実写作例チェック
■RF24-70mm F2.8 L IS USM
画面全体の解像力がピークになるF8.0を選択した。画面手前のグリーンの細部から、ややモヤがかかった背景までしっかりと解像している。
■EF24-70mm F2.8L II USM
広角端の24mmで画面全体の解像力のピークであるF8.0まで絞って撮影。画面手前の緑、画面奥左手にある山並みの木々の葉までしっかり解像している。
■RF24-70mm F2.8 L IS USM
長秒露光の星景写真の仕上がりをテスト。当然、しっかりと描写する。驚くべきポイントは、細部を確認してもほとんどコマ収差が発生していない。
■EF24-70mm F2.8L II USM
WEBへの掲載サイズでは「RF24-70mm F2.8 L IS USM」との違いはほとんど感じられないだろう。しかし、端画面の周辺部に写った星ではコマ収差が発生している。実際に撮影してみて発見したのだが、星景写真を撮影すると画面の四隅で発生するコマ収差が「EF24-70mm F2.8L II USM」では観察されるのだが、「RF24-70mm F2.8 L IS USM」ではほぼ観察されなかったことも報告しておく。
■RF24-70mm F2.8 L IS USM
水平線上に上ってくる朝日を撮影。逆光の影響を感じさせない高いコントラストで赤く染まる水面やシルエットになる防波堤をしっかり描写している。
■EF24-70mm F2.8L II USM
「RF24-70mm F2.8 L IS USM」の描写と比較しなければ、ズームレンズとは思えないレベルだ。当然逆光条件だが水面の波の様子などをしっかり解像している。
【まとめ】どちらのレンズも素直な描写のレンズだと感じるハイクオリティ
ある意味「RF24-70mm F2.8 L IS USM」はパーフェクト
解像力実写チャートにぼけディスクチャート、周辺光量落ちチャートなど画質性能はもちろん、操作性などを加味しても買うなら「RF24-70mm F2.8 L IS USM」がオススメである。
「EF24-70mm F2.8L II USM」も非常によくできた大口径ズームレンズなのだが、やはり約7年の技術の進化、キヤノンの新マウントRFを代表するF2.8通しの標準レンズとして開発された「RF24-70mm F2.8 L IS USM」にあらゆる面で及ばない印象は避けられない。ミラーレスカメラに最適化して、先代を越える正統な後継レンズが「RF24-70mm F2.8 L IS USM」といえるだろう。
細部の画質の差以外でわかりやすい部分は、F2.8通しの大口径ながら搭載されたISの安心感。星景写真を撮影していて気付いた「EF24-70mm F2.8L II USM」よりもコマ収差が少ない点。実際の撮影では、逆光条件で「RF24-70mm F2.8 L IS USM」のほうがわずかに暗部の締まりがよく、高コントラストに感じたところなどが挙げられる。逆光に関してはレンズコーティングの進歩も大きい。「RF24-70mm F2.8 L IS USM」では、レンズ表面の蒸着膜の上に、二酸化ケイ素と空気を含んだ膜を形成し、ゴーストやフレアの影響を軽減する最新のASC (Air Sphere Coating) の効果だと推察される。
さらに近接撮影で、「RF24-70mm F2.8 L IS USM」は最大撮影倍率が0.3倍とクオーターマクロを越える性能を示す。 はっきり言って「EF24-70mm F2.8L II USM」も高性能でよいレンズなのだが、「RF24-70mm F2.8 L IS USM」と比較すると見劣りしてしまうのが、可哀想なくらいである。
もしかすると、そんなパーフェクトな標準ズームレンズである「RF24-70mm F2.8 L IS USM」の唯一の弱点は、価格かもしれない。284,000円前後 (実勢価格) はかなりインパクトのある価格だ。一眼レフ時代の比較的高価な標準ズームといえる「EF24-70mm F2.8L II USM」が194,000円前後 (実勢価格) なわけだから、約1.5倍の価格差がある。レンズだけで約30万円というのは、さすがに高い。
しかし、このハイエンドクラスのレンズの購入を検討するみなさんならわかってくれると思うが、レンズは価格が倍になると性能も倍になるという正比例的な性質の製品ではない。そのため、「周辺光量落ち」の結果に差を感じない以外、ほぼすべてで目にわかるほど「EF24-70mm F2.8L II USM」の性能を凌駕する「RF24-70mm F2.8 L IS USM」はハイエンドクラスでの性能アップぶりに対してコストパフォーマンスが高いともいえるだろう。また、最新の高性能純正標準ズームレンズを所有し、使用する優越感と安心感込みの価格と考えると、納得もいく高性能なレンズである。
いつが買い時か?
筆者が悩むのは、いつが買い時なのか? という点だ。多くの方がご存じだと思うが、EFレンズは純正のマウントアダプターを使ってRFマウントのカメラボディに装着可能である。逆にRFレンズをEFマウントのカメラボディで使うことは基本的にできない。「EOS R5」や「EOS R6」が登場したいま、デジタル一眼レフには見切りを付けて、キヤノンRFマウントボディでカメラシステムを統一するという方は、素直に「RF24-70mm F2.8 L IS USM」を買えばよいだろう。
一方、「EOS-1D」系のボディは1台残しておきたいとか、サブボディは「EOS 6D Mark II」でといったユーザーも多いのではないだろうか。そういったユーザーにとっては、マウントアダプターでミラーレス一眼のEOS Rシステムでも、一眼レフのEOSシステムでも使える「EF24-70mm F2.8L II USM」は、若干光学性能で劣っているとしても魅力的な標準ズームになってくるのである。
さらに言えば、EFマウントレンズにしておけば、複数のメーカーのミラーレス一眼カメラで、マウントアダプターを使って、AFなどの駆動まで可能な状況にあることだ。EF→RFは純正で存在し、EF→ソニーE、ライカL、ニコンZ、富士フイルムX、マイクロフォーサーズマウント用の電子マウントアダプターなどが各社から発売されている。
将来的には、「RF24-70mm F2.8 L IS USM」と考えていても、現状では一眼レフとミラーレス一眼がカメラシステムに混在し、さらに複数のメーカーのミラーレス一眼ボディを所有している筆者のようなユーザーには、「EF24-70mm F2.8L II USM」が魅力的に見える部分は多いのである。今のところ、高性能で比較的リーズナブルなEFレンズは汎用性という意味で、多くのユーザーにとって魅力的なレンズといえる。
最新の光学設計で、そつのない高性能ぶりを発揮する「RF24-70mm F2.8 L IS USM」。一方、コストパフォーマンスのよい「EF24-70mm F2.8L II USM」は、マウントアダプターの併用などで、使い方によっては高性能で便利な常用レンズになるだろう。性能の優劣だけでなく、自分にとっていつが買い時なのかを冷静に判断して購入するのが重要といえる。
監修 : 小山壯二
チャートレイアウトデザイン : 海藤朋子