機材レポート

三脚界のニューカマーが打ち出す「現代の三脚」― 風景写真家・林 明輝氏監修のLeofoto日本国内限定モデルを徹底解剖

最近のカメラは画質、スピード、機能などさまざまな面で年々進化している。では、そのカメラを支える三脚はどうだろう。カメラやレンズに比べるとその性能について語られる機会は少ないが、なかには革新的な進化を遂げたモデルも存在する。今回、気鋭の三脚メーカー・Leofoto(レオフォト)から登場した「Leofoto LS-284CLin」もその1つだ。

 

本製品は風景写真家の林 明輝氏監修のもと、「風景写真に特化した、誰もつくらなかった三脚を世に出そう!」というコンセプトで日本国内向けに開発されたという。本稿では、このLS-284CLinの特徴について編集部で実際に試して検証。さらに、監修者である林 明輝氏がこの三脚を実際に使って実感した点などもうかがいつつ、本製品の魅力を探っていく。

Leofoto

LS-284CLin

希望小売価格/税別45,000円

10層構造の丈夫でたわみにくいカーボンパイプ使用の4段三脚。一方でパイプ径は最大で28mmに抑え、丈夫さと軽さのバランスをとっている。耐荷重は10㎏なので大口径望遠レンズ使用時なども安心だ。ベースとなったモデル同様、特徴的な“センターポールレス”構造を採用している。※雲台は別売

【SPEC】
●全伸長(延長ポール使用)/1820mm ●伸長/1495mm ●最低高/75mm ●収納高/535mm ●段数/4段 ●重量/1220g ●耐荷重量/10kg

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十分な高さ&剛性を確保しつつ持ち運びがラク! 価格にも驚き

まずは、Leofoto LS-284CLinの特徴についてチェックしていこう。

 

斜面でもアイレベルを確保できる十分な高さを確保

本製品の最大の特徴といえるのが、延長ポール式のセンターポールなしでも1495mmの伸長を確保している点(延長ポールを使用した際の全伸長は1820mm)。これは従来モデル+延長ポールと同等の高さだ。しかも、これは雲台の高さを含んでいないので、延長ポールなしでも十分にアイレベルの撮影が可能となっている。特に、従来モデルではかがんだり延長ポールを使ったりする必要のあった斜面や橋の上といった撮影シーンでも、アイレベルを確保しつつ安定した撮影が行える。

▲センターポールなしの状態でのLS-284CLin(写真左)の伸長は1495mmで、雲台とカメラを取り付けたときにほぼアイレベルとなる高さを確保。パイプ1本あたりの長さを長くすることで、従来モデルのLS-284C(写真右)の伸長1190mmに対し、305mmも高くなっている。

 

▲LS-284CLin(写真奥)と従来モデル(写真手前)。このように橋の上から撮影する場合、橋脚の高さにもよるが、高さがあるほうがより下方まで俯瞰することができる。

 

▲雪の斜面に従来モデル+延長ポール(写真左)とLS-284CLin(写真右)を並べて立てたところ。両者はほぼ同等の高さとなるが、利便性や望遠レンズなどの機材を使用した際の安定感を考えると、本体のみで多くシーンに対応できるLS-284CLinのメリットは大きい。

 

▲脚が長いため、各脚の長さを調整して勾配で使用してもアイレベルを保ちやすい(写真上)。さらに付属の延長ポールを使えば、かなりの急勾配でも安定した姿勢で撮影できる(写真下)。

 

センターポールレス構造で高い剛性と驚きの最低高を実現

前述のとおり、LS-284CLinのセンターポールは延長ポールタイプとなっており、基本的にはセンターポールレス構造となっている。そのため、全伸長を必要としない場合には、かなり高い剛性が得られてタワミやガタツキが少なく、快適に使用できる。一般的なセンターポール付き三脚であっても、安定性を重視する場合はセンターポールを伸ばさないのが鉄則。その意味でも、本製品のセンターポールレス構造は合理的といえる。しかも、雲台取り付け部がしっかりとして丈夫なので、重さのあるカメラやレンズを取り付けても安心感が高い。

▲センターポールレス構造のため、脚の長さを変えて高さの微調節を行うのが基本。ただし、そうした微調整が必要なケースはそれほど多くはない。むしろ、センターポールが無いことによる安定性の高さが勝る。

 

▲脚の付け根や開脚ストッパーは、アルミ削り出しのしっかりとした部材を使用。丈夫で精度が高く、操作もスムーズに行える。

 

センターポールレス構造の恩恵は最低高にも表れている。開脚角度を変えるだけで最低高70mmへ素早くセッティング可能なのだ。数字だけではピンとこないかもしれないが、次の写真をご覧いただければその低さがおわかりいただけるだろう。

▲脚の角度調整は3段階で最も開いた状態にすると最低高70mmまで下げることができる。

 

▲開脚ストッパーは、いったん開いた状態にすると中間の開脚位置で自動でロックされるセミオートロック機構を備える。

 

▲各パイプの接続部はナットロック式を採用。固定力が強く、荷重をかけても安定している。

 

