機材レポート

とことん“寄れる”コンパクトで高品質な標準ズーム「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO」実写レビュー

M.ZUIKO PROレンズの10本目となるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO。これまで高解像・高性能を重視したプロ仕様の高性能レンズとして作られてきたM.ZUIKO PROレンズだが、高いスペックを求めるあまり、小型ボディとのバランスがイマイチで敬遠するユーザーもあったと思う。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROはズーム倍率と開放F値を控えめにすることでコンパクトサイズを実現し、どのマイクロフォーサーズのボディにもマッチする。その実力をOM-D E-M5 Mark IIIとともにフィールドでチェックした。

 

絞り開放からシャープで解像感の高い描写

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO は、35mm判換算で24mm相当から90mm相当までをカバーする標準ズームレンズ。レンズ構成は9群12枚で、HR(高屈折率)レンズ2枚、スーパーHR(超高屈折率)レンズ1枚、DSA(大偏肉両面非球面)レンズ1枚を組み合わせ、諸収差の補正を図りつつ、全長を短くすることに成功している。また、2枚のEDレンズにより色収差を抑え、非球面レンズを2枚使うことで、歪曲収差や球面収差などを低減。さらにZEROコーティングを各所に施すことで、ゴースト・フレアの発生を軽減している。

 

フィールドでの実写から感じることだが、絞り開放からシャープな写りで画面周辺部まで均一な高画質を実現している。ディストーション(歪曲収差)はワイド側でタル型、テレ側で糸巻き型の歪曲が若干認められるが、自動補正によりほとんど分からなくなる。逆光での撮影でもフレアの発生は感じられず、ゴーストも小さく抑えられ、朝日や夕日も安心して撮影できる。

 

ズームリングの動きは滑らかで快適。フォーカスリングも動きはスムーズ。他のM.ZUIKO PROレンズが持つ「マニュアルフォーカスクラッチ機構」は省略されているが、カメラのAF設定を「S-AF+MF」や「C-AF+MF」などにセットすることで、AF撮影時にもダイレクトにMF操作ができ、不便に感じることはなかった。

 

これまで「大きくて重い」とM.ZUIKO PROレンズを敬遠してきた人にこそオススメしたいこのレンズ。希望小売価格は85,000円(税別)と手頃で、OM-D E-M5シリーズやE-M10シリーズ、あるいはPENシリーズのようにコンパクトなボディのカメラとの相性は抜群だ。なお、OM-D E-M5 Mark IIIには12-45mm F4.0 PROレンズキットが用意されている。

▲M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROは、35mm判換算で24-90mm相当の焦点域をカバーする標準ズームレンズ。M.ZUIKO PROレンズとしての高い光学性能、防塵・防滴・耐低温性能を持ちつつ、最大径63.4mm、長さ70mm、重さ254gという小型軽量を実現。フィルター径も58mmとPROレンズとしては最も小さい。

 

動きのある被写体も素早くキャッチ


広角から中望遠までカバーする携帯性の高いこのレンズは、スナップ撮影に最適。フォーカシングスピードも速く、フットワークよく被写体に臨める。田植えを終えたばかりの田んぼの脇を走る電車を、水面に映る姿とともに標準域の23mm(35mm判換算で46mm)で撮影した。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F8 1/1250秒 −0.3補正 ISO400 WB:オート

 

ワイド端とテレ端のディストーション

■12mm(24mm相当)

ズームのワイド端、12mm(35mm判換算で24mm相当)では、わずかにタル型のディストーション(歪曲収差)が認められるが、よく補正されている。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F5.6 1/640秒 −0.3補正 ISO200 WB:オート

 

■45mm(90mm相当)

ズームのテレ端、45mm(35mm判換算で90mm相当)では、ディストーション(歪曲収差)はほぼ見られない。周辺部まで歪みはなくカッチリと写る。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F5.6 1/800秒 −0.3補正 ISO200 WB:オート

 

歪みのない描写でフレーミングがしっかり決まる


散策中に見つけた大正時代の古い建物。画面が直線で構成され、水平垂直に留意して撮りたいシーンだ。焦点距離は12mm(35mm判換算で24mm相当)を選択。ディストーション(歪曲収差)がほとんどないので、フレーミングが気持ちよく決まる。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F8 1/640秒 −0.7補正 ISO200 WB:オート

 

暗いシーンでも素直な描写を見せる


古い木造家屋を見学した際、奥の庭から差し込む光と画面右側にある和モダンの行灯とのコンビネーションを狙って撮影した。輝度差が大きいため庭はとびぎみに、手前の屋内はつぶれぎみとなったが、雰囲気のある写真となった。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F8 1/60秒 −1補正 ISO640 WB:オート

 

緻密な描写と素直なボケが美しい


ネムノキの花を真上から撮れるポイントを見つけ、ズームのテレ端、45mm(35mm判換算で90mm相当)で撮影。適度な被写界深度が得られ、花だけでなく、特徴のある小さな葉の連なりも鮮明に撮ることができた。背景のボケが素直である点もよい。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F5.6 1/250秒 ISO200 WB:オート

 

被写体にグッと迫りワイドマクロ表現を狙う


石積みの間から生えるヒメジョオンの花を最短撮影距離で捉えつつ、高い石垣を見上げるように撮影した。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROはワイド撮影時にレンズ先端から30mmまで寄れるため、接近しすぎてピントが合わない、ということはまずない。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F5.6 1/800秒 ISO200 WB:オート

 

