伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年7月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年7月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、シグマから発売される2本の大口径標準ズーム、解像度を重視した「24-70mm F2.8 DG DN | Art」とワイド端を28mmとし全体的なバランスの良さを図った「28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」の違いを「ソニー FE 24-70mm F2.8 GM」も加え検証した。
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
周辺部まで崩れのないシャープな描写
ワイド端24mmでF8まで絞って撮影。ピント位置は建物で、後方の樹木はしっかりピントは来ていてシャープな描写。空との境界部分に色収差に起因するフリンジも生じていない。手前の幹や石灯篭はわずかに被写界深度外。パンフォーカスで撮影するなら、もう少しだけピント位置は手前がベストだ。
中途半端なボケにしないことが撮影のコツ
府中市の交通遊園に展示されている都電。このレンズは、微ボケにクセがあるので、中途半端なボケを出さないよう、絞りを開けるときは開ける、絞るときはしっかり絞るのが鉄則。このカットは背景の樹木がぼけすぎないよう、F7.1まで絞って撮影しているが、背景の微ボケもそれほどうるさくならずに済んだ。
絞り開放から眉毛までクッキリ解像する
開放F2.8の明るさは、光量が少ない室内撮影で威力を発揮する。補助光としてスティックタイプのLED照明を弱めに当てているが、ISO800でF2.8 1/20秒がやっと。ベストなピント位置よりもわずかに後方にズレてはいるが、それでも被写界深度内ではあり、睫毛までクッキリと解像している。窓の開閉金具に反射した光が、少し二線ボケ傾向だ。
コントラストの高い後方微ボケは二線ボケになりやすい
ズームテレ側で切り取ったように見えるが、実はこれもワイド端。幹にピントを合わせ、木漏れ日がどうぼけるかをチェックするために撮影したカットだ。ピントが合っている葉は非常にシャープだが、後方の幹の白っぽい点や木漏れ日など、微ボケが二線ボケになりやすい。
離れすぎない程度で大きくぼかすとスッキリしたボケに
これは発売前にシグマ本社まで行って、2時間くらい周辺で試写させてもらったカットだ。この描写を見る限りはキレイな後ボケで、個体によってボケの傾向は多少異なる可能性はある。ただ、もう少し被写体との距離が離れ、枯れ枝などコントラストが高い背景を微ボケにしてしまうと、結構うるさいボケになる。
近接撮影時はにじみを伴う優しいボケに
ズームテレ端開放で近所のアジサイを撮影。近接撮影では、エッジのコントラストが下がり軟らかな描写になるが、軸上色収差によるボケの色づきはほとんどなく、背景や前景のコントラストが低めなこともあり、非常にきれいなボケになっている。特に近接撮影時の後ボケはにじみを伴う優しいボケ味だ。
動体撮影においてもきちんと解像
これも発売前にシグマ本社周辺で試写したカット。動体撮影に強いとはいえない「LUMIX S1R」のテレ端開放カットだが、ちゃんと電車の手前にビシッとピントが決まっている。ただ、解像性能が高い分、ボケはやや硬めで、背景の樹木や架線に反射した光のボケに縁取り感が強い。