伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年3月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、超望遠ズームとしては小型軽量の「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」と「シグマ 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary」の2本をチェック。描写性能はもちろん、テレコンを装着した場合の画質、AF作動や手ブレ補正の効果を確かめた。
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
スペック
[大きさ] 最大径86.4×全長205.7mm [重さ] 約1120g (三脚座を除く) / 1325g (三脚座を含む) [レンズ構成] 15群21枚 [最短撮影距離] 1.3m [最大撮影倍率] 0.29倍 (400mm時) [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] 72mm参考価格 約158,400円 (税込)
圧迫感がないためか、鳥のほうから近づいてきてくれた
ズームテレ端400mmでツグミを撮影。換算800mmとはいえ、ツグミのような小さな鳥をここまでアップで写すには、それなりに撮影距離を詰める必要があるが、自分から追わずに川原にのんびり座っていれば、大口径超望遠レンズのような威圧感もないためか、鳥のほうから近づいてきてくれる。
AF駆動が速く、鳥認識でコサギの頭に追従
コサギの飛び立ちシーンを「E-M1X」の鳥認識AFで連写。さすがにすべてのカットがズバピンとはいかなかったが、レンズのAF駆動スピードは速く、鳥の頭部にピントを合わせようとするカットが多かった。コサギの白い羽根にパープルフリンジや色づきもないのは見事だ。
換算800mm相当で鳥の目にズバリピントが合う
飛んでいる鳥を換算800mmという狭い画角で捉え続けるのはかなりむずかしく、このカットも照準器を併用して両眼視して撮影 (詳しくは https://youtu.be/krLtxxxaqHY )。鳥認識AFの威力でカモメの目にビシッとピントが来ていて、絞り開放テレ端とは思えないシャープでクリアな描写だ。
大気も安定するとキレのある描写が得られる
城南島海浜公園から、アンバーに染まった夕空を反射してキラリと光るヒコーキを撮影。地表付近を超望遠撮影すると空気の揺らぎでメラメラになるが、日没近くで大気も安定してきたこともあり、換算800mmの超望遠撮影としてはキレの良い描写が得られている。
このクラスの超望遠レンズとしては水準以上の写り
竹芝客船ターミナルに向かう高速船。超望遠ならではの圧縮効果でお台場の観覧車がすぐ後ろに迫って見える。空気の揺らぎの影響で遠景はメラメラしているが、揺らぎの影響が少ない高速船は船体のハシゴや窓、文字までしっかりと解像していて、このクラスの超望遠ズームとしては水準以上の写りだ。
換算ハイライトのにじみもほとんどなく船体までクリアー
船体の文字や観測計器類など、ハイライトにわずかなニジミ感はあるものの、ピクセル等倍鑑賞しても細部までしっかり解像している。とても換算600mm弱の超望遠とは思えないほどの好描写だ。
手軽に取り回しが出来るのがこのレンズの強み
ご主人と一緒に浜辺をお散歩中のワンちゃんに夕陽が当たり、まるで映画やCMのワンシーンのようだったので、パッとズームして超望遠で切り取ってみた。カリカリにエッジだった解像ではないが、犬の毛並みやベストの布目まで安定した解像が得られている。
ハイライトににじみが出るが解像自体は安定
自宅近くを散歩中に撮影したヒヨドリ。新型コロナ禍で遠出ができなくても、超望遠ズームがあれば、身近な野鳥を撮影できる。1.4倍テレコンを併用すると、少しハイライトのニジミ感が強くなるが、それでも解像自体は安定していて、色収差もほとんど感じない。
■M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14 を装着して撮影
超ドアップだけに羽根の毛の細部までしっかりと解像
テレコンを外す余裕もなく、近づいてきたツグミを換算1600mm相当で撮影。画面からフレームアウトしてしまうほどのドアップだが、それだけに2倍テレコン併用でも羽根の細部までビシッと解像してくれている。ただ、開放F値がテレ端でF13まで落ちるので明るいシーンに限定される。
■M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20 を装着して撮影
2倍テレコン併用で月の表面をここまでアップに
2倍テレコンを併用し、換算1600mm相当の超望遠で月や太陽を写すと、これくらいの大きさに捉えられる。月や太陽だけでなく、地上の建物や山並みなどを絡めると、インパクトの強い撮影ができる。ただ、地表近くは大気の揺らぎが大きいので、よほどの好条件でないとメラメラになりやすい。