軽量・コンパクトで持ち運びの負担が少ない

次に、1220gという本体質量の軽さも魅力だ。特に本格的な風景撮影を行う場合、荷物は1gでも軽いほうが移動の疲労も軽減できてメリットが大きい。本モデルのベースはLeofotoの「レンジャーシリーズ」と呼ばれる軽量三脚のLS-284Cだが、そのベースモデルよりも伸長で305mmも伸びていながら、質量は100g重くなったのみ。しかも、LS-284CLinとほぼ同じ高さとなる「従来モデル+センターポール(1255g)」の組み合わせと比べると35g軽いのだ。石突を付属のスパイクに変えれば、さらに40g軽量化することも可能。

▲軽いだけでなく、パイプ径を適度な太さに抑えたこと、センターポールレスであることなどから片手でも持ちやすい。収納高も535mmとコンパクトだ

 

▲石突は付属のスパイクにも交換でき、スパイク使用時には40gほど軽量化できる。

 

必要アクセサリーが付属して5万円を切る高いコストパフォーマンス

ここまで紹介してきたように細部まで考え、作り込まれている本製品だが、驚くべきはその圧倒的なコスパの高さだ。アルミ製に比べて高価な傾向のある軽量カーボン三脚、しかもセンターポールや交換式スパイク、カラビナフック、ツールセット、専用ケースなど基本的に必要なアクセサリーがすべて付属した状態で希望小売価格は税別45,000円。これでも十分に低価格なのだが、楽天の同社直販サイトをチェックしてみると、なんと税込で40,700円とさらにお買い得だ。

 

自由雲台とのセット販売(希望小売価格/税別66,000円)も用意されているので、こうしたセットを購入すればさらにお得かつほかのアクセサリーを追加購入せずに買ってすぐ使えるのはありがたい。

▲センターポールやツールキット、各種レンチ、スパイクのほか、雲台取り付け部の下に装着してカメラバッグなどをぶら下げてウエイトにできるカラビナなどが付属(写真上)。付属品の収納部も備えたジャストサイズな専用ケースも同梱される(写真下)。

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風景写真家・林 明輝氏に実際の使用感を聞いてみた

LS-284CLinは風景写真家の林 明輝氏が監修しており、林氏が撮影に出かけるときは、いつもこの三脚を使用しているという。そこで、氏にこの三脚を使用して撮影した作品と合わせて、実際に使用しての感想や製品の魅力などについてうかがった。

【Profile】

林 明輝(りん めいき)

最先端の技術を駆使し、デジタルカメラの撮影から、RAW 現像、プリントまでのノウハウを伝授するプロフェッショナルとして知られる。現在、長野県小谷村の風土を中心に撮影を続けている。Leofotoブランドアンバサダー。日本写真家協会会員。東京都写真美術館収蔵作家。Twitter/@linmeiki、Instagram/lin_meiki.official

 

【作品1】

「上の写真の虻が島は、氷見市灘浦海岸から1.8km沖合にある富山県最大の島。厳冬期、彼方の立山連峰からの日の出が見える光景は、年に数えるほどしかありません。けあらしがわき始めた矢先に、一艘の船がフレーミングに入ってきました。人工物を入れようと思わない撮影が多いのですが、このときばかりは船を画面下方に配置することで、この場所の臨場感が表現できました。

風景撮影では望遠ズームを使用する際、ブレ防止のためにレリーズを使うのが基本ですが、刻々と光が変化する瞬間ではレリーズ操作がいちいち面倒で、夢中でカメラ本体のシャッターを直接手で押すことも多くなってしまいます。その際、LS-284CLinでは望遠レンズを使用しても安定してブレない撮影が行えます。この安定感は、三脚の剛性からくる安心感とともに撮影時の集中力を保つ原動力となっています。」(林 明輝氏)

 

【作品2】

「この写真では、やっと濃い霧が晴れてきた朝、野々海池(ののみいけ)の対岸にカモの群れが列をなして泳ぐ姿が目に留まりました。豪雪の名残で池のほとりにはあちらこちらに残雪が見られました。

池のほとりでの三脚撮影でしたが、結構前のめりの傾斜がきついロケーション。従来のLS-284Cでは、傾斜がきつくなればなるほど三脚を真っすぐ立てようとすると全高が低くなり、延長ポールを使用すると安定感が半減します。加えて、持ち運びの際には延長ポール分の150gほど荷物が重くなっていました。その点、LS-284CLinなら本体のみで従来モデル+延長ポールと同等の高さで、結果として35g軽くなり、安定感もベターだと感じています。」(林 明輝氏)

 

日常使いから本格撮影まで使えるコスパの高い1本

今回、LS-284CLinを実際に使用してみたが、さすがに風景写真家の林 明輝氏が監修したというだけあって、いかに速く確実に設置して撮影できるか、どうすれば1gでも軽くして快適に持ち運べるかを追求したモデルになっていると感じた。こうした点は、一瞬の光の変化を捉えたい風景撮影はもちろん、スポーツ撮影やポートレート撮影など、三脚を使用するほかの被写体にも共通するポイントであり、確実に利点になると感じた。

 

特にセンターポールを使わず、脚をフルに伸ばした状態でほぼアイレベルになるのは速写性の面で快適であり、丈夫さや堅牢性が優先されているので安心感も高い。しかも、コスパ面でも優れているので、日常使いから本格撮影まで使え、多くのユーザーにとって1本持っていて損のない三脚といえるだろう。

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