面モニターをチルトさせローアングル撮影。ワイド端24mm相当で、広角らしい誇張した遠近感を狙った。ピントはモニターをタッチ。こうした撮影もG7 X MarkⅢはスムーズに対応できる。
【作例2】
花と置物を望遠側100mm相当で撮影した。街中で惹かれたモチーフを切り取るのに、100mm相当は使いやすい焦点距離だ。解像力も高く、置物の質感もよく再現されている。
【作例3】
黄色い車を狙っていたら、その横を自転車が通過したのでとっさにシャッターを切った。G7 X MarkⅢのAFは素早く合焦し、チャンスに強いのを感じた。
【作例4】
24mm相当でマクロモードにしてひまわりをクローズアップ。やや柔らかい描写だが、ピントが合った部分はとてもシャープだ。
【作例5】
器に入れられたゴーヤを望遠側で撮影。100mm相当でも40cmまで近づける。絞り開放にしてボケを活かすと、コンパクトデジタルとは思えない写真が撮れた。
【作例6】
太陽が画面に入る強い逆光。しかしフレアもゴーストもほとんど出ず、クリアな仕上がりだ。逆光に強いレンズなのがわかるだろう。
【作例7】
G7 X Mark IIはNDフィルターを内蔵している。NDフィルターをオンにして、水の流れをスローシャッターで表現した。手ブレ補正もよく効き、楽に手持ち撮影ができた。
【作例8】
ISO6400に設定。拡大するとノイズ感はあるものの不自然ではない。SNSなどWebでの使用や2Lサイズ程度のプリントなら十分実用になる。
以上は写真(静止画)の作例だが、動画機能も注目したい。特に、G7 X Mark IIIは動画ライブ配信サービス機能を持つのがユニークだ。Wi-Fiを経由してカメラからYouTubeにアップロードできる。また4K動画や4Kタイムラプス、120pのハイフレームレート動画やHDR動画モードなど、通常の動画機能も充実している。
▲右側面にはHDMIとUSBの端子を備える。USBはスマートフォンやパソコンでも主流になりつつあるType-Cだ。
▲動画ライブ配信サービスが可能なG7 X Mark IIIは、左側面にマイク端子を持つ。端子の上は内臓ストロボ用のポップアップレバーだ。
▲BluetoothでペアリングできるワイヤレスコントローラーBR-E1に対応。撮影や録画、オートフォーカスによるピント合わせがワイヤレスで行える。
G7 X Mark IIIとG5 X Mark II、どちらを選ぶ?
G7 X Mark IIIはG5 X Mark IIと撮像素子も画像処理エンジンも同じ。レンズとEVFの有無、ライブ動画配信サービスが主な違いだ。どちらにするか迷うところだ。自分にとってEVFと望遠側120mm相当が必要かどうかが大きなポイントになる。EVFは明るい屋外でも見やすく、カメラを顔に密着させて安定した構えで撮影できる。特にスローシャッターでは有効だ。
とはいえG7 X Mark IIIの軽快さも見逃せない。EVFは持たないものの、そのぶん軽いためコンパクトデジタルらしい機動力が得られる。望遠側が20mm短くても、通常の撮影なら気にならないだろう。
そして動画ライブ配信サービス。YouTubeに動画をアップしている人には魅力的な機能と言える。シルバーボディが選べるのもG5 X Mark IIと異なるところだ。
G7 X Mark IIIは上着のポケットに入ってしまうほど小さいので、手軽に持ち歩いて日常を高画質に切り取りたい人にイチオシできる。
▲RAWはデータサイズが小さくなるCRAWが選択できる。RAWで大量の撮影をする人や、SDカードの容量が少ない場合にありがたい。
▲RAWで30コマ/秒の高速連写ができるRAWバーストモードを搭載。動画のように撮影して、RAWの切り出しやRAW現像ができる。
▲Wi-Fiによるスマホ接続やBluetoothによるリモコン接続、クラウドによるWebサービスの接続など、通信機能も充実している。