■M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20 を装着して撮影
シグマ 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
スペック
[大きさ] 最大径86.0×全長197.2mm (Lマウント) [重さ] 約1135g (Lマウント) [レンズ構成] 16群22枚 [最短撮影距離] 1.12m (100mm時) / 1.6m (400mm時) [最大撮影倍率] 0.24倍 (400mm時) [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] 67mm参考価格 約118,800円 (税込)
解像感は高いが微ボケに若干ザワつきが見られる
よこはま動物園ズーラシアのツキノワグマ。直射日光が当たっていることもあり、顔の毛並みはビシッと解像していて、光っている毛に偽色が浮くほど。後ボケになっている枯れ草を見ると少し縁取り感があり、これが微ボケになるとやや騒がしいボケになりやすい傾向がある。
開放F値が暗いぶん檻などはぼかしきれないことも
よこはま動物園ズーラシアのアムールヒョウ。開放F値は明るくはないので、絞り開放でも檻の存在をボカしきれない。ただ、檻の奥がもう少し明るく、相対的に檻の反射が少ないシーンであれば、絞り開放テレ側で撮影すれば、かなり檻を目立たなくできると思う。ISO5000と高感度の影響で毛並みの解像が少し鈍っているが、ヒョウの手前の目はかなりクッキリとした描写だ。
口径食はあるが大口径レンズほど目立たない
江ノ島サムエルコッキング苑のウインターチューリップ。背景に木漏れ日を入れて、口径食をチェック。多少の欠けはあるが、大口径望遠ズームに比べると口径食は目立たず、渦を巻いたような後ボケになっていない。ピント面の解像はしっかりしていて、花びらの細かな模様まで再現されている。
OSのモード2は流し撮りにきっちり対応
流し撮り用のOSモード2で撮影。誘導灯の軌跡を見ると、上下方向の揺れは少なく、ちゃんと流し撮りに最適化されているのがわかる。機体が完全に真横のタイミングではないので、機首と機尾では最適な回転角が異なり、多少微ブレしているが、機体の中央はほぼピタッと写し止めることができた。
機体の丸みの感じがよく再現されている
夕空が反射した機体にアンチコリジョンライトが赤く光った瞬間を狙ってみた。あまり感度を上げたくなかったのでシャッタースピードは1/10秒に抑え、牽引車の動きに合わせてカメラを微動させている。ピクセル等倍ではわずかに微ブレもわかるが、コントラストも高く、機体のぬめっとした丸みがよく再現されている。
逆光でもフレアが少なくキレのある描写性能
羽田空港第1ターミナル展望デッキから着陸機を撮影。日没近くでド逆光での撮影ながら、フレアは少なく、機体の細部までキレの良い描写が得られている。機体の反射が縦に滲んでいるのはワイヤーフェンスの影響。フィルター径は67mmと小径なので、駐機中のヒコーキならフェンスの隙間から撮影可能だが、追い写しの場合はカメラを振る必要がありフェンス越しとなる。
1.4倍テレコン使用では羽根の解像がやや低下する
フルサイズの400mmは野鳥撮影にはちょっと力不足。そこで1.4倍テレコンを装着してメジロを狙ってみたが、レンズ単体よりもハイライトが滲んできて、開放F値が1段暗くなったことで、感度アップすることも影響して羽根の解像もちょっと落ちる。高画素機ならAPS-Cクロップのほうが解像感的には有利かも。
■TELE CONVERTER TC-1411 を装着して撮影
距離が伸びると空気の揺らぎの影響も受けやすい
羽田空港第1ターミナル展望デッキから着陸機を狙う。川崎の浮島IC付近を背景にすると400mmでは望遠不足で、1.4倍テレコン併用でもこの大きさがやっと。撮影距離も遠くなるので、空気の揺らぎでコントラストや解像感も低下する。ただ、操縦席の窓付近を見ると、ニジミはあるが結構解像している。
■TELE CONVERTER TC-1411 を装着して撮影
この距離ではコガモの羽根の細部まで解像
近くの川でコガモを撮影。コガモという名前の通り、カルガモに比べると小さいので、2倍テレコンを装着して800mmで撮影している。撮影距離が比較的短く、直射日光が当たって被写体のコントラストが高いこともあり、2倍テレコン併用としては羽根の細部まで解像していて、水滴や目の反射を見ても色ニジミはない。
■TELE CONVERTER TC-2011 を装着して撮影
コントラストはやや低下するものの羽根の解像は十分
自宅近くの小川のほとりに座って日光浴しながら野鳥が来るのを待っていると、ツグミが徐々に近づいてくる。カメラをバッグの上に置き、チルトモニターを使ってローレベルで狙ってみた。少しコントラストが低下し、エッジのニジミ感もあるが、撮影倍率が高いこともあり、羽根の微細な部分までしっかりと再現されている。
■TELE CONVERTER TC-2011 を装着して撮影
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。