機材レポート

“ストーリーを感じる写真”を撮ろう!ソニー「Xperia」の高機能スマホカメラを持ち歩き、レベルアップする撮影術

Xperia 5 IIIで撮影(RAWデータを現像)/ 焦点距離:24mm / トリミングあり

ソニーの最新スマートフォンが「カメラの機能」でひと味ちがった特徴を見せています。

2021年7月9日(金)に発売された「Xperia 1 III(エクスペリア ワン マークスリー)」、そして11月中旬に発売される「Xperia 5 III(エクスペリア ファイブ マークスリー)」は、共にソニーの最新技術を搭載した5G対応のハイエンドモデルです。

映像、オーディオ、ゲームなどもより楽しめるパフォーマンスを誇るなかで、カメラファンとして注目したいのが、トラッキングAF、瞳AF、高速連写といったソニーのデジタル一眼カメラ「α™」譲りの性能たち。それら基本性能の高さをはじめ、スマホカメラには珍しい可変式望遠レンズを含めた4つの焦点距離をカバーしているのも特色です。

Xperia 1 IIIのサイズは165 × 71 × 8.2 mm、重さ188g。
Xperia 5 IIIのサイズは157 × 68 × 8.2 mm、重さは168g。Xperia 1 IIIと比べると一回りコンパクトな印象。

35mm判換算で焦点距離16mm/24mm/70mm/105mmのZEISSレンズを搭載し、デジタルズームを組み合わせれば300mmまで対応。F値は24mm時にF1.7、105mm時はF2.8と焦点距離ごとの固定式で、アウトカメラの有効画素数は共に約1220万画素。シャッタースピードは30秒〜1/8000秒、ISOは50〜3200にて設定できます。もちろん、RAW撮影も可能です。

カスタムホワイトバランス、縦横比設定(4:3 / 16:9 / 1:1 / 3:2)、ヒストグラム、水準器、セルフタイマーなども搭載された充実の機能性。α™で培ったカメラ技術をスマートフォンの最適な操作に合わせてカスタマイズし、随所に工夫が見える仕上がりです。

CAPA CAMERA WEBでは「Xperia 1 III」の先行実写を以前にも記事としてお届けしましたが、今回は新登場の「Xperia 5 III」も交えて、再びの実写体験をする機会に恵まれました。

Xperia 5 IIIで撮影(RAWデータを現像)

両機種の特色に挙げられるのが、被写体を捉える「トラッキング(※1)」性能や、「リアルタイム瞳AF(※2)」といった、自動でフォーカスを合わせ続ける機能たちです。

また、広角レンズでは最高20コマ/秒超広角レンズ・望遠レンズでは、最高10コマ/秒のAF/AE追従連写も可能(※3)。動的な被写体にも対応しやすいため、モデルに動きをつけてもらい、美しい一瞬を選び出すようなポートレートも狙えます。

そこで、それらのXperiaの機能性に助けてもらいつつ、編集部でポートレート撮影に挑んでみました。

せっかくですから、ただ撮るだけではなく、テーマを持って取り組んでみよう!と決め、トレンドが続く「ストーリー性を感じる写真」をキーワードに置きました。

想像力を膨らませてくれるような写真のポイントはどこにあるのか? それを教わるべく、今回は透明感のある世界観で静止画・動画問わずに広告、Web、雑誌を中心に活動するyansuKIM(やんす きむ)さんに撮影アドバイスをいただきました。以下にはXperiaの実写レポートと交え、教わったことについてもまとめます。

(※1:「Xperia 1 III」はリアルタイムトラッキング、「Xperia 5 III」はオブジェクトトラッキングと方式が異なります。また、撮影環境などによっては被写体を検出できない場合があります)
(※2:広角レンズのみ対応。撮影環境などによっては、瞳を検出できない場合があります)
(※3:連写速度は撮影環境によって異なる場合があります)

 

広角から望遠までカバー。4つの焦点距離を楽しめる

Xperia 5 IIIで撮影(RAWデータを現像) / 焦点距離:70mm

 

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)/ 焦点距離:24mm / トリミングあり

 

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)/ 焦点距離:105mm / トリミングあり

 

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)/ 焦点距離:24mm / トリミングあり

 

Xperia 5 IIIで撮影(RAWデータを現像)/  焦点距離:105mm / トリミングあり

 

写真にストーリー性をもたせるポイントは?

