② ポートレートの解像と軸上色収差を比較
全体画像で背景のボケ描写なども見てほしい
『CAPA』8月号ではお見せできなかった全体写真と目の解像がわかる部分アップをお見せしよう。解像や微ボケがわかる部分アップ以外に、背景のボケなど、レンズによる空間描写の違いも感じ取ってもらえればと思う。
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■ソニー FE 35mm F1.4 GM
ぼけた髪も滑らかで、解像は十分すぎる
女性ポートレートには、解像し過ぎて配慮が必要なくらいシャープな描写だ。それでいて、頬から後ろ髪にかけて緩やかにぼけていき、ぼけた髪の毛がざわついたり、頬の輪郭に軸上色収差によるボケの色づきが浮くこともない。素晴らしい描写だ。
■ソニー Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
適度なシャープネスで、微ボケの色づきもごくわずか
ほかのF1.4レンズに比べると、少しコントラストが低めで、エッジが立つほどの解像ではないが、女性ポートレートにはむしろ適度なシャープネス。微ボケした頬の輪郭に軸上色収差によるわずかな色づきがあるものの、ほぼ気にならないレベルだ。
■ソニー FE 35mm F1.8
ややキレに劣る解像だがポートレートでは無難な程度
前髪や睫毛までしっかり解像しているが、GMやArtと比べると少々キレ味が鈍い感じで、肌のキメが不鮮明。ただ、女性にとっては、必要以上に肌荒れが目立たず、これくらいの解像性能のほうが無難かも。
■シグマ 35mm F1.4 DG DN | Art
解像のキレはGM以上だが、そのぶんボケはやや硬め
GMよりもさらにエッジが立った解像で、絞り開放とは思えないほど、コントラストも高いだ。ただ、そのぶん、髪の毛の後方微ボケなどボケがやや硬めで、前方の微ボケも少しだけうるさく感じる領域もある。
■シグマ 35mm F2 DG DN | Contemporary
ボケ量は小さくなるがクセはなく、解像は安定
開放F2なので、F1.4に比べるとイヤリングや背景のソファのボケ量が小さめだが、解像性能はとてもしっかりしていて、前後の微ボケも特にクセがない。「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」のような近接撮影時の軟調さはないレンズだ。
③ ポートレートの周辺解像と後ボケを比較
ポートレート距離で周辺部の開放画質をチェック
APS-Cエリアの少し外側に目が来る構図で撮影。かなり周辺というわけではないが、ほぼ対角線上なので、画面中心からの距離はそこそこ離れている。ポートレート撮影距離における画面周辺の開放画質を比較してみた。また、背景の窓枠に軸上色収差によるボケの色づきが出ているかどうかもチェックポイントだ。
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■ソニー FE 35mm F1.4 GM
ピント面から後ボケへスムーズにぼける
瞳AFで撮影しているが、瞳というよりも手前の目の目尻あたりにピントのピークが来ている。ピント面から後ボケに至る変化もなだらかで、わずかに後ボケになっている前髪もスムーズにぼけている。窓枠に色づきは皆無だ。
■ソニー Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
後ボケの輪郭に色づきが見られる
GMやArtに比べると、ピークの解像は少しだけ緩さが残るが、そのぶん、前後の微ボケはスムーズ。軸上色収差によるボケの色づきはそれなりにあり、窓枠に緑、肩にマゼンタが少し浮いている。ボケに輪線模様が浮くことも。
■ソニー FE 35mm F1.8
ポートレート距離では解像はいまひとつ
中遠景の解像テストでは周辺部もシャープな写りだったが、ポートレート撮影距離では画面周辺部の解像は少し乱れがあり、睫毛の解像がいまひとつ。近景撮影では、できるだけ顔をAPS-Cエリア内に入れる構図で撮影したい。
■シグマ 35mm F1.4 DG DN | Art
手前の瞳をもっともシャープに描写
このシーンはすべてAF-Cの瞳AFで撮影しているが、手前の瞳がもっともシャープに再現されたのがArt。後ボケはやや硬めで、後ボケの縁取り感も少しある。輝度差の大きな輪郭に軸上色収差による色づきが少し感じられる。
■シグマ 35mm F2 DG DN | Contemporary
Artに次ぐシャープさだが後ボケに口径食や縁取りが見られる
開放F値がF2ということもありボケは小さめだが、Artに次いで手前の瞳がシャープに再現されている。コントラストは高めだが、周辺光量低下は多少あり、周辺のボケが口径食で欠ける率は多め。後ボケの輪郭の縁取り感も少しある。