中村文夫の古レンズ温故知新「MINOLTA W.ROKKOR-QE 35mm F4」
MINOLTA W.ROKKOR-QE (ミノルタ Wロッコール QE) 35mm F4
発売は1960年ごろ。レンズ構成は4群5枚で、重量はわずか210g。前玉が鏡筒の奥まった位置にあるデザインなので逆光にも強い。絞りはプリセット式で、絞り環にノブが付いているのでとても使いやすい。
運良く出会えたら、迷わず確保すべし! 高度経済成長期の普及レンズ
現在のデジタルカメラ用単焦点レンズのラインナップは、F2を切るような大口径レンズが中心である。これは開放F値の暗い常用ズームとの差別化を図るべく、各メーカーが高級レンズに特化した結果と言えるだろう。だが1970年代にズームレンズが普及するまで、使用目的や予算に合わせてユーザーが自由に選べるよう、同じ焦点距離でも開放F値が異なる製品を用意するのがフツウだった。
庶民の味方、普及クラスの広角レンズ
「W.ROKKOR-QE 35mm F4」は、こんな時代に登場した普及クラスの広角レンズだ。当時の定価は9,500円で、同時期に発売されていた「AUTO W.ROKKOR-HG (オートWロッコールHG) 35mm F2.8」より15,900円も安い!! 高度経済成長期のさなかとはいえ、この時代の普及レンズはとにかく庶民の味方だった。
安さの理由は?
安さの理由は暗い開放F値に加え、レンズ構成の簡略化や長めの最短撮影距離、絞り羽根枚数の削減、プリセット絞りを採用したことにある。随所でコストダウンが図られているが、無理にF値を明るくしないことで大口径レンズにありがちな収差を低減したほか、シンプルなレンズ構成がゴーストを抑制。さらに、レンズのコンパクト化も図れるなど多くのメリットをもたらした。
現在、このような普及クラスの中古品は人気がないのでジャンク扱い。恐らく1,000円でお釣りがくるはずだ※。
※執筆時点 (2019年11月) での予想価格です。中古レンズの価格相場は変動します。
周辺光量落ちが良いアクセントに
不思議な形をしたタイルが敷き詰められたカフェのエントランスを撮影。絞り開放だと周辺光量不足が目立つが、これがレトロな雰囲気を強調する良いアクセントになった。
〈文・写真〉中村文夫