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)

今回、Xperia 1 IIIとXperia 5 IIIを用いた撮影レポートで意識したのはストーリー性。「見る人の想像力をかきたてる」ような写真を撮るポイントはどこにあるのでしょう。

その第一歩として、yansuKIMさんが「ストックフォトを見てみるとわかりやすい」とアドバイスをくれました。大事なのは、それらと「逆」の方向性を考えること。

ストックフォトとは、パンフレットやウェブコンテンツで用いられることも多い写真たち。「特に人物が写っているものは、何が写っているか、何を表したいのかがわかりやすいものが多いです。極端に言えば全てが“引き”の写真で成り立っているんです。つまり、それとは逆で、写真内の情報を減らしつつも、伝えたい要素だけを残して撮影することがポイント」とyansuKIMさん。

「たとえば、テーブルの上に鍵が置いてある。鍵だけをアップで映しすぎれば何かはわからないけれど、部屋まで引いて写せば状況が伝わりすぎてしまいます。そこに何かがある、でもわからない。何かをしている、でも何かがわからない。そういう塩梅も意識するところです」

平たく言えば「説明しすぎない」ことでしょう。写真内で全てを伝えきってはいないけれど、決して説明的すぎない。見る人が考える余地があり、その写真から発展するストーリーの選択肢を得られる写真には、想像力をふくらませる力が宿ってくるのです。

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)

Xperia 1 IIIやXperia 5 IIIには焦点距離16mm換算の超広角レンズも備わっているため、こういった背景を大きく活かしたシチュエーション作りにも重宝します。同一のロケーションであっても、さまざまなパターンをレンズを切り替えながら狙えるのは、試行錯誤しつつイメージを固めていくのにとても役立ちました。

上記の写真は地面スレスレから狙ったものですが、スマートフォン撮影のメリットの一つである本体の圧倒的な軽さが活きました。

Xperia 1 IIIは約188g、Xperia 5 IIIなら168gと軽量。片手でも難なく取り扱えるからこそ、難しい体勢でもこなしやすく、撮影の可動域を広げてくれます。

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)

また、ポートレート撮影で迷いがちなのが、被写体の方にどういった視線を送ってもらうと、よりよく見えてくるのか。不自然に見えれば、あたかも「撮った風」に見えてしまいます。yansuKIMさんの写すポートレートには、その力みのようなものが感じられません。

「まずはコミュニケーションをすることから始めましょう。親密な空気を表現したければ、60分の撮影時間のうち、40分をコミュニケーションに当てても良いくらい。

人間には自分がよく見える“利き顔”が合って、それをわかっている人なら聞いてしまうのも一つの手です。わからない人なら、コミュニケーションの中から、どちらを向きやすいかで判断していく。利き顔を把握することは、被写体を安心させる心理的安全性にもつながります。いずれにしても大前提は、コンプレックスを大きく切り取らないようにすること。写真は残るものなので、最大限にきれいに残すことを心がけます。

僕の理想は、できる限りの自然体で撮れること。基本的には、相手の視線の中に自分のカメラが入っていく、というスタイルです。作り込むよりも自然にいる人に僕が馴染んでいく、というか。

だから姿勢に対して、自然な視線になってほしいんです。視線が欲しいときにお願いすることはありますが、たとえば体が前に向いているのに、視線だけが後ろを向いているというのは不自然ですよね」

この点でも、Xperiaを用いると、いきなり一眼のレンズを向けるよりもずっと近しい距離感で、テスト撮影やその確認ができたように感じました。今やスマートフォンは誰もが持つカメラの一種ですから、撮影からチェックまで自然な流れで出来たのです。高画質かつスピーディに撮れるXperiaなら、まずはコミュニケーションを図るという過程においても、その有用さを体感しました。

