筆者が最初α7R IVを手にしたとき、頭に浮かんだのは「6100万画素の超高画素機……手持ちで普通に使えるのだろうか?」ということであった。以前の記事で述べたが、これまで何度か画素数のジャンプアップがあった。そのたびに高画素機は三脚に据えて使うべきと言われてきたし、過去にはシャッターの動きが原因でブレが発生してしまうという問題もあった。
ましてや今回の新撮像素子は有効6100万画素。よっぽど気をつけないとブレ写真を大量生産することになってしまわないだろうか? いやいや、そもそも普段使いが可能なカメラなのだろうか? また、新しいカメラはカラー概念が変わることもままあり、その発色はどんな発色になっているのだろう? 様々なことが頭に浮かんだ。
だが、考えるより使って確かめてみることが一番早い! さっそく様々なシチュエーションで使い込んでみた。
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6100万画素での手持ち撮影は問題ない?
カルストの大地に光が差し込む。写真の基本の1つ、光と影。あっ! いい! そう思ったときにシャッターが切りたい。三脚を据えカメラをセットし、構図を決めて……なんてしている間にベストの瞬間は過ぎていくので、そんなヒマはない。α7R IVを受け取った当初、気にしていた手ブレは大丈夫なのか? という心配も頭によぎるなか、急ぎ70-200mm F2.8 GM OSSをα7R IVにセットし、手持ちでシャッターを切る。撮影データはF7.1 1/250秒 ISO100 焦点距離125mm。撮影した写真をリアモニターで拡大して確認する。うん! この程度の撮影なら全然問題なし!
その後、この場所ではカメラの基本的な動きや発色傾向、解像テストや各レンズのチェックなどを行うため、少しづつ場所を変え撮影を続ける。そのなかで様々なことに気づいていく。例えば、EVFの見えの良さや純正レンズのAF合焦までのスピードの速さ、そしてほかのフルサイズミラーレスフラッグシップモデルよりも一回り小さいことなど。
発色もかなり豊かだ。次の写真のようなシーンで、WBがオートのままだと雲を白くしてしまおうとするカメラが多いなか、α7R IVは、撮り手の気持ちを汲むかのように豊かな発色を見せる。
そうこうしているうちに、日も暮れてきて空が焼けてきた。WBをオートから太陽光へ変更し、日陰の雲を青くして撮影する。うん、いいねぇ。パンチのある色合いだ。α7R IVもソニーらしい色合いを踏襲しているようだ。
山間を流れていく雲をスローシャッターで撮影。さすがに2秒というスローシャッターでは三脚が必要になったが、テスト項目の1つである「シャッターによるブレはないか?」を試すため手ブレ補正をレンズ側でOFFし、シャッターを切ってみる。
拡大して確認してみたが大丈夫きちんと止まっている。ただ、使っている三脚によってはシャッターを押すときに注意が必要だ。筆者はこのとき、最初はいつも使っている大きな三脚ではなく小さめの三脚を使ってしまったのでカメラ+レンズの重量が三脚の想定重量をオーバーしてしまい、シャッターを押したときにブレを発生させてしまった。急ぎいつもの三脚へ変更し、シャッターを切るときちんと止まってくれた。それでも心配な方はタイマーを使って撮影することをおすすめしたい。
旅のなかで出会った被写体を思い浮かべたイメージに近づけて撮る
今回は、リフレクションが美しい砂浜でも撮影を行った。レンズの性能も関係してくるが、カメラの基礎体力によってもこうしたリフレクションを大切にする画のクリア感は左右される。
上の写真では筆者が頭に浮かべた画のイメージを具現化するため、クリエイティブスタイルを変更。具体的には、発色を豊かにし、黒の締まりをよくするためクリエイティブスタイルをヴィヴィッドにし、コントラスト+1→彩度+3→シャープネス+1と操作して、自分が思い浮かべたイメージに近づけていった。こうした「イメージを具現化できる」ということはカメラ選びにとって大事な要素だ。
また、旅の途中、海の見えるとても素敵な駅を見つけた。
夕暮れ時を待ち撮影に入る。日が傾くと同時に徐々に雲が張り出してしまい、「海に落ちる夕陽を駅のホームともに」という画は撮影できなかったが、その代わり駅では様々な人との出会いがあり、豊かな時間を過ごすことができた。そのなかで夕陽を見ながら佇む後ろ姿を撮影させていただいた。
1つ気になる点としては、「あ、いいな」そう思ったとき電源をONにし撮影に入るのだが、起動時間がわずかに長いかな、と筆者の感覚では感じた。といっても、それもほんの少しのこと。きちんと撮影したい画を撮ることができた。
朝の山並みと夜景で青系の発色をチェック
夕景で赤系の発色を確認したので、次は青系の発色を確認しておきたい。なお、WBはすべて太陽光で撮影している。
最初の写真は、朝の「かすむ山並み」を撮影したものだ。WBを+3ブルーに振ったのだが、朝の雰囲気がよく出ている。
次の写真は、日の沈んだ直後のブルーアワーに撮影したもの。筆者は、街の夜景写真を撮影する場合、日の沈んだ直後のブルーアワーに撮影することが多い。このブルーアワーの青の発色にもカメラメーカー各社様々な概念があるようで、α7R IVは少しマゼンタに振る傾向にあるようだ。
シャッター音は小さく、撮影を妨げない
旅の出会いは人だけではない、眠る猫にそっと近づきシャッターを切る。新設計のシャッターユニットは猫を驚かすことなく、撮影を続けることができた。
次の写真のような、記録として残しておきたくなるほど旨いらーめんの撮影でも、シャッター音が小さいため、あまりお店の迷惑にならずに撮影できる。
【まとめ】高画素なのに“普段使いできる”カメラ
今回、様々なシチュエーションでα7R IVの使い勝手を試してみたのだが、6100万画素だから特別気をつけなければならない、というような印象は受けなかった。
確かに最初のうちは、シャッターを切るときはなるべく“そっと”とか、超高画素機ゆえに少しのピントのずれも許されないと思い、AFの合焦を確認後に拡大してもう一度確認してからシャッターを切るなどしていたが、最後のほうはもう普段通りに使っていた。すなわち、α7R IVは“普段使いできる気軽なカメラ”と言えるのではないだろうか。
これは、ソニーの開発チームが手ブレ補正のチューニングに苦心し、シャッターユニットを新設計し、ピントの厳しくなる高画素機のAFの正確性を必死に向上させ、そのほか様々な問題をクリアしたからこそだろう。こうした様々なテクノロジーの進化の積み重ねにより、α7R IVは高精細かつ普段使いも可能なカメラになっている。言ってみれば通勤にも使えるスーパーカーのようなもので、これはスゴイことだと筆者は思う。
他方では、「普段使いするのであれば6100万画素は必要なのか?」という声もあるだろう。筆者個人としては、画素数はあるに越したことはないと思っているので、あればあったでありがたいと考えている。そして、これも筆者の個人的な見解だが、デジタルカメラは今後も画素数を増やし続けていくだろう。そのなかで、プロアマ関係なく我々フォトグラファーは、「自分の写真」を具現化するために今あるカメラをどう使うべきなのかを考えていきたいと思っている。
最後に、現地で撮影に協力してくださった皆様に感謝申し上げます。突然のお願いにもかかわらず快く撮影にご協力くださいまして誠にありがとうございました。またどこかでお会いできますこと楽しみにしております。