伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2020年12月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、キヤノンRFマウント用の新型超望遠レンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」「RF600mm F11 IS STM」「RF800mm F11 IS STM」の3本をピックアップ。使用頻度の高い焦点域をカバーしさまざまな撮影分野で重宝する注目のズームレンズと、絞りを固定にすることで、超小型化を実現した2本の超望遠単焦点レンズのアナザーカットを紹介しよう。
キヤノン RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
スペック
[大きさ] 最大径93.8×全長207.6mm [重さ] 約1370g [レンズ構成] 14群20枚 [最短撮影距離] 0.9m (100mm時) [最大撮影倍率] 0.33倍 (500mm時) [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] 77mm参考価格 約368,500円 (税込)
周辺部まで色ズレの目立たないスッキとした描写
羽田イノベーションシティの展望台から。空港にかかっている虹と離陸するヒコーキがちょうどいいバランスになる瞬間を狙う。陽炎の影響で本来の解像は得られていないが、ピクチャースタイルで彩度を強調しても、周辺の色ズレは目立たず、スッキリとした描写が得られている。
画面周辺の小さな機体も乱れがなくシャープ
同じく羽田イノベーションシティの展望台から、巨大な積乱雲と着陸機を狙う。やはり陽炎で本来の解像は得られていないが、画面周辺に小さく捉えた飛行機が、絞り開放でもこんなに高コントラストで、像の乱れも少ないのは見事だ。
光源にフリンジはほとんど見られず機体も非常にシャープ
羽田空港第1ターミナルの展望デッキから第3ターミナルを狙う。テレ端500mmの手持ち撮影ながら、協調制御ISの効果は絶大で1/50秒程度のシャッタースピードなら手ブレの心配はなし。F8と1/3段だけ絞っているが、光源周りのフリンジもほとんどなく、駐機している機体も驚くほどシャープな写りだ。
ゴーストやフレアもなく、暗い状況でもきっちりAFが作動
伊丹空港近くの千里川の土手から着陸機の真正面を狙ってみた。すでに日は暮れ、肉眼では前照灯しか見えないほどの暗さだが、テレ端500ミリでも機首にしっかりピントが合っていて、強烈な前照灯にもかかわらず、フレアやゴーストも出ていない。開放F7.1という暗さを感じさせないレンズだ。
シャープながらボケは穏やかで口径食もあまり目立たない
掛川花鳥園のオニオオハシ。画角の狭さを生かして背景を選ぶことで、主被写体をシンプルに強調できるのが超望遠ズームの便利な点。ピント面の解像は絞り開放から素晴らしく、目の反射にパープルフリンジも生じていない。背景のボケも穏やかで、口径食もそれほど目立たない。
近接撮影時もにじみがなく細部までクリアーな描写
最短撮影距離はワイド端で0.9m、テレ端で1.2mと、焦点距離によって変化するが、超望遠ズームとしてはかなり寄れるのが特徴。このカットは500mmの最短撮影距離付近で撮影しているが、2つのナノUSMによる電子フローティングフォーカス制御で、近接撮影時でもニジミがなく、クリアな解像が得られている。
エクステンダーによる画像低下が見られない
多摩動物公園のムフロンを檻越しに撮影。「エクステンダー RF1.4×」を装着して700mm相当の絞り開放撮影だが、カリッカリの描写で、エクステンダー使用による解像やコントラストの低下はほとんど感じられない。ただ、ズームリングが300mm以上でないとエクステンダーを装着できないのはちょっと不便。
R5の動物瞳AFが働き飛翔するアオサギを捉え続ける
飛翔するアオサギを700mmで撮影。この画角で的確に追い写しする力量はないので、照準器を付けて両眼視撮影をしているが、「EOS R5」の動物瞳AFでアオサギの頭にしっかりピントが合っているのは驚き。フォーカス駆動のスピードも高速で、ピントを外してからのリカバーも速い。
エクステンダーを使っていることを感じさせない描写
望遠レンズの圧縮効果を利用して、コスモスの密集感を演出。前ボケと後ボケで主要被写体を挟み込むことで、奥行き感も出せる。これも「エクステンダー RF1.4×」を装着し、テレ端の700mm域での撮影だが、エクステンダー使用を感じさせない解像とコントラストで、花のシベや細いクモの糸までくっきり再現されている。
2×エクステンダーもキレがよい
伊丹空港近くの千里川の土手から離陸機を狙う。夕空が機体に反射し、メタリックな質感が増して見える。「エクステンダー RF2×」装着時は400~1000mm域の撮影が可能。これはズーム中域の600mmだが、空気の揺らぎが落ち着いたこともあり、2倍テレコンを使用しているとは思えないほどキレの良い描写が得られている。
クロップした画像でもカワセミの毛並みはシャープ