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)

自然な視線誘導につながる方法の一つとして、「遠くを見てください」とお願いすることも効果的だといいます。その際の「遠く」は目の前のビルや木などではなく、それらを超えたさらに先、それこそ透過した先の景色を思ってもらうことだと言います。

近くを見ると顎が引けてしまいますが、「遠く」だと自然と顎も上がり、良い角度を探しやすくなります。このお願いは、撮影に慣れていない相手でも取り組みやすい伝え方だそう。

「視線を誘導しようと指示すると、撮られる側も難しいものです。そうではなく、撮られる側の視線を一つに固定して、そこへ撮影側が動いて良いポイントを探していくんですね。被写体側も撮影側もプロならうまくいくのかもしれませんが、そうでなければ、最も難しいのは呼吸を合わせること。どちらかの呼吸に合わせていくと、うまくいきやすいでしょう。まずは、撮る側が足で稼ぐ!という気持ちが大事です」

Xperia 5 IIIで撮影

さらに、自然な空気感を写し込むためには、「実際にその行動をしてもらう」というのも、基本であり鉄板。歩いているようなカットが撮りたいときなら、実際に歩いてみてもらって撮ってみる。それをyansuKIMさんは「質感」という言葉で表してくれました。

「物のやわらかさはどう伝えるか。ふわふわな布団なら、実物そのものよりも指で押したときのほうが圧倒的にやわらかく伝わります。同様に“何かが行われている途中”を狙ってみるのもポイントです。

たとえば、人物写真で衣装がリクエストできるなら、スキニージーンズよりもスカートを選ぶなど、体の動きがわかりやすい衣装をお願いするのも一つの案です」

こういった動きのある撮影では、Xperiaの連射性能が活きました。ロケーションに制限がある中でも、理想的な画角を調整したら、あとは実際の行動を高速連写で追ってみる。それらの中から、より自分のイメージした「質感」を持つ一枚を選び出す、という試みができました。

Xperia 5 IIIで撮影(RAWデータを現像)

Xperia 1 IIIとXperia 5 IIIではRAW撮影が可能ですから、撮影後の現像によって色の表現で自分らしさを表すことも、また楽しみの一つ。ただ、yansuKIMさんは色調整に意識を取られすぎてはいけない、と言います。

「気をつけるべきは、色調整は家の建築でたとえるなら、土台をつくり、家を建て、家具も入れ、そのテーブルの上に“おしゃれな布を敷く”というくらいのこと。まずは建屋や家具があってこそです。色は確かに大事だけれど、そこへ意識を引っ張られすぎないことが大切です。もっと現場でやるべき前提がありますし、もっと撮影を楽しんだほうがいいですしね。

その上で、僕の場合は、シャドウにオレンジ、ハイライトにブルーを混ぜるといった、自分なりの細かな調整をずっと続けています。今、自分で育ててきた“yansuKIMフィルター”は46回目の更新を迎えました。僕は撮ったときから、その仕上がりの色で世界が見えているようになってきたくらい。でも、突き詰めるほどに、撮った段階での写真が自分らしく感じられていくようになるのも面白いところだと感じています」

yansuKIMさんが写真や色を磨くために見てきたのは、写真そのものよりも、むしろ絵画やイラストだったといいます。いわゆる「画作り」だけでなく、その向き合い方にも一つの特色があります。

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)

RAW現像で色を考える際にも、ふだん使っているカメラと全く変わらない感覚で、楽しむことができました。いつものカメラとことさら使い分けるのではなく、Xperiaもシームレスに撮影環境に取り入れられるのは、大きな利点だといえるでしょう。

また、この日は連写も駆使した撮影を2時間行った時点で、Xperia 1 IIIの電池残量は70%ほどと相当の余裕を感じさせました。バッテリー容量は両機種とも4500mAh。3年使い続けても劣化しにくい長寿命設計(※4)なのも頼もしいポイントです。

(※4:同タイプバッテリーで充放電を繰り返すシミュレーションに基づく(USB充電の場合)。バッテリーの寿命は利用状況によって変化します)

