機材レポート

この焦点距離には理由がある! 質感描写に優れた“三代目”120mm「SMC PENTAX-M 120mm F2.8」

中村文夫の古レンズ温故知新「SMC PENTAX-M 120mm F2.8」

SMC PENTAX-M 120mm F2.8

SMC PENTAX-M 120mm F2.8
レンズはKマウントなので、「PENTAX K-1」をはじめ現行のデジタルカメラにアダプターなしで装着可能。Mモードでグリーンボタンを押せば露出も測れる。

 

なぜ120mmなのか?

ペンタックスは他メーカーにない変わった焦点距離のレンズをラインアップしていることで有名だ。なかでも120mmと150mmは、すでに135mmレンズがあったにも関わらず登場した製品で、135mmとの画角差はほんのわずか。果たしてこんなに細かく焦点距離を刻む必要があるのかと疑問に思う人も多いかも知れないが、れっきとした理由がある。

120mmの根拠は手ブレ防止。レンズの焦点距離と手ブレの相関関係を調べたところ、像倍率が標準レンズの2.5倍、つまり35mm判では焦点距離を120mm以下に抑えれば手ブレが減るというデータが得られたのだという。ちなみに150mmは標準レンズの3倍が使いやすいという考え方に基づいている。

既成概念に囚われず一眼レフの優位性を生かす

35mm判カメラ用望遠レンズの定番は135mmだが、これはライカの距離計の測距精度の限界から決められたもの。写真を撮るうえで決して使いやすい焦点距離ではない。既成概念に囚われず、一眼レフの優位性をフルに生かすという意味で、日本で初めて一眼レフの国産化を達成したペンタックスの自信の証と言えるだろう。

 

SMC PENTAX-M 120mm F2.8
初代の120mmは、1972年発売の「SMC Takumar (タクマー) 120mm F2.8」。二代目はこれをKマウント化した製品で、今回紹介するレンズは1977年に登場した三代目。設計変更によりコンパクト化を図っている。

 

バランス良く、特に質感描写が見事

対角線画角は20.5°。135mmとの差は2.5°しかないが、望遠効果と遠近感のバランスが良く、とても使いやすい。特に質感描写に優れ、緩やかにカーブした黒一色の煙室ドアの曲面が見事に再現された。

SMC PENTAX-M 120mm F2.8作例(撮影:中村文夫)
PENTAX K-1 F4 1/160 秒 ISO400 AWB

 

 

〈文・写真〉中村文夫