ワイド端の広い画角で車窓撮影も捗る


35mm判換算で24mm相当という広い画角により、汽車旅の車窓スナップも捗る。レンズに手ブレ補正機能は搭載されていないが、OM-DやPENのカメラ内手ブレ補正機能により、走行中にスローシャッターを使っても窓枠がぶれることはない。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO シャッター優先オート 1/40秒 F16 ISO200 WB:オート

 

小型のOM-DやPENシリーズのボディにぴったり


小型軽量のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROは組み合わせるカメラボディを選ばない。OM-D E-M5 Mark III(写真右)やE-M10 Mark IIIなどの小型のOM-Dはもちろん、レンズ径が小さいことから、PENシリーズにもしっくりくる。古い機種しか手元になかったのでPEN E-P3(写真左)に装着したが、バランスはよい。

 

撮り比べてわかった2本のM.ZUIKO PRO標準ズームレンズの違い

オリンパスのM.ZUIKO PROレンズには、2020年3月発売のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROと2013年11月に発売されたM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROの2本の標準ズームレンズがある。カバーする焦点域はほぼ同じだが、開放F値が1段異なり、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROが一回り大きく、約1.5倍重い。この差は大きい。

 

近接撮影能力についても2本のレンズには違いがある。最大撮影倍率はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROが0.6倍相当(35mm判換算)とより高く、少しでも被写体を大きく撮りたい場合には有利。ただし、この0.6倍相当はテレ端の値で、ワイド側へズームすると最大撮影倍率は低下する。

 

これに対して、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの近接撮影性能で特徴的なのが、ズーム全域で最大撮影倍率が0.5倍相当(35mm判換算値)であるという点。これは画角の異なるズームのワイド端とテレ端の最短撮影距離で捉えた被写体が同じ大きさに写るということを意味する。このあと紹介する比較写真を見てもらえばわかりやすいが、ズームの両端でペンタスの花を撮り比べてみると、ワイド端(12mm)とテレ端(45mm)では背景の写り方が異なるものの、花房はほぼ同じ大きさに写る。なお、ワイド端の12mm(24mm相当)時のワーキングディスタンスは約30mmとなり、レンズ先端が被写体に触れそうになるので撮影には注意が必要だ。

▲左は新製品のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO、右はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO。カバーする焦点域はほぼ同じだが、開放F値が1段異なり、サイズ・重さが大きく異なる。

 

<M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO>ズーム全域で最大撮影倍率0.5倍を実現したハーフマクロレンズ


最短撮影距離はワイド端の12mm(24mm相当)で約120mmと短く、ワーキングディスタンも約30mmと被写体に接触しそうなほど近くまでピントが合う。広角域で被写体に寄るときはフードが邪魔になるので外したほうがよい。中間の25mm(50mm相当)で最短撮影距離は実測約140mm。ワーキングディスクタンスは48mmほどになる。テレ端の45mm(90mm相当)では約230mmと長くなり、ワーキングディスタンスも約120mmとなる。

 

■12mm(24mm相当)

ペンタスの花に最短撮影距離のまで近づいて撮影。半球状の花房を画面いっぱいに捉えつつ、背景を広く入れたワイドマクロ撮影が可能だ。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F4 1/1000秒 +0.3補正 ISO400 WB:オート

 

■45mm(90mm相当)

テレ端では最短撮影距離が長くなるが、最大撮影倍率は0.5倍相当と変わらず、ペンタスの花は12mm時とほぼ同じサイズに写る。

オリンパスOM-D E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 絞り優先オート F4 1/1250秒 +0.3補正 ISO400 WB:オート

 

<M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO>テレ端の最大撮影倍率は0.6倍でより大きく撮れる

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROはズームがテレ寄りになるほど最大撮影倍率が高くなるタイプで、テレ端の最大撮影倍率は0.6倍相当(35mm判換算)となり、ハーフマクロを越える拡大撮影が可能。最短撮影距離はズーム全域で約200mmと変わらないので、カメラを三脚などに固定してズーミング操作で被写体の写る大きさを調節する、というような使い方ができる。ズームするとレンズが繰り出されるため、ワーキングディスタンスはワイド端で約90mm、テレ端で約70mmと変化する。


最短撮影距離はズーム全域で約200mm。ワーキングディスタンはワイド端の12mm(24mm相当)で約90mm、テレ端の40mm(80mm相当)では約70mmと短くなり、撮影倍率が0.6倍相当と最大になる。

 

■12mm(24mm相当)

画面中央下寄りのペンタスの花に最短撮影距離まで近づいて撮影。クローズアップ効果は弱くなるが、背景を広く入れた表現ができる。

オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO 絞り優先オート F2.8 1/1000秒 +0.3補正 ISO200 WB:オート

 

■40mm(80mm相当)

テレ端の最大撮影倍率は0.6倍相当となり、強力なクローズアップ効果が得られる。また、開放F値がF2.8と明るく、背景を大きくぼかすことができる。

オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO 絞り優先オート F2.8 1/1600秒 +0.3補正 ISO200 WB:オート

 

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの主な仕様

●マウント/マイクロフォーサーズ
●焦点距離/12-45mm(35mm判換算 24-90mm相当)
●レンズ構成/9群12枚(HRレンズ2枚、スーパーHRレンズ1枚、DSAレンズ1枚、非球面レンズ2枚、EDレンズ2枚)
●絞り羽根枚数/7枚(円形絞り)
●画角/84°(W)~27°(T)
●絞り/F4.0~F22
●最短撮影距離/0.12m(W)、0.23m(T)
●最大撮影倍率/0.25倍(35mm判換算 0.5倍相当)
●フィルター径/φ58mm
●サイズ(最大径×長さ)/φ63.4×70.0mm
●質量/254g
●付属品/レンズフードLH-61G、ラッピングクロスCS-53 ほか