 

瞳AFがはずれないから、撮影の安定性が高まる

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)

実写を経てみて感じたのは、まずサイズの違いによる取り回しの相性。「5 III」が一回りコンパクトになったことで、こちらのほうが扱いやすいと感じる方もいるでしょう。男性編集部員HはXperia 1 IIIの大画面と、しっかり握れるホールド感の安定性に好感を得ました。一方で、女性編集部員Nは、Xperia 5 IIIのコンパクトな収まりのほうに、より自由度を感じたよう。

2機種は、カメラの基本性能はほぼ共通。「3D iToF sensor」がXperia 5 IIIには非搭載のため、暗所でのAF性能などはXperia 1 IIIに譲るところはあれど、遜色のない機能性を有しています。しかしその分、Xperia 5 IIIはより手の届きやすい価格に収まっています。

このあたりはカメラのスペックが均衡しているために好みの領域もありますから、ぜひ店頭で実機を触りながら試してみるのをおすすめしたいところです。

Xperia 1 IIIで撮影(RAWデータを現像)

瞳AFの追従も、細かな動きに応答するレスポンスの良さに、安心感が光ります。

以下の動画で、その追随のほどを収めてみました。用いたのはXperia 1 IIIです。左目から右目といった移り変わり、動きの中でトラッキングが外れたあとの復帰まで、素早く捉えていることがわかります。

▽横移動にもなめらかに対応

▽前後の移動があっても追随

▽トラッキングの復帰もスムーズ

また、手元の操作で焦点距離を変更できるところは、レンズ交換式カメラにも勝る機動力として特筆したいポイント。広角から望遠まで、タッチ操作で細かく調整ができる点は、yansuKIMさんもスマホカメラの魅力として挙げてくれました。

「写真は“今、この瞬間に撮る”という瞬間芸術である以上、いつでもシャッターを切れる状態が続くことが良いと思っています。レンズを交換している間は絶対に“撮れない”わけなので、そのロスタイムがなるべくなくなるのは良いですよね。

Xperiaでレンズの違いを実践から肌感でわかっていくのは、自分の好きな画角や撮り方を深めていくきっかけになると思います。まさにこの時代だからこそできる習熟方法ではないでしょうか」

たしかに、この日は天気の関係から日光の状況も刻々と変わりやすかったのですが、レンズ交換の時間をはさまずにシュートし続けられるのは、「今撮りたい!」「今撮るべき!」という一瞬を、Xperiaがしっかりと拾い上げてくれたように感じます。

 

今だからこそ、スマホカメラを持ち歩く

Xperia 5 IIIで撮影(RAWデータを現像)

現在は「Xperia™で好きを極める!体験クーポンプレゼントキャンペーン」として、今回紹介したXperia 5 III、Xperia 1 III、Xperia 5 II、Xperia 1 IIのいずれかのモデルを2022年1月10日(月) 23:59までに購入すると、Adobe Lightroomの2ヶ月無料クーポンなどが付いてくる特典を配布中。詳細はこちらの特設ページより。

スマホカメラのメリットは、何より常に持ち歩くこと。yansuKIMさんも「スマホカメラは撮るまでの動作が短くて瞬間を残しやすく、被写体にプレッシャーも与えにくいですから、実は最も良いカメラではないかと最近は特に思うくらいです」と語ってくれたように、性能が高まってきた今だからこその向き合い方ができるようになってきたと感じます。

主力の機材の一つとして取り入れる姿勢が、あなたの写真を次なるレベルアップへと導いてくれるかもしれません。

 

Xperia 1 III(エクスペリア ワン マークスリー)

Xperia 5 III(エクスペリア ファイブ マークスリー)

 

▽作例ギャラリー

〈写真アドバイス〉yansuKIM(Web

〈モデル〉星野紬(Instagram

〈ヘアメイク〉村上正也(Instagram

〈写真〉中丸ひなこ・長谷川賢人

〈文〉長谷川賢人

〈協力〉ソニーマーケティング株式会社

〈撮影協力〉汐留シオサイト5区イタリア街