中村文夫の古レンズ温故知新「SMC PENTAX 30mm F2.8」
SMC PENTAX 30mm F2.8
マウントはペンタックスKマウント。「PENTAX K-1」をはじめ、ペンタックス製デジタル一眼レフにアダプターなしで装着可能。マウントアダプターを用意すれば、ミラーレス機でも撮影が楽しめる。
28mmがあるのに30mmを発売したのはなぜ?
このレンズは、以前紹介した「SMC PENTAX-M 120mm F2.8」と対を成す「ペンタックスのヘンな焦点距離シリーズ」の広角レンズだ。28mmと2mmしか焦点距離が変わらないレンズを、わざわざ発売したのは「120÷4=30」だから。
詳しく説明すると、このレンズが発売された1976年当時、8mmムービーカメラではズーム比4倍のレンズが付いた製品が人気を博していて、120mmと組み合わせて使うには30mmがベストという結論にたどり着いたのだ。つまり、このレンズは120mmと組み合わせて使うことを前提に誕生したわけ。ぜひ2本揃えて持ちたいレンズと言えるだろう。
ちょっと玄人好みの広角レンズ
28mmとの対角線画角の差はわずか3°だが、望遠と違って広角側の3°がもたらすパースペクティブの違いは意外と大きい。そのため28mmでは広角らしさが鼻に付くし、かといって35mmだと画角が狭すぎるといった条件にぴったり。さりげない広角表現が持ち味の広角レンズだ。
遠近感が誇張されすぎず、さりげない広角表現
対角線画角は72°。手前に線路を入れて広角っぽさを狙ってみたが、遠近感がそれほど誇張されないので標準レンズで撮ったようにも見える。ディストーションがほぼ完璧に補正されている点は立派。
〈文・写真〉中村文夫