カワセミに5~7mまで近づいて撮影できれば理想だが、撮影距離が10~15mという場合が多い。この写真も中州の茂みに留まっていて、「エクステンダー RF2×」を装着して1000mmでも足りず、APS-Cクロップして1600mm相当で撮影しているが、カワセミの羽毛もちゃんと解像できている。
キヤノン RF600mm F11 IS STM
スペック
[大きさ] 最大径93×全長269.5mm [重さ] 約930g [レンズ構成] 7群10枚 [最短撮影距離] 4.5m [最大撮影倍率] 0.14倍 [絞り羽根] なし [フィルター径] 82mm参考価格 約96,800円 (税込)
10万円を切るとは思えない高い描写性能
松本零士氏デザインの遊覧船エメラルダス。丸みを帯びた独特のフォルムを超望遠の圧縮効果で強調してみた。絞り機構はなく、F11固定のレンズなので、被写界深度のコントロールはできないが、太陽を入れた撮影以外は絞りが必要と感じるケースはないだろう。実売10万円を切る超望遠レンズとは思えないほど、キレの良い解像だ。
DOレンズのおかげで色にじみがなく毛並みがシャープに
多摩動物公園のチーター。強力な色消し効果を持つDOレンズを採用しているだけあって、ピント面はもちろんボケの輪郭も色にじみは感じられない。チーターの顔の細かな毛並みまで驚くほど鮮明に再現されている。ズームできない不便さはあるが、600mmの超望遠で1Kgを切る軽さは魅力だ。
画面周辺部でも満足のいく高い解像力
多摩動物公園の水浴びするペリカン。開放F11なので、AFエリアが横約40%、縦約60%と狭くなり、目に対してはAFエリアから外れているのでちょっとだけ後ピン気味 (と軽微な被写体ブレ)。とはいえピクセル等倍チェックしなければ気にならないレベル。画面周辺エリアでこれだけの解像が得られれば大満足だ。
軸上色収差もよく補正され、逆光にも強い
DOレンズは、強い点光源周りにニジミが発生しやすいが、逆光に光るススキ程度ではハイライトにまったくニジミはなし。軸上色収差もよく補正されていて、パープルフリンジも生じていない。ただ、レンズに日光が直射するケースではフレアっぽくなるケースも見受けられたので、できれば別売のフードを装着して撮影したほうが無難だ。
キヤノン RF800mm F11 IS STM
スペック
[大きさ] 最大径101.6×全長351.8mm [重さ] 約1260g [レンズ構成] 8群11枚 [最短撮影距離] 6.0m [最大撮影倍率] 0.14倍 [絞り羽根] なし [フィルター径] 95mm参考価格 約124,300円 (税込)
12万円前後の800mmレンズとは思えない描写
伊丹スカイパークから。飛行機までの距離が短く、空気の揺らぎの影響も少ない状況であれば、実売12万円前後とお手ごろ価格の800mmレンズながら、色にじみや色ズレもなく、クリアでスッキリとした解像が得られるのが特徴だ。
非常に強い光源に対してはDOレンズ特有のフレアが
飛行機の前照灯や金属に太陽が鏡面反射している部分など、非常に強い点光源周りにDOレンズ特有のフレアが生じることがある。特に点光源が露出オーバー気味になっていると、ハロのようなフレアが目立ちやすくなる。RF600mmやRF800mmに共通するウィークポイントだが、それ以外は解像も良く、手ブレ補正の効きもいい。
はるか遠くの鉄塔も非常にシャープに捉えられる
自宅のベランダから夕暮れで浮かび上がった富士山を手持ち撮影。手前の塔は、昭和38年に開業したよみうりランドのスキージャンプ台で、現在はスキー場はなく、ジャンプ台の塔だけ残されている状態だが、塔の階段やフェンスまでくっきり解像できている。切り取り系の風景撮影にも威力絶大だ。
範囲は狭くなるが動物瞳AFも使用可能
多摩動物公園のオランウータンの子ども。普段は800mmで撮影することはないが、顔をドアップで撮影できるので、動物園という感じを極力排した撮影ができる。AFエリアは横約40%、縦約60%と狭くなるので、動物瞳AFで撮影するため、目がこの範囲に入るようにフレーミング。目に映る風景や睫毛もクッキリ解像できている。
羽の毛の一本一本まで鮮明に解像
被写体までの距離約5mと好条件で撮影できたカワセミ。ただ、画面いっぱいに撮影するには800mmでも足りなかったので、「EOS R5」の4500万画素という余裕のある画素数を生かし、APS-Cクロップで1280mm相当で撮影。まるで、剥製を撮影したみたいに、カワセミの細かな羽根の模様が鮮明に再現されている。
照準器を使って、流し撮りもなんとか可能
薄暮の時間帯に空港に着陸する飛行機を流し撮り。流し撮り用のISモード2は装備されていないので、連写するとファインダー像の連続性に欠ける。そこで、照準器を使って被写体を追ってみると、なんとか流し撮りも可能だった。飛行機の灯火に縦線が出ているのは、ワイヤーフェンスの影響だ。
開放F22でもAF撮影でき、描写も納得できるレベル
餌を探すコサギを1600mmで撮影。「エクステンダー RF2×」を装着するとF22と暗くなり、回折の影響で解像とコントラストも低下してくる領域だが、デジタルレンズオプティマイザの助けもあり、多少解像に甘さはあるが、1600mmの超望遠としてはニジミも少なく、水準以上の描写。こんな暗さでもAFで撮影できるのも驚きだ。
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